第256話 ボスの討伐について相談をする
中央には巨大な大木があるが、今は遠く離れている。声を出したり動いたりしてもボスに察知されることはないだろう。
私は拳を握りながら立ち上がった。
「よし、ボスを倒してしまおう。エリ先生より先に」
みんなに向かって宣言する私に、湊ちゃんは呆れた声を出す。
「どうやって? 春菜、方法とか考えていないでしょう? エリ先生に任せておこうよ。せめて、連絡があるまで待つとか」
「俺も同じ意見だな。エリ先生はボスを倒せないと言っていたし」
春日井君の言う通り、エリ先生は討伐不可能だと言っていた。だが、不可能なんてことがあるだろうか。そう思ってしまう理由があるはずだった。
「絶対に倒す方法はあると思う。倒さないと、あの猿をもとに戻せないはず。ボスを倒そうよ、私たちで」
「ちょっと待って。まだ猿がハンターだと決まったわけじゃ……」
春日井君は厳しい顔を私に向けてくる。
「あの猿はハンターに間違いないよ。確信がある」
私は断言した。
「何を根拠に?」
春日井君が聞いてくる。
「まず、ただの猿であればミリア1人で十分なはず。エリ先生がなんらかの協力をして、猿を魅了したんだと思う」
春日井君は完全に納得したわけではないが、渋々といった感じに頷く。
「まあ、猿がハンターだとするよ。ボスはどうやって倒すんだ?」
「エリ先生はおそらく木を枯らすつもりなんだと思う。でも、それじゃボスは倒せないし、ハンターたちも元には戻らない。ボスを倒す必要がある。その方法だけれど……」
「うん」
春日井君だけでなく、湊ちゃんも私のことを真剣に見てくる。
「それがわかっていたら、苦労はしない。でも、わかっていることはある」
「わかっていること?」
「ボスが枯れることで、下に降りる階段が現れる。人数が必要だけれど、ハンターたちは戦わずに安全に下へ降りることができる。これこそがボスの戦略なのかもしれない」
「どういうことだ?」
私が口を開く前に湊ちゃんが聞いてきた。
「殺されないですむ。つまり、ボスは長生きするために、あえて戦わないということ?」
「そう」
「その目的は?」
「知らない」
私の答えに、春日井君が肩をすくめる。
「知らないか。まあそうだよな」
私は周りのジャングルを見回してみる。
「自然を取り戻すため、かもね」
「どういうことだ?」
「今、私たちの周りにあるこれらの木々。これはたぶん普通の木だと思う。ボスが中央から水や養分を供給しているんじゃないかな? そしてハンターたちは原始的な動物である猿に姿を変えられた。自然豊かな状態に戻そうとしているように思った」
「人間がいない自然な森って感じかな?」
「そうかもね。だとしたら、ボスは森を延命することが使命。周りの木をいくら枯らしても、ボスが直接枯れるわけではない。供給すべき栄養が急激に増えて、それで弱っただけ」
「じゃあ、ボスを倒すには?」
「方法はまだわからないけれど、まわりの木の伐採ではないね。中央のボスに直接アタックするしかないはず」
湊ちゃんが、ラビちゃんをぎゅっと抱きしめた。
「私たちが猿にされてしまう可能性があるんじゃない?」
「大統領たちが安全に下に降りている。ボスが弱ったときなら大丈夫だと思うんだけど」
「春菜は、エリ先生たちがボスを弱らせて、その隙にボスを攻撃するとか考えていると思うけど、大統領も同じことを考えていたはずだよ。ボスを倒せない理由がほかにあるのかもしれないよ」
「倒せない理由かあ。うーん」
私は腕組みをしながら考え込む。
理由のひとつは、弱ったボスとはいえ、攻撃したら反撃してくるだろうということだ。反撃されて猿にされてしまうより、階段を降りてしまったほうが安全だ。
別の理由としては、攻撃が通らないことが考えられる。
私がかつて戦ったリビングデッド・アーマーのような存在だ。リビングデッド・アーマーは死霊系のモンスターで、通常攻撃が通らない。
「もしかして、木そのものがボスではない?」
私が出した結論は、ボスは木ではないということだった。
別のなにか……。
湊ちゃんが不安そうな顔をして、抱きしめているラビちゃんに顔を寄せた。
「幽霊みたいな存在だったら嫌だよ、私……。絶対に戦いたくない……」
「幽霊かあ。幽霊ねえ……」
私は遠くにいるはずの、まだ見えていないボスの方向へと視線を向ける。
湊ちゃんは弱気な声を漏らす。
「無理に倒さなくてもいいんじゃない? ハンターたちのことは、下へ降りてから大統領たちと相談しようよ」




