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【悲報】レベル1の妹。兄の装備でダンジョン配信を始める。(84億円相当の激レア装備で最下層スタート、未確認ドラゴンに遭遇した模様)  作者: 高瀬ユキカズ
始まる人類領域への侵攻

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第319話 会議場を後にする

 私たちは重苦しい空気の中で会議場を後にした。湊ちゃんも春日井君も、さっきまでの明るい表情は消えていた。


 しばらくは世界中にアビスゲートが出現するだろう。しかし、プリミティブデバイスによれば出現場所の制限ができる。


 プリミティブデバイスは地球外からもたらされたと言われている。誰が何のために地球に持ち込んだのかは不明で、何ができるかもわからない。だが、ゲートの出現に干渉する能力があると思われる。そう遠くないうちに、出現場所は日本に限定されるはずだ。


 エリ先生は私たちを振り返ると、苦い顔をしていた。

「ひどい話ね。結局、日本が世界の犠牲になるってことじゃない」


 お兄ちゃんは黙ったまま歩いている。いつもなら何か言葉をかけてくれるのに、今日は違った。


「お兄ちゃん、大丈夫?」


 私が声をかけると、お兄ちゃんは立ち止まった。


「春菜。今日聞いたことは絶対に外に漏らすな。特に人類領域侵攻計画については、知らない方がよかったかもしれない」


 お兄ちゃんは私が人類領域侵攻計画のことを知らなかったと思っているらしい。


「でも、もう聞いちゃったし……」


「そうだな。なら、覚悟を決めるしかない」


 お兄ちゃんの表情は今まで見たことがないほど深刻だった。人類領域侵攻計画については上位ハンターなら知らされていたはずだ。


 人類をモンスターの脅威から守るためにはダンジョンの完全攻略が必要となる。ところがアビスゲートの出現により、攻略は急がざるを得なくなった。だが、ワールドランク2位のお兄ちゃんでさえ、ダンジョンの攻略は行き詰まっていた。奥多摩ダンジョンは地下220階から先、1階も進めていない。


 春日井君が恐る恐る口を開く。


「あの、僕たちにも何かできることはありますか?」

「君たちはまだ中学生だ。できることは限られている。だが――」


 お兄ちゃんは私たちを見回した。


「これからは今まで以上に厳しい状況になる。アビスゲートが日本に集中すれば、普通に生活していても危険が伴うということだ。ハンターとしての実力を上げておくことが、自分と仲間の身を守ることにつながる」


 湊ちゃんが不安そうに呟いた。


「私たち、本当に大丈夫なのかな……」

「大丈夫だよ、湊ちゃん」


 私は湊ちゃんの手を握った。


「私たちにはお兄ちゃんがいるし、エリ先生もいる。それに、神王装備だってあるしね――」


「春菜」


 お兄ちゃんが私の言葉を遮った。


「神王装備のことだけど、本当にもう貸さないからな。今日の会議で分かっただろう? 世界は想像以上に複雑で危険なんだ。春菜を巻き込みたくはない」


「でも!」


「議論の余地はない」


 お兄ちゃんの口調は断固としていて、譲らなかった。でも、その目には心配と愛情が込められているのが分かった。

 エリ先生が口を挟む。


「お言葉ですが、春菜さんたちはかなりの実力を持っています。だから、大統領も彼女たちに依頼を出したのです。特に今回は春菜さんたちの活躍がなければ大変なことになっていました。彼女たちに救われた人が大勢います」


 お兄ちゃんは苦笑しながら私に向き直る。


「そのことについては春菜に聞きたいことがあったんだ。いったいどうやって、デビルズ・マスターを倒したんだ?」


 お兄ちゃんは私たちが戦闘機で倒したことを知らなかった。ダンジョン配信の動画では視界が悪くて討伐の様子が映っていなかったからだ。


「俺に隠していることがあるよな?」


「別に隠しているわけじゃないよ。長くなるから、家に帰ったらゆっくり話すよ」


 ダンジョンシミュレーターのこととか、戦闘機が召喚できるようになったことはまだ話していなかった。


 それと覚醒レベルのことは話したが、その詳しい内容までは語っていない。


 覚醒レベルが上がったことで、デバイスにはダンジョンの攻略率やダンジョンブレイクまでの残存時間が表示されるようになった。


 ダンジョンの攻略はほとんど進んでいない。攻略率はまだ0.2%だ。完全攻略までは途方もなく先が長い。それなのに、ダンジョンブレイクまでは3年弱しか残っていない。普通に考えたら、どうやっても無理だった。


 私がお兄ちゃんに心配をかけたくなくて、黙っていたということもあった。あまりに不可能すぎる数字だったからだ。


 しかし、もう伝えなければならないだろう。ダンジョンはお兄ちゃん1人が攻略するわけではない。今後は私もお兄ちゃんに協力して攻略を進めることだってあるはずだ。


「まあ、俺も春菜に隠していることがあるけれどな」


 お兄ちゃんはぽつりと独り言のように小さな声で呟いた。何か後ろめたいことがあるからこそ、口にしてしまったのだろう。


 ごめん、お兄ちゃん。何を隠しているのかは、言わなくてもわかっている。


 もりもりさんとミランダさんに二股をかけていることだよね? 私は知っているんだよ。

 おそらく結婚相手はミランダさんなのだろう。私としてはまだ顔も見たことのないミランダさんよりも、もりもりさんを選んでほしいのだが、こればかりはお兄ちゃんの気持ち次第なのでどうしようもない。


 失恋してしまうもりもりさんを見るのは辛いが、仕方のないことだ。その時はもりもりさんに新しい恋人を探してあげよう。


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