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【悲報】レベル1の妹。兄の装備でダンジョン配信を始める。(84億円相当の激レア装備で最下層スタート、未確認ドラゴンに遭遇した模様)  作者: 高瀬ユキカズ
大統領の依頼

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第227話 加速するドラゴン

 私とミリアは楽しくはしゃいでいた。ここがドラゴンの口の中という感覚はあまりない。


「ひゃっほー、行けー!」

「速いのです、お姉様! 面白いのです! 楽しいのです!」


 加速度により体は後方へと引っ張られている。ドラゴンの歯にひっかけた鎖を握り、テンションを掛けながら足を踏ん張ってこらえていた。


 私もミリアも、余裕綽々(しゃくしゃく)で鎖を操作しているが、春日井君と湊ちゃんは必死になって鎖にしがみついている。


「死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ! これ、やべーやつだ!」

「無理、無理、無理、無理、無理! 春菜たちの神経が信じられないよ!」


 2人はまるで絶叫マシンにでも乗せられてしまったかのように叫んでいた。

 叫ぶことでなんとか平常心を保とうとしているのかもしれない。

 声はどんどんと大きくなっていく。


「筑紫は飛行機が怖くて、ドラゴンがなんともないって、どういう神経しているんだー!」

「本当だよ! 絶対にこっちのほうが怖すぎ! 春菜がおかしいって!」


 湊ちゃんは目をつぶり、ほとんど座り込んでしまっていた。ドラゴンの唾液が制服のスカートを濡らしている。


 私はこの速度が楽しすぎて、湊ちゃんが怖がる理由が理解できない。


「うわあ、楽しい! ぐんぐん加速していく。そもそも、飛行機のような鉄の塊が空を飛ぶっておかしいんだよ。理屈に合わないよね? それに比べたら、ドラゴンが空を飛ぶのは普通のことだし。最高な気分!」


 ミリアも横で「こくこく」と頷いている。


「そうなのです。ドラゴンは羽を使っているのです。羽を動かさない飛行機が飛ぶことがおかしいのです。飛行機は恐怖しかないのですが、ドラゴンは楽しいしかないのです」


 春日井君は両足をガニ股にして、懸命に踏ん張っている。強烈な加速度に耐えながら、顔を少し歪めて文句を言った。


「なんだその理屈は!? 飛べそうに思えたら怖くないって、そういうことか!?」


 座り込んでいた湊ちゃんだったが、スカートが唾液で濡れているのに気がつき、なんとかして立ち上がっていた。


「春菜は飛べると信じられないものが飛ぶのが怖いんだよー。信じちゃったら、何も怖くないって、そういうこと? 私も信じればいいの!?」


 私は鎖を人差し指に巻き付け、反対の手を離した。その手で拳を握り、頭上へと振り上げる。


「そう! 大丈夫だと信じれば、何も怖くない! 信じることが大事!」


 ミリアも同意して頷いてくれる。


「お姉様の言うとおりなのです! 信じるのです! 信じることが大事なのです。ミリアもそう思うのです!」


 私たちの騒動とは対照的に、タブさんは至って冷静に速度を伝えてくる。


『さて、まだ速度はマッハにすら到達していない。この速度で維持したほうがいいのではないか? ロサンゼルスまでの時間は延びるが』


 それを聞いて、逆に私のテンションが上がってしまう。マッハ4はまだずっと先なのだ。私が指示をするまでドラゴンの加速は続いていく。


「まだまだ加速するって! 楽しすぎ!」


「え……。ちょっと待って、春菜。私、本当に無理かも……」


「湊は怖がりだねえ。ドラゴンは空を飛ぶものなんだよ。怖いことなんて何も無いって」


「無理、無理。ほんと無理……。人間が乗るものじゃないって」


「よく考えて、湊。これは鉄じゃないんだよ。空を飛ぶために羽も動かしている。空から落ちた鳥を見たことある? ないよね?」


「ないよお」


 湊ちゃんは舌っ足らずな声で答えていた。


「同じように、空から落ちたドラゴンを見たことある? ないよね?」


「あるわけないでしょ!」


 今度は少し涙目で怒った口調だ。


「飛行機は鉄の塊。あれが飛ぶなんて、なにかおかしい。でもこれはドラゴン。安全、安心、絶対に落ちない。ほら、湊も顔を上げて。ドラゴンの墜落なんて、飛行機の墜落に比べたらあり得ないことなんだから」


「わかったけど……、なんだかますます加速していない? とんでもない力が加わっているんだけれど。本当に怖いよ……」


「そうだね。でも、空を飛んで泣いていたら恥ずかしいよ。中学生にもなって」


「春菜に言われたくない! あと、泣いてないし!」


 湊ちゃんは半べそをかきながら反論してくる。涙が一滴、後方へと流れて飛んでいった。


「あはははははは」


『衝撃に備えろ』


 私の笑い声とタブさんの警告が重なった。

 続けてドラゴンの口内に伝わる振動。爆発のような轟音。

 ドラゴンの体が傾いて重力方向が変わる。左に傾いた口内では、まるで落下するかのように引っ張られる。


 私とミリアはうまく対応できたが、春日井君と湊ちゃんは舌の上でバウンドしてしまった。それでもかろうじて鎖だけは離さずにいた。


「な、なんだ!?」


 春日井君が戸惑いながら叫ぶが、ドラゴンの口は閉じられているため、外の状況は誰もわからなかった。


 タブさんが冷静な声で説明してくる。


『戦闘機による攻撃と推定。時間からして、樺太から飛び立った機体だろう。Su-57の後継機だろうか? マッハ2を超えて接近し、ミサイルを撃ち込んできた』


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