第373話 みんなの強化計画
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総理からの支援を受け、自衛隊装備のうち、廃棄予定や旧式のものを提供された。それらを召喚できるようになったうえで、湊ちゃんは春日井君ともりもりさんを長瀞ダンジョンへと呼び出した。
今、私たちはダンジョンの中にいる。
私はアストラル装備を身に着けている。通常状態は銀色だが、エンチャントを発動させると白もしくは黒に変化する。
湊ちゃんは射手座装備で、白を基調としたローブ姿だ。すべての装備は主に布製だが、魔法の糸で編まれていて鋼鉄を凌ぐ強度を持つ。フル・エンチャント状態になると全身が虹色に輝く。
春日井君は、獅子座の炎装備だ。エンチャント状態では燃えるような赤と黄色のエフェクトとなる。今は通常状態の黄色がかった金属色をしている。
もりもりさんの全身は白銀の装備。ブーツのみがエンチャントで強化されている。もりもりさんの装備に関しては不明で、正式名称も教えてもらっていない。もりもりさんという名前もハンドルネームであり、本名も教えてもらっていない。
金髪のロングヘアーで、女優になれそうなほどの美貌をしている。モデルのようなスタイルをした年上のお姉さんで、性格はとても優しい。
わかっているのは、アメリカ出身でお兄ちゃんの彼女と同じくらいの年齢で、結婚を控えているということだ。
謎多き美女とは、まさにもりもりさんのことだが、本名もレベルも教えてくれないということは言いたくないのだろう。こちらからしつこく聞くのも良くないと思う。と思ったら……。
「私のレベルは93です」
「ええ!?」
突然の告白に、私も湊ちゃんも春日井君も絶句してしまう。
「今回、春菜さんが日本政府からのバックアップを受けることになりました。同じように、私は以前からアメリカ政府のバックアップを受けていました。私個人のことについては、言えることと言えないことがあるのですが、伝えられてほっとしています」
私は慌ててもりもりさんに聞き返す。
「ま、待ってください。私より17もレベルが高かったんですか!? いえ、それよりも、ミランダ・モリスさんがレベル92なんです。これはターくんが教えてくれました。それよりも上ってことですよ!?」
「未発表情報でしたのに、よくご存知で」
もりもりさんは平然と答えてくる。
「ミランダさんよりさらに上の93ですか!? もりもりさんがワールドランク1位じゃないですか!?」
驚く私に対して、もりもりさんはすました顔で返してくる。
「春菜さんはレベル100を目指すのでしょう? レベル92だろうが93だろうが、その上を春菜さんは行かなければならないのですよ。それと、南波さんと春日井さんも」
「私!?」
「俺!?」
いきなり振られた湊ちゃんと春日井君が驚いた顔をする。
「すでに世界の加速は始まっています。これまでのダンジョンハンターは過去のものとなるでしょう。まずは私たち。ここにいる覚醒レベルが上がった4人が先頭に立ちましょう。春菜さんだけでなく、4人ともレベル100を目指すのです。私たちにはそれが可能なはずです」
もりもりさんの視線の先にいるのは私ではなく湊ちゃんだった。湊ちゃんは少し戸惑いを見せながら答えた。
「私もそれを考えていたんです。春菜は1人だけ覚醒レベル4で突出していますけれど、私たちだって覚醒レベルは上がっている。この4人をいっしょに強化できると思って春日井君ともりもりさんをお呼びしました」
「私のこともここに呼んでくださって本当にありがとうございます。でも、私はアメリカのバックアップを受けているハンターです。もしかしたら事務局や管理協会のスパイかもしれないんですよ」
いたずらっぽい顔をするもりもりさん。
「大丈夫です。スパイは自分からそんなことはおっしゃらないはずです」
湊ちゃんは動じることなくもりもりさんに返していた。
「じゃあ、油断させることに成功したということで、私はみなさんの後ろからついていこうと思います。ここでの計画は南波さんにすべてお任せしますね」
もりもりさんは可愛らしい仕草で湊ちゃんにウインクを送っていた。こんなもりもりさんがスパイであるはずがない。
「わかりました。では、さっそく春菜と春日井君。当面の計画を伝えるね」
「おう、俺も難しいことはわからねえから、南波に従うよ」
「私も全面的に湊を信頼している。任せるから」
「まあ、任せてくれるのは嬉しいけれど、思考がストップしちゃわないようにね。私だって完璧ではないんだから」
湊ちゃんの言葉に、私を含めた3人が頷く。
「まず伝えておきたいのだけれど、どこかで覚醒レベルを上げる方法を見つけなければいけないと思っている。今は偶然見つけたアイテムでたまたまレベルが上がっただけ。覚醒レベルについて解明していく必要がある。このことを念頭に置いておいて」
3人は無言で頷く。
「前回は春菜が呼び出したこのダンジョンでレベル上げをした。現在の春菜のレベルは76、私は58、春日井君が60。そしてもりもりさんが93。目標レベルは全員ともに100」
ここでも同じく3人が無言で頷いた。
「日本政府の協力で、春菜は戦車だけでなく、戦闘ヘリコプター、輸送ヘリコプター、大型トレーラー、小型攻撃用無人機などを召喚できるようになっている。だけど、一度に召喚できる数は少ないし、それもあって覚醒レベルを上げたい。それと、これは廃棄予定の旧式だから戦力として考えるのではなく、運用テストだと考えてほしい」
やはりみんなは何も言わず、ただ頷く。
「前回はもりもりさんが地上10階の階層主、マスター・リッチと戦った。マスター・リッチは規格外で相手にもならなかったとおっしゃっていました。でも、それを倒さないとレベル100には到達できないと思う」
もりもりさんが何か言いたげにぴくりと反応したが、口を開くのを堪えていた。
「最初の目標はマスター・リッチの討伐。次に、このダンジョンを上がれるところまで上がる。それでいいかな? みんな?」
もりもりさんと春日井君は無言で頷いたが、私は手を挙げて尋ねる。
「湊の呼び方を決めておこう。隊長でいいかな?」
「え……?」
少しだけ戸惑いを見せる湊ちゃん。
私たちは思いついたものを口にしていく。
「リーダー」
「ボスはどうだ?」
「マスターとか」
「大将はいかがでしょうか?」
「キャプテンは?」
いろいろな案が出て、少しおかしな方向に発展していく。
「軍師とかは?」
「首領」
「教祖様」
「御主人様はいかがでしょう?」
もりもりさんまでもがふざけだしたところで、私と春日井君はこう提案した。
「神」
「至高なるお方」
湊ちゃんはぷくりと頬を膨らませる。
「ちょっと! みんな! 真面目にやってもらえるかな!!」
仕方がないので、私が最後にまとめることにした。
「先生は? どうかな? 湊は先生っぽいし」
すかさず春日井君。
「なら、お母さん」
「先生はお母さんじゃありません!!」
湊ちゃんはさらに大きく頬を膨らませる。
小学校の時に先生をお母さんと呼んでしまうことがあった。無意識に口にしてしまう言い間違いだ。その時のことを懐かしく思い出す。
「先生に決定?」
私が言ったところで、湊ちゃんはすぐさま否定した。
「決定していません!」
最終的には一番最初に私が提案した「隊長」で決まった。
湊ちゃんは嫌がっている様子だったが、渋々受け入れていた。他の候補よりマシだったのだろう。




