第342話 3人のエンチャント装備
「ミランダさんに会うための作戦を発表します。〝エンチャント装備で目立つぞ〟作戦です!」
「筑紫のその作戦が上手くいくかはともかく、当初の目的はエンチャント装備だったからな」
「うんうん。どんな装備か楽しみ」
装備の話になって反応が変わった。2人はミランダさんに会うことにはあまり関心がないようだった。
「まずは湊の装備から。射手座装備で揃えてみました。順番に渡していくからね。最初はサジタリウス・ローブだよ」
タブレットを操作し、装備を湊ちゃんのデバイスへと転送する。湊ちゃんは中学校の制服姿から、白を基調としたローブ姿へと変わった。
ローブの端には豪華な金の刺繍が施されている。ローブには長いマントもセットになっている。マントもローブも、表面にはデジタル風の虹色が流れている。外装の色がこうして変化し続けるのがエンチャント装備の特徴だ。
「ねえ、これって布みたいだけれど、防御力は大丈夫なのかな?」
「もちろん。そんじょそこらの鎧より遥かに高い防御力だよ。魔法の糸で編まれていて、一本一本が鋼鉄の繊維だと思っていい。これに加えて、サジタリウス・グローブを手にはめて、サジタリウス・ブーツを履いてみて」
グローブもブーツも革製だったが、同じように表面には虹色が流れていた。
「おっと、サジタリウス・サークレットを忘れてた。これで防具一式が揃ったことになる」
湊ちゃんの頭にはサークレットが装着された。頭を飾るシンプルな環状の装飾品だ。前面には宝石がはめ込まれている。左側面には目立つ羽根の装飾があった。
「これはヘルメットじゃないんだね。頭が守られるか心配」
「そこも大丈夫。魔法が込められた宝石が防御してくれる。そして、武器はサジタリウス・アーク。さすがにエンジェル・ボウには一歩引けを取るけれど、性能は折り紙付き。連射には不向きだけれど、一撃必殺。強力な矢を放つ」
湊ちゃんに長弓を転送すると、さっそく手に取っていた。
長弓を手にして、湊ちゃんの装備は揃った。もちろんサジタリウス・アークも外装の色は変化している。
武器も含めて、上から下まで全身のエフェクトが煌めいていた。すべての装備品が同期するように、レインボーカラーが波打っている。
「どうでもいいけれど、むちゃくちゃ目立つね、これ……。これで歩くの、ちょっと恥ずかしいかも」
これが全身フル・エンチャントだ。デジタル風に流れるレインボーは、まるで歩く広告塔のようだった。
「エンチャントはオフにできるよ。魔法付与効果もなくなっちゃうけれど。通常はオフにしておいて、戦うときだけオンにするといいね」
「早く言ってよ……。恥ずかしい……」
湊ちゃんはすぐにエンチャント効果をオフにした。
オフにすると装備としての性能はかなり落ちる。
性能が落ちるといっても、この状態でも十分な高級装備だ。全身で5億DPは使っている。そんじょそこらのハンターよりは強いはずだ。湊ちゃんは狩人としての姿になった。
「じゃあ、次は春日井君ね」
「おう、待ってた」
「春日井君はインフェルノ装備にしようかと思ったけれど、獅子座の炎にしてみた。レオフレア・ソード。しかも二本」
「俺は武器からか。しかも二刀流――」
「あれ? 二刀流がいいって言ってなかったっけ?」
「インフェルノ・ブレードを見て、そんなことを言った気もするけれど」
私が転送した武器を、すぐに春日井君は両手に持った。
春日井君は二本のレオフレア・ソードを手にしたが、渋い顔をしていた。
「やっぱり剣道で慣れているからかな。両手で握らないと戦えそうにない。二刀流には練習が必要だな」
「練習すればいけそう?」
「どうだろう? とりあえず今は1本でいいや。もう1本は返したほうがいいか?」
「いや、持っておいて。どこかで役に立つかもしれないし。防具だけど、レオフレア・アーマー、グローブ、ブーツ、ヘルメット。これを転送するね」
春日井君のすべての装備が揃った。
どことなく剣道の防具を連想させる装備で、全身が包まれていた。金属表面には赤と黄色が炎のようなエフェクトとなって波打っている。
「これもまた派手だな」
「まあ、いいじゃない。それがエンチャント装備だよ」
春日井君はしばらくエフェクトを観察していたが、最後はエンチャント機能をオフにしていた。鎧は銅のような黄色がかった金属色に変わった。
「最後は私だね。武器はミスリルの大剣をそのまま使う。防具はアストラル装備。頭は湊のようなサークレットだけど、全身は金属鎧。私のはそんなに派手じゃないと思うんだ」
防具を実体化して身につけると、全身が漆黒の鎧で包まれる。周囲の色をすべて飲み込んだみたいに、これ以上は色をなくすことができないだろうというほどのピュアブラックだ。
心なしか黒いオーラのような靄が鎧の周囲から漏れているようにも感じる。人によってはブラックホールを連想するかもしれない。
「黒すぎだろ……」
春日井君は枯れた声を出した。
その声と表情から察するに、思わず引いてしまうほどの黒さだということだ。
「ブラック春菜だね……」
湊ちゃんも明らかに引いていた。
「ひどいなー、湊。ちなみに、ホワイトバージョンもあるよ」
どちらかというとアストラル装備はホワイトバージョンがメインだ。鎧全体が白く変わり、淡い光を放つ。
アストラル装備は〝漆黒の宇宙〟と、〝宇宙に光る星〟の2面性を持つ。
つまり、ブラック春菜とホワイト春菜だ。
「白いほうがいいよ、春菜。こっちでいなよ」
「ああ、黒いバージョンは俺でも顔が引きつりそうなほど、ヤバい雰囲気があった」
「そうなんだ。じゃあ、2人の意見に従ってホワイトバージョンで戦うよ」
このアストラル装備もエンチャントをオフにすることができる。
オフにすると、どこにでもあるような銀色の鎧となる。
ミスリルの大剣は背中に装着した。
白いローブ姿の湊ちゃん、銅色の鎧の春日井君、銀色の鎧の私。
今は3人ともエンチャントをオフにしているので、ごく普通のハンターの姿だった。




