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【悲報】レベル1の妹。兄の装備でダンジョン配信を始める。(84億円相当の激レア装備で最下層スタート、未確認ドラゴンに遭遇した模様)  作者: 高瀬ユキカズ
始まる人類領域への侵攻

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第378話 仮想世界からの帰還

 戦車による至近距離からの攻撃は凄まじかった。階層全体に激しい振動が伝わり、轟音が鳴り響く。


 視界にはちらちらとノイズが走り、色彩が失われて灰色になる。動きもぎこちなくなり、断続的になっていた。


 直後、すべてが崩壊する。


 作られた世界。

 偽物のこの世界はあっけなく終わりを告げた。


 気がつくと、目の前ではマスター・リッチともりもりさんの激しい戦闘が繰り広げられていた。


「戻ってきたんですね! 春菜さん! 春日井さん! 南波さん!」


 戦いながら、もりもりさんは嬉しそうに振り返る。


 もりもりさんが持つ武器はサタンの大鎌。本来なら攻撃が通らない武器を、もりもりさんは魔法で無理に強化していた。先端は石化した鎌となっている。長く伸びた大鎌は鋭利な刃で攻撃するのではなく、棍棒のような鈍器として使っていた。


「アース属性の私だと、これしかできないんです。防戦一方で……。春菜さんが戻ってきてくれて助かりました」


 すぐに私と春日井君が援護に加わる。春日井君の二刀流が凄まじい速度でマスター・リッチを襲う。私は遠慮がちに手を出しつつ、もりもりさんに説明した。


「もりもりさん、マスター・リッチは覚醒スキルを使っていたようです。私たちは仮想世界へ飛ばされていました。向こう側のダンジョン・コンピューターを破壊したことで脱出できたのですが……」


 こちらには装甲車両が召喚されていない。そのため、暗闇に包まれたままだった。遠くで星のように光って見えるあの場所にダンジョン・コンピューターがあると思われた。


「こちら側のダンジョン・コンピューターも破壊しないと、また覚醒スキルを使われてしまうかもしれません」


 私の言葉に、もりもりさんは首を振る。


「それには及びませんよ、春菜さん。私だって覚醒者の端くれです。マスター・リッチと対等とまではいきませんが、春菜さんたちがいない間にそれなりに分析はしていました。マスター・リッチが仮想世界を構築するにはプログラムを再起動する時間が必要なはずです。一気に畳み掛けましょう」


「はい!」


 マスター・リッチと私たちは1対3の攻防になっている。今は圧倒的にこちらが優勢なはずだ。


「くそ! 小癪(こしゃく)なガキどもが! ワシの分析だと! お主(ぬし)らに何がわかると言うか!!」


 戦闘に加わっていないのは湊ちゃんだ。湊ちゃんには湊ちゃんのやるべきことがある。


「春菜! 装甲車両で照明をお願い! もう1枠はヘリコプターで上空から照らそう!」


「わかった!」


「春日井君はマスター・リッチへの攻撃に専念して!」


「おう!」


 春日井君は休みなくマスター・リッチを斬りつけていた。もりもりさんと同等か、それ以上の動きだった。持っている武器がマスター・リッチに対して相性が良かったこともあり、与えたダメージは春日井君がもっとも多かった。


「すごいですね……。向こうの世界で何があったのでしょう……」


 もりもりさんが春日井君の動きを感心しながら見ていた。春日井君は不規則な動きのマスター・リッチに完全に対応できていた。


「ふざけるなあ! ワシが……ワシが、お前らなんぞに、負けるわけが!」


 私はみんなを鼓舞するために声を張り上げる。


「一気に攻勢をかけるよ!!」


 私はダメージを与えることには貢献できていない。今はマスター・リッチの意識を逸らすことを考えた。このままマスター・リッチを倒し切るつもりだと思わせることだ。実際のところ、それは難しかった。HPの減り具合を考えるとまだ時間がかかる。再び覚醒スキルを使われてしまう危険があった。


 おそらくマスター・リッチは時間が欲しかったのだ。覚醒スキルを使うための再起動の時間だ。それは私たちにとっても都合が良かった。


 マスター・リッチは3人を相手にすることに精一杯で、湊ちゃんのことには意識が向いていなかった。


 やがて、私たちが待ち望んでいた時間が経過した。


「みんな、ありがとう。時間稼ぎ、おつかれさま。ダンジョン・リバース&リゾルブが完了した」


 湊ちゃんが静かに告げた。

 先にチェックメイトをかけたのは私たちの側だった。


「ダンジョン・コンピューターの管理者権限を書き換えた。もうマスター・リッチには使えない。ただの箱だよ」


「くそがあ!」


 マスター・リッチは悔しそうに吠えるが、さきほどまでの強さはまったく感じなかった。タブレットに表示されたマスター・リッチのデータからもわかる。


 その内容を湊ちゃんが詳しく説明してくれる。


「マスター・リッチへのMP供給を停止。魔法陣構築を無効化。どうやらマスター・リッチは自分の強化にもダンジョン・コンピューターを使っていたようだね。でも、ダンジョン・コンピューターに依存しすぎていた。それが仇になって、今はただのリッチ以下」


 魔法が使えないリッチ。

 それはただの亡霊でしかない。


「最後のとどめは……」


 3人同時に武器を振り下ろした。絶望的な表情のマスター・リッチが印象的だった。通常のモンスターとは違って、マスター・リッチはばらばらの粒子となって散った。


 マスター・リッチの討伐完了――


 直後、頭の中にアナウンスが流れた。


【――覚醒レベル保持者を倒しました。】


 私だけに聞こえたのだろうか、それとも……


「……みんな…………。聞こえた………………?」


 私は問いかける。


 驚く顔のもりもりさん、春日井君、湊ちゃん。

 お互いに顔を見合わせていた。


 再度流れるアナウンス。

【――覚醒レベルが上昇します。】


 4人とも、同時に目を見開いて固まっていた。


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