第334話 フリマを歩く
美沙さんとは別れ、3人で道を歩いていく。
たくさんのハンターが地べたにシートを広げ、アイテムを並べていた。ポーションやクリスタル、指輪やネックレスなどの小物から、武器や防具などが売られている。まさにここはフリーマーケットだった。
値札があるものもあるが、どれも高額だ。今は以前の相場の1.5倍から2倍近くまで高騰していた。
「私たちは予算が足りない。なら、増やそうじゃないか」
私は春日井君と湊ちゃんに向かって、気合を入れるように拳を握った。だが、気合が入っていたのは私だけだった。
「俺は売るようなアイテムなんて持っていないぞ」
「私もー。レアアイテムなんて持ってないし」
売るとしたら私が持っているアイテムだった。一番高価なものはミスリルの大剣だ。これは瑞稀社長が200億DPでグレゴリーさんから買い取ったものだ。だが、あの時は緊急事態でもあった。グレゴリーさんの話だと、武器のランクからして相場では10億DP程度とのことだ。
私は大剣を実体化させ、正面に掲げた。制服姿にミスリルの大剣は似つかわしくない。非常に重厚な剣だった。
「待て待て、筑紫。その剣を売るわけじゃないよな?」
「駄目? 今は相場が上がっているから15億くらいで売れるんじゃないかな?」
「それを売って、弱い武器を買うんじゃ駄目だろう」
「そうかな?」
湊ちゃんの方を向くと、無言でこくこくと頷いている。2人ともこれを売ることには反対のようだ。
周りにはたくさんのハンターがいた。私が大剣を出していても目立たないと思ったが、みんなに見られていた。さすがに大剣は人目につく。私はミスリルの大剣をデバイスに格納した。
私は両手を頭の後ろに組みながら、道の両脇に並ぶ商品を見て歩いていく。
「だからといって、無駄なものをちまちま売ってもなー。高額な商品でがっつり稼がないと。どこかに儲け話は転がっていないかな?」
「売るものがないとな。俺たちも何か仕入れて売るか?」
「美沙さんみたいに、ぼったくりするわけにいかないよ?」
湊ちゃんが言う通り、美沙さんは相場の3倍で売っていた。いずれはそのくらいになる可能性もあった。できれば早く装備を揃えたい。
「私たちの今の予算は3,700万。1人あたり、1233万3千333DPだね」
「春菜も計算が早くなったねー」
湊ちゃんが褒めてくれたので、私は胸を張る。
「このくらいの計算は朝飯前よ。でも、これじゃ全然足りないから稼ぐことにしよう。まずは目標金額を決めようか」
「買うものを先に決めたほうがいいんじゃないかな? 春菜の武器はミスリルの大剣でいいと思うよ。あとは私と春日井君の武器。それと3人分の防具だね」
「武器については、湊は弓で、春日井君は刀にするけれどいいかな?」
「ああ、それでいい」
「私もいいよ」
湊ちゃんは頷いていたが、こんなことを聞いてきた。
「ねえ、春菜ってエンチャント・オーブは持っている?」
美沙さんがファイアーマジック・ソードに使ったアイテムだ。魔法付与されてインフェルノ・ブレードとなった。
「持っているけれど。そんなに数はないよ。30個くらい。これって失敗確率が高いから不人気だし、あまり高くは売れないよ」
「美沙さんがアイテム合成をしようとした時に春菜が押したじゃない? 失敗したらどうしたの? 弁償させられてたよ」
「ああ、あれ? 成功するのがわかっていたからね」
「ええ!?」
湊ちゃんは驚いているが、私からしたら当然のことだった。
「だって、ダンジョンシミュレーターでわかるよ。たとえばこのミスリルの大剣に使ったら燃えてなくなる。100%失敗するね」
「成功確率が10回に1回って言っていたけど、どういうことなの?」
「うーん……。次に成功するか失敗するかが決まっているんじゃないのかな? アイテムが10個あったら、そのうち1個が成功するという感じみたいだよ」
「春菜にはそれがわかるの?」
「まあ、それがダンジョンシミュレーターだからね」
「待って、それって……」
湊ちゃんは春日井君と目を合わせていた。
「ああ、稼げるな……」




