第221話 戦いを終え、AIが語り始める
とりあえずライブ配信は終了したので、3人でゆっくりと話すことができる。
氷のボス部屋はあまりに寒いから、まずは部屋を出る。
降りる時はシューターが使えたダンジョンも、帰る時は階段だ。
歩きながら会話を交わしていく。
「あのね、春日井君。EXRレベルアップシードは1,000億円とも2,000億円とも言われるとんでもないアイテムなんだよ。だから、ちょっと受け取ることはできない。返すね……」
私はタブレットを操作し、春日井君へEXRレベルアップシードを戻した。画面には【春日井隼へEXRレベルアップシードを渡しました】と表示される。
春日井君は驚きながらも、複雑そうな表情を浮かべていた。
「そうんだ。でも、相場の問題じゃないんだろう? 筑紫がわざわざ走ってきたのは。タブレットのAIが語ろうとしていたダンジョンブレイクや人類領域侵攻計画と関係があるんじゃないのか?」
春日井君は鋭いところがある。
私は戸惑いながら、肩をすくめることしかできない。
「そのことなんだけど、関係があるのは確かだよ。でも、詳しくは私も知らないんだ」
いっしょに横を歩いていた湊ちゃんはスマホを操作し、そのアイテム画面をこちらに向けた。
「たぶん、これも関係があるよね? 春菜?」
そこに表示されていたのは、湊ちゃんが獲得した超レアアイテム。EXR覚醒の種だ。
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『EXR覚醒の種』
対象の覚醒レベルを1上げるとともに、
覚醒ユニークスキルが開花する。
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「うん……。まあ……そうだね……。そっちはもっと厄介で、一般には公開されていないアイテムだよ」
そのスマホを春日井君も覗き込み、初めて見る言葉に驚きを隠せないでいる。
「覚醒……レベル……? なんのことだ? 聞いたことがない……」
私はタブレットのAIに向けて問いかける。
「タブさん。話してもいいのかな?」
AIによる合成音声が流れてくる。
『地下100階のボスを倒したら語る約束だった。知りたいのであれば教えよう。まだ主の知らない情報も含まれる。ただし、現時点で公開できる情報までだ』
もちろん春日井君にも湊ちゃんにも、聞かないという選択肢はなかった。
「そのためにボスに挑んだんだからな。教えて欲しい」
「私も。後戻りができないのはなんとなく感じている」
2人の言葉に、私は深く頷く。
「わかった。じゃあ、タブさんに話してもらおう。私もいろいろ知りたい」
『では、語ろう。まずはレベルアップシード。これは運で獲得できるものではない。獲得するためには条件がある。それが神王装備の装着経験だ』
「つまりは救世主候補ということ?」
『レベルアップシードは覚醒レベルを上げることができる。もしも春日井隼が使用した場合、覚醒レベルが1つ上がる。最も覚醒レベルが高い者こそが救世主になることができる』
「救世主ってなんなの?」
『そのうちわかるだろう。今言えるのは救世主になれるのは1人だけだということだ。そして、もしも救世主になることを望むのであれば、他の誰よりも覚醒レベルを上げる必要がある。別の手段としては、自分より高いレベルの者を排除するという方法もある』
「それって、他の候補を殺すということ? 救世主候補による殺し合い? デスゲーム?」
『悪意のある者が混ざればその可能性もあるだろう。だから候補を増やすなと言ったのだ』
「なるほどね。で、今は5人。増やさないほうがいいみたいだね」
『次に、ダンジョンブレイク。地下深くに埋まっているダンジョンが地上にせり上がる。完全に地表に出るとダンジョンは消滅し、モンスターが地上にあふれる。地上では地獄絵図が繰り広げられるだろう』
「なんだか、災害みたいだね」
『災害そのものだ。そうなる前にダンジョンを完全攻略することだ。攻略が完了すれば、そのダンジョンに関してはブレイクの恐れはなくなる。しかし、ダンジョンは世界に複数ある』
「あとは人類領域侵攻計画。これはいったいなんなの?」
『人類の領土に侵攻し、その領域を奪うことだ』
「それって、言葉そのままじゃない。主語が抜けているよ。いったい誰が侵攻してくるの? なにを目的として?」
『その前に主を含めた人類は知る必要がある。この世界のことを』
「この世界の何を?」
『主たちが住むこの世界はダンジョンと同質のものだということだ。主たちがダンジョンを攻略するように、向こうも主たちの世界の攻略を進めているのだ』




