↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【悲報】レベル1の妹。兄の装備でダンジョン配信を始める。(84億円相当の激レア装備で最下層スタート、未確認ドラゴンに遭遇した模様)  作者: 高瀬ユキカズ
始まる人類領域への侵攻

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
288/391

第288話 2つのグループが合流

 洞穴の中では安堵のため息をつく者もいれば、目の前の光景が現実だとは受け止められない者までいた。雷光のごとく降ってきた剣がフライング・デビルを両断したのだから、状況を把握できないのも無理はない。


 討伐されたモンスターはたった1体。

 1,480体のモンスターのうち、1体が倒れただけにすぎない。だが、強い勇気を与えてくれる大きな奇跡だった。


「助かった……。助かったぞ……」

「やった。倒せる相手なんだ……」

「帰れるよ……。絶対。俺たち帰れるって……」

「みんなで生きて帰りましょう。ねえ? 諦めちゃだめよ。ちゃんと希望はあるのだから……」


 生き残った7人の市民は男女かまわず抱き合うように体を寄せ合っていた。


 一方で、彼らを盾にして戦いながらダメージすら与えることのできなかったハンターたちは皆うつむいていた。


 特にリーダーの男は、何かを諦めたように目が虚ろだった。


 ずっとこの場所にとどまるわけにはいかなかった。安全ではない以上、ここから動かなくてはならない。それは誰もが共通意識として持っていた。全員で洞穴を出る。


 女性が前方を指差しながら、小さな声で呟いた。


「あれ、何? あの白いの……」


 赤い砂煙で視界が悪い中、前方になにかが見えた。豊満な体をしていて人のようにも見える。だが、白い毛皮に覆われていて不自然に耳が長い。


「モンスターか!?」


 身構えるハンターだったが、リーダーの男がそれを制した。


「兎の着ぐるみを着ている。俺達を撮影しているようだ」


 兎はスマホを持ち上げ、反対側の手でちょいちょいと手招きをする。


「ついてこいと言っているようだ。おそらくは俺達を助けてくれたハンターの仲間だろう」


 あたりには人間の残骸が散らばっていた。砂煙で視界が悪いことが幸いだった。血で染まった地面がハンターや市民の目に入ることはなかった。


 彼らにとって目の前の兎は希望への道しるべ。ただ前だけを向いて亡霊のように従っていく。


 時々強く砂が舞い、ほとんど前が見えなくなることもあった。


 ハンターと市民は兎と一定の距離をあけていた。理由はないが、なんとなくそうしないといけない気がしていたからだ。


「リーダー。力の差を見せられてしまいましたね」


 1人のハンターがリーダーに声を掛けた。

 リーダーはうめき声とも取れる、地響きにも似た声を絞り出した。


「力の差なんてものじゃない。俺らとは違う世界の住人だ。到底、到達することのできない遥かな高みにいる」


 兎と距離をあけて歩いていた理由がここにあるのかもしれない。前を歩く兎は自分たちとは別世界の住人なのだと。神とまでは言わないが、立っている場所が違う、一段上にいる存在たち。


 だからこそ、隣に並んで歩くことすらおこがましい。後ろに付き従うことこそが自分たちにふさわしい立場なのだ。


 ――格上に対して立場をわきまえる。


 本当ならば、頭(こうべ)を垂れて従うべきだった。見た目で判断せず、実力者に判断を委ねるべきだった。そうすれば被害はもっと少なかったはずだった。


 配信画面に映るリーダーの姿はそう物語っていた。


   ◆   ◆   ◆


 生き残ったハンターが5人。市民が7人。

 

 私たちのグループと合流した。


 対面してすぐに、リーダーが頭を下げてきた。90度に腰を折り、謝罪の言葉を述べた。


「申し訳なかった。助けていただき、感謝する」


 短い言葉で気持ちのすべてが伝わってきた。相手を見下す態度を改め、生き残るために最善の行動を取る。その決意が伝わる。


 手には私の大剣を持っている。ここまで持ってきてくれたのがリーダーだった。

 リーダーはもりもりさんに向かって頭を下げていた。この中では年長者であるし、私たちの引率者でもあるからだろう。


「ちょっと待ってください。あなたがたの命を救ったのはこちらの春菜さんです。その剣は春菜さんの物なんです」


 もりもりさんが慌てて説明すると、男は私に向き直った。


「春菜さん。本当にありがとう。あなたが剣を投げてくれなかったら、ここにいる皆は死んでいた。あなたは命の恩人だ」


 私は大剣を受け取りながら、どうしたものかと考えていた。

 適当に放り投げたらたまたまモンスターに当たっちゃいました、なんて正直に言えるような状況ではなかった。


 しかし、それにしても、たまたま当たるものなのか? そんなことが起こり得る?

 私は複雑な気持ちを抱えたまま、剣を受け取った。


「私の剣がお役に立てて何よりです。私のできることは剣を投げることくらいで、大したことはやっていないのですが」


 私はリーダーの目をまっすぐに見ることができなかったのだが、向こうはこちらを強く見据えてくる。


「何をおっしゃる。それで我々の命が救われたのです。やはり強者ともなると強さだけでなく、人間性も高められておられるのですね。その謙虚な姿勢には感服いたします」


「いや、ええと……。はあ……」


 私は頭を掻きながら、湊ちゃんと春日井君に助けを求めた。だが、視線を向けても2人は笑いながら肩をすくめるだけだった。


「ところで兎の姿をしたお仲間はおられないようですね。途中までついてきたのですが、あなたがたと合流する直前にはぐれてしまいまして」


 リーダーはきょろきょろとあたりを見回す。


 もりもりさんが問い返した。


「兎の姿をした仲間?」


「あなたがたの仲間なのですよね? スマホで私たちの様子を配信しておられました。白い着ぐるみの御方です」


「あ、ああ……」


 ようやく、もりもりさんは理解したようだ。


 私たちはすぐにラビちゃんのことだと気がついたが、もりもりさんはわからなかった。私たちはラビちゃんといっしょに戦ってきた。ラビちゃんもパーティメンバーなのだ。もりもりさんにとっては仲間意識が希薄らしい。


「そうですね。そうなんですね。仲間なんですね。なるほど――」


 なにかに納得したように、もりもりさんは1人で頷いていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。