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【悲報】レベル1の妹。兄の装備でダンジョン配信を始める。(84億円相当の激レア装備で最下層スタート、未確認ドラゴンに遭遇した模様)  作者: 高瀬ユキカズ
最強の初心者パーティ

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第216話 ボスを探す

 アイスゴーレム・ジャイアントにそれほど高い知能があるわけではない。だが単なるゴーレムとは違い、巨人族に分類されるこのボスにはそれなりの知性があった。


 作戦は何通りか考えていて、その都度、臨機応変に対応する必要がある。

 ボスに対して先制攻撃を仕掛けるパターンや、逆に先手を取られるパターンだ。今は後者の状況で動いていた。


》ボスから攻撃してきたね

》上層のモンスターは戦い方がパターン化しているけど、下層は相手に合わせて変化するという話も聞く

》学習しているということ?

》かもしれないよ


 春日井君はミスリルの鎧を纏い、手にはオリハルコン製の日本刀が光る。薄青にぼんやりと輝くその刀は鋭い切れ味を誇る反面、横からの衝撃には弱い。


 飛来する氷のブロックに対し、器用にその表面を削るようにして受け流していた。


》アックスやハンマーがいいと思うのだけれど

》あとは棍棒とか。刀は折れるかも

》このボスには相性が悪い武器だね

》でも、こちらの居場所を意図して伝えている?

》だったら、武器はなんでもいいのか

》なら、音を出すのもいいかも


「わかりました。氷が飛んでくる方向に走りつつ、氷柱などを斬っていきます」


 春日井君は日本刀で切れる太さの氷柱を切断しながら、ジグザグに走っていく。倒れた氷柱が音を立てて割れていく。まだ敵の位置は捕捉できていない。


》それにしても、さっきの女の子はどこに行った?

》映像の視界が悪いんだよね

》空気中の水分が凍って、先が見えない


 春日井君はボスとの距離を測り、安全な位置取りで移動を続ける。


「これ以上近づくと、さすがに厳しいかも……。1撃でも攻撃を受けるわけにはいきませんから」


》そうだね。レベル差があるから致命傷になる

》早くボスの位置を割り出さないと


 春日井君の動きには少し焦りが出ているように感じられた。作戦が予定通りに進んでいない印象だ。

 湊ちゃんからのチャットが入る。春日井君の耳には音声化されて届く。


》【南波湊】春日井君、聞こえる?


「ああ、聞こえる」


》【南波湊】地面にたくさん撒いたんだけど、どれも踏んだ気配すらない。なにかおかしい。


 湊ちゃんの作戦は、碁盤の目のように正確に罠を設置していくことだ。

 罠と言ってもボスにダメージを与えるような代物ではない。ダメージが目的ではなく、少量の火薬で小さな爆発を起こす、花火のようなアイテムだった。

 

「どういうことだろう? どうしてボスは踏まない? みなさんのなかで、なにか予想できることはありますか?」


 春日井君は視聴者たちに問いかける。


》巨人族は背が高い。足の力も強い。指の力で天井にぶら下がっている可能性は?

》きっと、それだ

》地上を歩いていないのか

》なら、天井から落とそう

》どうやって?

》それは誰か考えて。俺の頭じゃ無理

》俺も無理


 考えている時間はあまりなかった。AIが出した結論も天井にぶら下がっている可能性だった。だが、落とす方法が見つからない。


「これは作戦になかったので困っています。さすがに想定していなかった……」


》もしかしたら、天井に足を張り付かせているのかな?

》かもな

》だったら逆に鴨じゃねえか、動けねえんだから

》位置さえ割り出せればな

》広すぎるんだよ、この部屋

》せめて、もう少し近づければ


「危険ですが、突っ込まないといけないかもしれませんね。今は俺がわざと音を出して敵を引き付けていますが……」


》あの女の子は隠密行動中?

》女の子のほうを狙われるとまずいからね

》まあ、でも、俺たちは離れれば協力する

》ちゃんと距離を取って、健全にね

》そう、いちゃいちゃされる可能性がゼロならさ

》そりゃあ、協力するぜ

》カップルじゃないんだからな

》そろそろ俺たちの本領発揮といこうか

》AIの解析でもボスの位置は割り出せていない

》部屋の面積の約3分の1くらいまでは絞れている。

》おおよそ部屋の中央、半径200mくらいの範囲にはいそう

》広いな……

》そもそも部屋と呼ぶ広さじゃない。運動場くらいの広さがある。いや、スタジアム?

》とりあえず、罠の設置は終わったんだよね? 碁盤の目の。


「そうですね。おそらくは」


》ボスの位置を勘でもいいから仮に決めてしまって、その下で爆発を起こしたらどうだろう?

》ボスの反応を見るということ?

》そもそも爆発が無理だろ。正確に狙撃でもできれば別だけれど


「狙撃は……。できるかもしれません。彼女の弓の精度は恐ろしいほど正確ですから」


》彼女!?

》お前らああああ!

》付き合っていたのか!


「違います! 違います! ただの代名詞です!」


 春日井君は慌てて否定する。


》知ってる

》ちょっとからかっただけ

》マジになるなって。それでさ、当てずっぽうで真下を狙うのじゃなくてさ


「どうしたらいいでしょう?」


》ボスに向かう囮が必要だなって思ったんだよ

》ああ、なるほど

》どういうこと?

》もったいぶらずに、はよ

》今この男のいる地点から出発して、ボスに向かって音を出していくんだよ

》ボスも爆発が近づいてくると焦るはず

》ボスに向かって来ていると勘違いさせる作戦か、いいね

》それで相手の出方からAIに位置を解析させていくのか

》ボスとの距離が近くなれば近くなるほど、位置が正確に計算できる


「いい作戦ですね」


 春日井君が深く頷いた。湊ちゃんからの返答はなかった。春日井君の反応を見て作戦の決行と判断し、即座に行動へ移したからだ。


 小さな風切り音が鳴った。春日井君の近くで小さな爆発が起きた。そして、そこから遠ざかるように2発目、3発目と爆発が続く。


 それに反応するように氷のブロックが飛んでくる。

 マップ上ではボスの予想位置が絞り込まれていく。広大だった予測範囲が、モザイク状のブロックとなって縮小されていった。


 春日井君は碁盤の目に置かれた罠を巧みに避けながら走っていく。規則的に罠を配置したのは、味方が踏んでしまわないためだ。


 まずはボスとの距離を詰めることだ。近接戦闘になれば氷を投げる余裕はなくなり、直接攻撃に切り替わるはずだ。


 映像の先にはボスの姿がぼんやりと浮かび上がってきた。


 ボスに向かって何本ものピンク色の閃光が走った。湊ちゃんが放った矢だ。

 矢の先端には発光塗料入りのボールが取り付けてあった。ボスに命中してボールが割れ、鮮やかな黄色の塗料が付着する。


 アイスゴーレム・ジャイアントの姿が露わになった。腕を振りかぶり、矢が飛んできた方向へ氷の塊を投げつける。だが、その場所に湊ちゃんはもういないだろう。


 そして、春日井君の手にはエンジェル・ボウが握られていた。瞬時に武器を入れ替えたのだ。


「こっちだ!」


 叫びながら春日井君は矢を放つ。


 弓の扱いに不安を感じていたものの、矢は見事にジャイアントの左肩を捉えた。けれど、有効なダメージを与えた様子はない。表面に僅かな傷を残しただけで、アイスゴーレム・ジャイアントは素早く春日井君に狙いを定めた。


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