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【悲報】レベル1の妹。兄の装備でダンジョン配信を始める。(84億円相当の激レア装備で最下層スタート、未確認ドラゴンに遭遇した模様)  作者: 高瀬ユキカズ
始まる人類領域への侵攻

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第372話 湊ちゃんによる説明

 湊ちゃんと総理が話していて、私は蚊帳の外だった。


「ええとね、湊。一般的な女子中学生でもわかるように説明してもらってもいいかな? 私だけまったくわかっていないようなのだけれど……」


 湊ちゃんはなんでもないことのように話し始める。


「つまり、日本政府の全面バックアップで春菜の強化を図るということだよ。春菜を最強のハンターに育て上げる」


「ううむぅ。総理との話でそんな内容は出てこなかったような……」


 私は腕組みをして考え込むが、考えても何もわからない。印象に残っているのは5兆円のことだけだ。インパクトが強すぎて、他が薄れてしまう。


「会話の流れだよ。今の日本政府では上位ランカーにゲートの防衛を頼むことができない。ハンター事務局や管理協会に権限を握られちゃっているからね。そこで総理は春菜に目をつけた」


「私? そうなの?」


「日本は世界中からハンターが集まっていて、優秀なハンターも多い。ハンター先進国と言ってもいい。だけど、その実態は違うんだよ。いつでも世界に流出してしまう危険性を秘めている」


「事務局や管理協会がそう判断したらってこと? 日本のためにがんばっているんじゃないの?」


「私の当たってほしくない推測がまさにそこなんだよね。彼らは日本の防衛を第一としていない。私の悪い推測が当たってしまうとすると、日本を弱体化させようとしている」


「ちょっと待って。どうしてそんなことになるの?」


「それは元々、日本のダンジョンだけが世界に公開されたことにあるよ。ダンジョンは世界中に点在していた。しかし、日本のダンジョン以外は秘密にされてきたの。それは各国が密かにダンジョンからの利益を得たかったから」


「でも日本がダンジョン先進国になってしまったよね。自分たちも公開すればよかったのに」


「日本はいつでも実験場なんだよ。どういう結果になるかを日本で試したんだ。悪い結果になっていた可能性もあった。ダンジョンを公開したらパニックになるか? 人々はどう行動するか? 犯罪は増えるか、減るか? いろいろあると思うよ」


「私は日本のダンジョンが公開されて良かったと思うけどな~。強いお兄ちゃんもいるし、日本が一番ダンジョンの情報が多いし、ダンジョン配信も盛んになった」


「本当はアメリカかロシアあたりがトップに立ちたかったはず。でもさ、思惑が外れたんだよ」


「もしかして、それでゲートを日本にだけ集中させることにした?」


「たぶん、そういうことじゃないかな。それを可能にしたのがプリミティブ・デバイス。私たちの科学を遥かに凌駕する技術で作られている。そしてそれを持っているのがダンジョン管理協会ということになっている」


「どうして日本を弱体化させようとするの? 意味があるようには思えないけれど?」


「日本を弱らせて、そのあいだに各国は力を蓄える計画なんじゃないかな」


「なんでそんなことになるの? みんなで協力してダンジョンクリアに挑めばいいじゃない」


「それができないのが人類なんだよ」


 つまり話をまとめると、各国の思惑に反して日本はダンジョン先進国になってしまった。力の均衡を図るために日本にゲートを集中させて、日本を弱体化させようとしている。


 事務局や管理協会がそれに協力しているから、大和総理は私に声をかけた。そういうことらしい。

 

「まあ、湊の話でなんとなくは理解できた。でも、はっきり言って湊がいないとまったく駄目な気がする。湊を抜きにしたら、どう考えても私一人じゃ役に立てそうにない」


 話を聞いていた総理がソファからこちらに身を乗り出した。


「私は本当に幸運だったかもしれない。筑紫春菜さんと南波湊さんのお二人が揃ってこそ、日本を守ることができます」


 湊ちゃんは謙遜するように顔の前で手を振る。


「春菜に比べたら、私なんて下手な知恵があるだけで、他には何も特別なものはないです」


「いえ、あなたと話していて確信しました。南波さんも日本の防衛に不可欠な存在です。先程まであなたを値踏みしていたというのはその通りかもしれません。大変失礼いたしました。ぜひ、対等にお付き合いいただきたい」


 総理は湊ちゃんに向かって深く頭を下げた。湊ちゃんは慌てて総理に頭を上げるように促していた。総理は湊ちゃんのことを完全に認めたようだった。


「湊には考えがあるんだよね? 私のレベルを上げて、巨大要塞も召喚できるようにする方法――」


「やってみなきゃわからないし、さすがにすぐには無理だよ? 日本政府がどれだけバックアップしてくれるかにかかっているよね」


 私と湊ちゃんが同時に総理に顔を向けると、総理はとんでもないことを口にした。


「まずは春菜さんをどれだけ強化できるか、それを見せていただくことです。結果次第では5兆円というのも、あながちあり得ない数字ではありません。もしもレベル100が実現可能なのであれば、支援しない選択肢はないわけです」


 とんでもない金額を支援するという話に、私は驚いていた。

 湊ちゃんは総理に対して小さく囁いた。


「それと……」


 湊ちゃんと大和総理がアイコンタクトを取る。何か、2人のあいだには通じるものがあった。


「巨大要塞の件、ですね」


 頷きながら、確信に満ちた深みのある口調。総理は湊ちゃんをまっすぐ見つめていた。完全に信頼を寄せてくれている。


 私たちは総理と連絡先を交換し、首相官邸を後にした。

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