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【悲報】レベル1の妹。兄の装備でダンジョン配信を始める。(84億円相当の激レア装備で最下層スタート、未確認ドラゴンに遭遇した模様)  作者: 高瀬ユキカズ
始まる人類領域への侵攻

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第367話 破壊される渋谷の交差点

 ああ……、フレイムドラゴンも出てきちゃったのね……。

 なんて、のんびりしたことを考えていたのがまずかった。


 誰かが叫んだ。


「避難しろー!!」


 その声と同時に、フレイムドラゴンがいる場所で爆発が起こった。ドラゴンに向かって放たれた対空ミサイルだった。ドラゴンの腹からは燃え盛る炎と煙が上がった。


「退避だー! 全員退避ー!!」


 私の腕が引っ張られ、ビルの間の路地へと押し込まれる。

 上空からは破壊されたビルの残骸が地上に向けて落下していた。


 路地裏へ入ってからも大勢のハンターたちに押されるものだから、フレイムドラゴンの召喚解除が遅れた。


 急いで解除しようとしたところを、タブさんに止められてしまう。


『待て!! 主(あるじ)よ! 召喚を解除してはならぬ!』


 なぜ? と問い返す間もなく、タブレットの画面が切り替わった。


『ドローンのカメラをハッキングして映像を映す』


 上空では撮影用のドローンが飛んでいた。タブレットには現場の様子が映し出される。


 地上に配置された戦車たちは後退を始めていた。フレイムドラゴンの右手が何かを掴んでいる。その右手にカメラが向き、クローズアップされた。


『攻撃を受けたフレイムドラゴンが装甲車両を手に持っている。今召喚を解除すると車両が落下し、人的被害が出る。事務局に連絡し、自衛隊員の退避を要請した。ドラゴンが装甲車両を降ろすまで待つのだ』


 私ははらはらしながら映像を見ていた。それなのに、タブさんはやたら冷静だった。


 ドラゴンが手に持つ装甲車両の窓からは3人の自衛隊員の姿が見えた。この高さから車両が落下したら大変なことになる。


『主のフレイムドラゴンに対して放たれたミサイルは命令が伝わる前のものだった。初めてモンスターを目にした自衛隊員が怯えて撃ってしまったようだ』


 そして、ミサイル攻撃を受けたフレイムドラゴンは考えた。人が乗っている車両を持てば、自分に対して攻撃を加えないはずだと。それだけの知性があるということだった。


 自衛隊員の退避は迅速だった。現場には無人の戦車や装甲車両が残されている。それらに対し、フレイムドラゴンが炎を噴いた。


 私たちはタブレットの映像を通して見守ることしかできない。


 地上にあるのは7台の戦車。それと、対空ミサイル砲と運搬車両。他には装甲車両が2両残っていた。それらがブレスに炙られて真っ赤に燃えていく。鉄が溶けるほどの激しい高温だ。幸いなことに退避が間に合い、すべて無人だった。ほかには撮影しているドローンも何機か巻き込まれた。


 ドラゴンの攻撃はブレスだけではなかった。空いているほうの手で戦車を薙ぎ払い、足で装甲車を踏みつける。尻尾も使って破壊行動を行っていた。その尻尾がビルにぶつかって、1階部分をえぐり取っていた。道路は踏みつけられ、アスファルトに亀裂があちこち入っている。


 私はフレイムドラゴンが目視できる場所まで移動し、大きな声で叫んだ。


「フレイムドラゴンー! やめなさーい! もういいから、装甲車両をおろしなさーい!!」


 だが、ドラゴンは動きを止めない。私の声が届いていないようだった。

 引き止める柳井ハンターを振り切って、私は炎の中に向かう。


 ――エンチャント発動


 私の全身を包むアストラル装備が真っ白に輝く。


 アストラル・アーマーが持つ能力。周囲を氷の魔法で凍らせることができる。


 私が走った経路に沿って氷の道が生まれる。周囲の世界を凍りつかせながら、フレイムドラゴンの真下に到達した。

 両腕を大きく広げて、フレイムドラゴンに私の存在を主張する。私を中心に氷が大きく広がった。残りすべてのMPを使い果たして巨大な結晶を生み出した。


 私の姿を眼下に捉えたドラゴンが静かに降りてきた。装甲車両を道路に置く。


 ドラゴンはしゃがみ込んで巨大な前足を折り、じゃれるかのごとく長い首をこちらに伸ばしてくる。頬を私に擦り寄せようと近づけてきた。


 私は腕を目いっぱい伸ばして、その顔を受け止めてあげる。

 優しくドラゴンの肌を撫でながら、小さな声で召喚解除を宣言する。


「ありがとう。ちゃんと命令を守ろうとしたんだね」


 フレイムドラゴンは光り輝く。尻尾の先から頭へと、ポリゴンの粒子に変わっていく。最後は無数の小さな光となり、消えた。


『主よ。ゲートから出る前に召喚を解除しておくべきだったな』


 周囲ではたくさんの戦車と車両が燃えていた。ビルや道路も破壊され、あたりには瓦礫が散乱していた。消防車による消火活動が始まっている。慌ただしく人が動く中で、私は他人ごとのようにその光景を眺めていた。


「まいったね。これは」


 呆れた声で口にした言葉は、自分でも現実離れしていると思った。


『はは……。主よ。それなりの賠償請求がくるかもしれないな。主の稼ぎで払えるかどうか』


 これはタブさんの冗談だろうか。それとも本気か。

 普段は感情のこもらないタブさんの声だが、今回は珍しく呆れた様子が伝わってきた。


 渋谷の交差点は、まさにここで戦争でも起こったかのような光景だ。

 損傷が激しいビルは建て替える必要があるかもしれない。破壊された戦車は1台いくらするのだろうか。


 他にも対空ミサイル砲に装甲車。壊されたドローンも転がっている。


 どれも無惨に焼け溶けていて、とても修復はできそうにない。


『被害額を算出しよう。自衛隊の装備の損失が戦車7台で約60億円、装甲車両2両に対空砲とその輸送車両で20億円ほど。ビルの損壊は2棟で40億円といったところか。その他に道路やインフラの破壊で10億円。合計130億円だ』


「クエストクリアの貢献と相殺できないかな?」


『一千万円くらいは減額されるだろう』


「大和君にでも泣きつこうか」


 現在の日本の総理大臣、大和 昇一郎(やまとしょういちろう)。特に仲がいいというわけでもないが、君呼びすることを許されている。


『それがいいやもしれぬな』


 はあ……。

 私は軽くため息をつく。

 だが、落ち込んでなどいなかった。実のところ、内心ではにやついていた。

 笑ってしまいたくなるのを抑えるのが大変なくらいだ。


 高くついたのか。

 それとも……。


 思いの外、安い買い物だったのかもしれない。


 私はぐっと拳を握る。

 ナイスだ。フレイムドラゴン。

 よくぞ、破壊してくれた。


 これはおそらくメタル属性の私だから可能なのだろう。

 私が召喚できる一覧には新しい項目が追加されていた。


 戦車や装甲車両、対空ミサイル砲にドローン。


 戦闘機だけでなく、さらに近代兵器が追加された。


 もしかしたらこれは本当に……


 巨大要塞を建築するというのも実現可能なのではないだろうか。

 強固な壁で守りつつ、戦車やミサイルなどの近代兵器で迎え撃つ要塞。

 難しいかと思われたことも現実味を帯びてきた。

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