第313話 フォーカード
これ以上は1敗もできない状況になって、ミリアが引き当てたのはとんでもない手だった。
それは天からの恵み。幸運の女神がもたらしたミラクル――
[6♠] [6♣] [6♦] [6♥] [10♦]
異常現象とも言うべき奇跡のカードが配られた。
「フォーカード!!」
私は思わず叫んでしまった。
ミリアの手には6のカードが4枚ある。フォーカードができていた。私と湊ちゃんは抱き合って喜んだ。
「これは勝った!」
「やったね! ミリアちゃんの初勝利だ!」
マフィアの男は勝負を投げていた様子だった。
「さすがにこれは無理だ。ここは引くか」
やはりマフィアたちは男にミリアの手を伝えているのだ。フォーカードに勝つにはストレートフラッシュ以上が必要だ。
もちろんイカサマで勝つこともできるだろうが、めったに出ることのないストレートフラッシュを作ることでミリアに疑われる可能性がある。ここで1敗したからといって、大勢に影響がないと判断するのも当然だった。
マフィアの男は3枚をチェンジしたが、役はできていない。手はブタだった。
ミリアはフォーカードの状態からその4枚を抜き出して、裏返して場に置いた。
「4枚チェンジ」
「は!?」
マフィアの男たち、そして私と湊ちゃんの声がシンクロした。
ミリアは[10♦]を残し、頑なにロイヤルストレートフラッシュを狙いにいった。6のカードを全部捨ててしまったのだ。
フォーカードを放棄してしまい、[10♦]だけを手元に残した。ミリアに4枚のカードが配られる。
その手は、
[3♣] [5♣] [5♦] [8♥] [10♦]
かろうじて、なんとかワンペアだけができていた。
ミリアはカードをオープンしながら男に問いかける。
「これはミリアの勝ちですか?」
「…………」
男は無言で上着を脱いで上半身裸になった。
ミリアは厳しい顔つきで男に言い放った。
「おじさんは勝負から身を引いたのです。勝負に勝つためには引くべきではなかったのです。これが流れを完全に変えてしまったのです。おじさんの敗因は勝負を諦めたこと。1度でも諦めたらだめなのです。ここを引いたからにはミリアの3連勝は確実なのです。ろいやるすとれーとふらっしゅにまっすぐ向かうミリアには、勝利が約束されているのです。ミリアの勝利が確定事項なのです」
「ふん。減らず口を叩けるのも今のうちだ」
男はミリアの言葉を鼻であしらった。
これで1勝2敗。ミリアは自分の勝利に確信を持っているようだが、あとがないことには変わりない。
私と湊ちゃんは今までを振り返る。
「本当だったら3連勝していたよね?」
「うん。最初はAのスリーカード、次はストレート、3回目はフォーカード。配られた時点で役ができていたからね」
「とんでもない強運だ。これなら、4回目も期待できるんじゃない?」
「ロイヤルストレートフラッシュを狙わなかったらね」
「ミリアは必ず狙いにいっている。大丈夫かな? ミリア……」
「最初にAが3枚出ちゃったから、♥のロイヤルストレートフラッシュしか残ってない。そのことにも気がついていないからね……」
4回目の勝負が始まった。
ミリアの手札。
[5♠] [10♠] [J♠] [Q♠] [K♠]
「これはもらったのです」
ミリアがにやりと笑った。
カードのマークはすべて♠だった。フラッシュの役ができていた。これに勝つにはフルハウス以上が必要だ。
だが、ミリアは[5♠]のカードに指をかける。ロイヤルストレートフラッシュのリーチでもあったからだ。
「だめ!」
画面のこちら側で叫ぶが、当然のようにミリアには伝わらない。[A♠]は初回で出ている。ここからロイヤルストレートフラッシュを作ることは不可能なのだ。
「フルハウスだ」
マフィアの男はフラッシュを上回るフルハウスを出してきた。イカサマをしているのは間違いなかった。ミリアの手を見て、それに勝てるカードをこっそりと裏から渡しているに違いなかった。
だが、ミリアはそれを上回る。
ミリアが引いたカード。それは[9♠]だった。
ミリアが作り上げた役。ストレートフラッシュ。
[9♠] [10♠] [J♠] [Q♠] [K♠]
「嘘……だろ……」
男は身を乗り出しながらミリアの手をまじまじと見つめるが、それはまごうことなきストレートフラッシュ。フルハウスを上回る役だった。
立ち上がり、ズボンを脱ぐ。
男がパンツ姿になり、これで2勝2敗。
勝負はラストの1回にもつれ込むことになった。




