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【悲報】レベル1の妹。兄の装備でダンジョン配信を始める。(84億円相当の激レア装備で最下層スタート、未確認ドラゴンに遭遇した模様)  作者: 高瀬ユキカズ
始まる人類領域への侵攻

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第328話 教室に入るゴブリン

 ビデオ通話の映像を撮影しているものだから、視聴者からは見えにくかっただろう。だが、それでも湊ちゃんの活躍は注目を集めていた。ライブ配信の視聴者が多かったこともある。

 初めて湊ちゃんのことを知った人もいたはずだ。黒髪のストレートヘアーは肩口で切り揃えられている。前髪もぱっつんに近い湊ちゃんは、大人しそうな印象を与える優等生のイメージだ。


 印象通り、湊ちゃんは真面目で成績優秀だった。これまで、スポーツにはあまり縁がなかった。その湊ちゃんがゴブリンを相手に見事な立ち回りを演じていたから、印象の落差は大きかった。


》この子だれ?

》ハルナっちのクラスメイトだよ

》初めて見た。強いの?

》そこそこ

》いや、十分強いだろ

》新規も増えてきたから、あだ名をつけてあげないとな


 あだ名やニックネームをつけるのは本名を晒さないためでもある。すでに名前を知られているとはいえ、視聴者が増えてきたら本名は出さないほうがいい。


》ミナミナはどうかな?

》ナンナンは?

》俺はナンミナがいい

》じゃあ、投票で決めようか?

》勝手に決めるな。勝手に投票をするな。

》なら、どうすればいいんだ?

》俺は水戸納豆ちゃんがいい

》ネーミングセンスなさすぎ

》ハーバーは? ハーバーちゃん。「港」から考えてみた。

》黒髪美少女ちゃん

》弓道ちゃん。エンジェル・ボウを使ってたから

》ハルナっちの友だちなんだから、ミナっち

》収拾がつかなくなりそう。誰かまとめてくれ。


 湊ちゃんは制服姿で戦っている。下に履いているのはスカートだから、最初のような蹴りは繰り出さない。ゴブリンの返り血を浴びないように、控えめな動作でダガーを操っていた。


》ところで、この子。制服なんだね

》ここはダンジョンじゃなくてゲート内だからね

》ゲートに取り込まれたの? それとも助けに入ったの?

》取り込まれたみたいだね。たまたまその場所にいたんだって

》制服でダンジョンに入るハンターなんていないから新鮮

》過去にはいたけどな。無謀なハンターが。レベル1で深層に落ちたやつ

》誰のこと?

》ハルナっちの悪口はやめて

》まあ、とにかく、制服で戦う姿は新鮮で初々しい

》そうだね。これはきっと人気者になる

》レベルはいくつ?

》いくつだろう? でもランク5だった気が

》まじかよ! 最低でもレベル50ってことじゃん! 俺より遥かに強え!

》お前、ハンターかよ?

》ハンターだよ。底辺だけど。


 このゲートでは別の配信も同時に進行している。2年4組の教室に残った生徒たちの映像もある。


 教室の扉にはふたたび机が高く積まれていた。教室の光景を撮影する生徒が1人いて、他の生徒たちはスマホを見ていた。どうやらみんなで湊ちゃんの戦いを見ているようだった。


「かっこいいな」

「ゴブリンて強いの? それとも弱い?」

「上層に出現するけれど、レベルの低いハンターにとっては脅威」

「そうなんだ。簡単そうに倒しているからさ」

「1組の子だよね? 誰か知っている?」

「南波さん。いつも学年上位にいる。静かで目立たない子だと思ってた」

「けっこう可愛いかも。顔と戦闘のギャップがなんとも」


 4組の男子たちは湊ちゃんに夢中になっているようだった。女子生徒たちも湊ちゃんに声援を送りながら動画を見ていた。


 あまりいい顔をしていなかったのが、霧野さんたち3人組だった。


「私は春日井君しか興味ないから」

「春日井君にいいとこ見せたいんでしょ」

「でも、こんなの春日井君だったらもっと早いよ。とりあえず、さっさと終わらせてほしい。早く外に出たい」


 200匹のゴブリンを倒せばクエストはクリアされる。残り10匹を切り、コメント欄ではすでにカウントダウンが始まっていた。あと1分もしないうちにゲートは消滅し、2年4組の生徒たちは解放されるだろう。


 ゲート内に何匹のゴブリンが残っているのかはわからない。次々と湧いて出てくるため、クエストクリアまで残り10匹でも、実際にはかなりの数がいると思われた。これらのゴブリンはクエストクリアと同時に消えるはずだ。


 4組の教室は廊下側に大きな窓がある。窓の近くにも机が高く積まれていた。机の間からはゴブリンの姿が見えた。


「もう終わりでしょ。早くここから出してよ」


 霧野さんがそう言いながら廊下に近づき、積まれた机の足に手をかけた。机はぐらりと傾き、手前に倒れてきた。


「危ない!」


 男子生徒が霧野さんを抱きかかえるようにして避けると、机が大きな音を立てて床に落ちた。


「やだ、触んないでよ」


 助けてくれた男子の手を払い、霧野さんはもう一度机に手をかけ、今度は自分の意志で崩しにかかった。


「早く出たいんだよ、こんなとこ。春日井君も来ないしさ。あいつらキモいし」


 キモいの言葉に反応するかのように、廊下にいたゴブリンが窓に近づいてきた。霧野さんが机を崩したために、廊下の様子がよく見えた。


 3匹のゴブリンが窓に張り付くようにしていた。


「ひいっ」


 霧野さんが声を上げると、ゴブリンは棍棒を振り上げた。


 窓を割るゴブリン。その後ろから飛び上がるゴブリン。


 窓の近くにいたゴブリンが倒れ込み、それが足場になったようだ。1匹がまず窓に乗り上がった。それから周りのゴブリンも含め、5匹ほどが窓から入ってきた。


 一番近くにいたのは霧野さんだった。


 霧野さんは尻餅をつき、蛇に睨まれた蛙のように固まってしまっていた。そこへ向けてゴブリンたちが飛びかかった。5匹が一斉に霧野さんへと……。


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― 新着の感想 ―
更新お疲れ様です。 ディストピアものやパニック映画なんかによく居ますが、なんでこういう『他人を巻き込んで不幸をもたらす』やつって存在するんでしょうなぁ…不幸になるなら一人で頼むわって感じですね。 …
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