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【悲報】レベル1の妹。兄の装備でダンジョン配信を始める。(84億円相当の激レア装備で最下層スタート、未確認ドラゴンに遭遇した模様)  作者: 高瀬ユキカズ
大統領の依頼

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265/392

第265話 上がる討伐確率

 どうやらボスは、リゾルブ処理の完了を待ってくれないようだ。

 

「逃げられない。近づいたら猿にされてしまう。いったいどうしたら……」


「90秒だよ。春菜、春日井君、なんとか90秒持たせて……」


 湊ちゃんは処理に集中していた。

 90秒待ったからといって、私たちに勝利がもたらされるわけではない。しかし、頼みの綱は湊ちゃんのスキルだけだ。


「無理だって。こんな状況なんだ……」


 春日井君は弱音を吐く。


 ツタは次々と伸び、襲いかかってくる。腕や足を絡め取ろうとしてくる。それを振り払うので精一杯だった。


「くそっ。動きづらい……」


 春日井君は刀でツタを斬っていく。私と湊ちゃんを抱えながらだから、ろくな対応ができない。


「無理だって、これ……」


 ツタが春日井君の刀に巻き付いた。

 続けて、私の腕にも巻き付く。スライムを召喚し続けていることがわかっているのだろう。私の手を鎧から引き剥がそうとしてくる。


「春日井君! とにかく木に近づこう! ギリギリまで!」


「本気か!?」


「本気だよ!」


 敵は目に見えないし、攻撃も通らない。

 実体のある存在ではなく、精霊なのだ。人間で言ったら魂のような存在だ。


 倒す手段はまったくわからないが、確かなことはそこに『居る』ということだけだ。


「どこまで近づけるんだ? 猿にされないギリギリのラインまで行くのか?」


「私が常に監視している。大丈夫。ぎりぎりまで近づけるはず」


 警告はダンジョンシミュレーターがしてくれる。ただし、命がけだ。わずかでも判断を間違ったら、私たちは全滅する。


「筑紫のタブレットは協力してくれないのか!? 高性能のAIなんだろう!?」


「知らないよ! 頼りになるんだか、ならないんだか!」


 ツタは私の手首に巻き付いている。その力よりも私の魔法による磁力が上回っているので、両手は2人の鎧にくっついたままだ。


 ツタがタブレットを狙わないのは幸いだった。役に立つかわからなくても、タブレットだけは失うわけにはいかなかった。


『我(われ)は極力、主(あるじ)の邪魔をしないようにしている。本当の危険が迫れば、ちゃんと警告を出す』


「さっき、湊と春日井君が危なかったじゃない! 首が飛ぶところだった!」


『主(あるじ)は対応できたではないか』


 私は少し頭に血がのぼり、声のトーンが上がる。


「タブさんにとっては、あのくらいは危険でもないと!?」


『取るに足らないであろう。主(あるじ)よ』


「ずいぶん余裕があるんだね、タブさんは! 私たちは本当にギリギリなんだけど!」


 両手が塞がっているので、襲ってくるツタを蹴飛ばす。私にできる攻撃は蹴りだけだ。


『主(あるじ)たちはギリギリ? いや、そうでもないぞ。討伐確率:21.1%、21.2%、21.3%……。ゆっくりだが、上昇している。あとは勢いだけだな。必要なのは』


「湊のリゾルブ終了が近いから……」


『そればかりではない。主(あるじ)の覚醒レベル4は伊達ではないということだ。もっと自分を信じることだ。確率を上げているのは南波湊のリゾルブではない。ボスに近づいたからだ』


「どういうこと……?」


『主(あるじ)よ。勝ちを引き寄せろ。それだけだ』


「わかんないよ! どうやって倒すのさ!?」


『わからなくても倒すのだ』


「無茶苦茶な!」


『それができるのが主(あるじ)だ。南波湊がマスターになった未来も面白そうだが、主(あるじ)がマスターになった未来こそ我は見たい』


「マスターなんてどうでもいいよ! 今はあいつを倒さなきゃ!」


 大木に近づいてきた。近づくほどにツタの量が増えてくる。


 10mが余裕のある安全ライン。今はおそらく8mほど。

 本当にギリギリのギリギリだ。


 でも、わからない。

 ギリギリかどうかすら、はっきりしない。


 もっと近づけるのか?

 それとも、ここが限界なのか?


 湊ちゃんのリゾルブは残り24秒。

 しかし、ツタに巻き取られ、木へと引き寄せられたら一瞬で終わる。


 冷や汗が兜の中を流れる。

 わずかな判断ミスも許されない。


 両手はがっちりと2人の鎧に張り付いている。強い磁力だ。

 磁力は不思議だ。見えないのに、どうしてこうも強力に引きつけるのだろうか。


 磁力が使えるのは、私がメタル属性の魔法を扱えるからだ。でも、どうやって磁界が生まれるのだろう? この見えない力はどうやって? もっと、勉強をしておけばよかったのか?


 でも、タブさんは言った。

 わからなくても倒せ、と。

 勝ちを引き寄せろ、と。


 つまり、わからなくてもいいのだ。確かなことは、間違いなく私は『見えない力を行使している』ということだ。


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