↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【悲報】レベル1の妹。兄の装備でダンジョン配信を始める。(84億円相当の激レア装備で最下層スタート、未確認ドラゴンに遭遇した模様)  作者: 高瀬ユキカズ
始まる人類領域への侵攻

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
340/367

第340話 戻ってきた久我ハンター

 店に並べていた全ての商品を売り切った。

 最終的にはバーゲンセール的に在庫を処分し、自分たちが使う装備ともりもりさんに返却する16億DPを残して閉店した。


「なあ、俺の見間違いだったらいいんだけれど……」


 ブルーシートを片付けながら、春日井君が切り出した。


「久我ハンターが支払った金額だけれど、300万だったように見えたんだよな。ちらっとしか画面が見えなかったけど」


 春日井君が話しているのは、灰にしてしまった魔法剣の代金のことだ。


「私もゼロを押す指の回数を数えちゃってて。ゼロが1個足りなかったけど、私の気のせいかと……」


 湊ちゃんはデバイスを操作する指の動きを見ていたようだ。

 湊ちゃんも久我ハンターの支払いをおかしいと感じていた。


「つまり、3,000万払うところを300万しか払わなかったってこと?」


 私は久我ハンターが正しく支払ったものと信じて疑わなかった。春日井君も湊ちゃんも確信があるわけではないようだったが、二人の意見を合わせると、久我ハンターの支払額は300万だと判断できた。


 それというのも、春日井君と湊ちゃんは店番をしており、絶対に金額を間違えないように確認する癖がついていた。だから、久我ハンターの支払いの異変に気づけた。


 私は腕組みをしながら顎に手をやって考える。


「久我ハンターは売るかどうかの決断を急がせたり、派手な演出で剣を燃やしたりして、そっちに意識を奪わせたんだね。まさか、まさかの、支払い額が1桁少ないなんて。こんなの誰も気づきはしない。見事なまでの詐欺の手口だね……」


 取引の際はデバイスに確認画面が表示され、そこに金額が書かれている。送金側と受け取り側の双方で金額を確認することになる。両者がOKボタンを押して決済が完了する。あのハンターは疑いもせず、OKボタンを押したのだ。


 さきほどまでは、周りにはたくさんの客がいた。多くの観衆がいたにもかかわらず、誰も疑う者はいなかった。


「私はまったく疑いもしなかった」

「俺も画面がちらっと見えたけれど、まさかと思って。今まで口に出せなかった」

「私も。ゼロの数が少ないのは、自分の数え間違いだって思っちゃった」


 私たちが久我ハンターの手口に感心していると、こちらに走ってくるハンターがいた。噂をしていた久我ハンター本人だった。


「はあ……はあ……」


 私たちの前までやってくると、膝に手をつき、呼吸を整えている。重そうな鎧を身に纏ったまま全力で走ってきたようだ。顔を上げて私に問いかける。


「さっきの男はもういないよな……」


 聞かずとも、一目瞭然だ。この場には私たち3人しかいない。商品もなければ、客もいない。


「もういませんね」


「取引履歴を見たら、300万しか払ってなかったぜ。2,700万も少なく渡しちまった」


「え!? てっきり久我ハンターが相手を騙したのかと!?」


「いや、詐欺じゃねえ。本当に間違えた」


 バツの悪そうな顔をしている久我ハンターからは悪意は感じられない。単なる金額の打ち間違いだった。


「久我ハンターが詐欺をしたわけではなかったのですね。私たち3人は見事な手口だと感心していました」


「悪(わ)りぃことしちまったな。3,000万で売れたと喜んでいたところ、実際の受け取りは300万だってんだからな」


 久我ハンターはヘルメット越しに、頭をごりごりと掻いていた。


「まあ、そのうち気がつくでしょう。2,700万も少ないのですから」


「ああ、だといいが」


 私たちは久我ハンターと一緒に苦笑いを浮かべてしまった。


「ところで、久我ハンターもゲートの出現に備えて装備を?」


「もちろんそうだ。俺だけでなく、上位ランカーはそれ以前から動き始めている」


「それはゲートの出現を予期していたからですか?」


「さすがにそれはないが、ハンター同士の格差社会が生まれるだろうということだ。より高ランクのハンターが優遇される社会だ。今までは危険はダンジョン内に留まってきた。一般市民の誰もが危険に晒されるようになった時、その時こそ俺たちハンターの価値は一気に膨れ上がる。今がその時かもしれないぜ」


 久我ハンターはにやりと笑った。無骨な顔に口ひげが濃い。優しげな表情の奥には芯の強さを隠しているように思える。年齢は30歳くらいだろう。中年太りが始まりそうな年齢だが、胴回りはぎりぎり若さと中年のボーダーラインにある。


「私はまだ中学生ですが、これからはハンター同士、協力していかなければなりませんね」


「協力? お嬢ちゃんは甘いねえ。大人になるとみんな仲良くなんてならねえんだよ。それが大人の悪いとこだ。すでにいくつかの派閥ができている。まだお互い水面下で動いているがよ」


 このあとしばらく久我ハンターと話をした。

 上位ランカーたちの間ではグループが生まれつつあったが、まだそれは明確な形になっていない。


 久我ハンターの話だと、それは単なるグループではなく、組織化されていくのではないかとのことだった。そこではルールが明確化され、リーダーが選定される。

 それぞれのグループが目的と意思を持って活動する。


 それは会社のようなものなのだろうか?


 まだ中学生の私たちにとっては、難しい話でもあった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
更新お疲れ様です。 邪魔しいのデブに比べたら、きちんと支払いミスを訂正しようとしたりハンターの闇を教えてくれる久我ハンターってわりと良い人? お兄ちゃんやもりもりさん以外なら、この人は数少ない『(精…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。