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【悲報】レベル1の妹。兄の装備でダンジョン配信を始める。(84億円相当の激レア装備で最下層スタート、未確認ドラゴンに遭遇した模様)  作者: 高瀬ユキカズ
最強の初心者パーティ

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第211話 地下99階へ

 本来のシューターは、ダンジョンハンターを下の階層へ落とすための罠だ。

 だがレベルの高いハンターにとっては、下層へのショートカットとして活用できる。


 私は50階ほどの高さを降りたはずだが、感覚としては2、3階分の高さを落ちた感触だった。


 地下99階へ降り立つと同時に目に飛び込んできたのは、異様な光景だ。

 ダンジョンの光景としては至って変わりがない。洞窟のような構造をしており、通路は石壁でできている。岩がむき出しの天井に、ゴツゴツとした石と土の地面。

 そこには、多くのアイテムが地面に散乱していた。

 武器、防具、ポーション、その他の雑貨類。具体的には、短剣、ウォーハンマー、スチールシールド、低級ポーション、腕輪、ブーツやマント、クリスタル、水晶玉など。


「あ、春菜が降りてきた。意外と早かったね」

「待っているのが暇だったから、戦利品の整理をしていたよ」


 どうやら湊ちゃんと春日井君は、蟻部屋で獲得したアイテムをここに広げていたようだ。


「そういうのは帰ってからやろうよ……」


 私は呆れながら肩をすくめた。


「でもさ、普通だとボス部屋でこういうのをやるじゃない? ダンジョン配信で見たことがあるよ。でも、シューターで降りてきちゃったからさ」


 確かに湊ちゃんが言う通り、配信では視聴者に獲得アイテムを披露するために広げることがある。

 春日井君は少し気が抜けた様子で私に尋ねてきた。


「それと、筑紫に聞きたかったんだけど、どれもたいしたアイテムじゃないんだよ。レアアイテムってこんなに出ないものなのかな? もしかして、俺たち運が悪い?」


 周りを見回すと、言われた通り珍しいアイテムはない。どれもこれもありふれたものばかりだった。

 私はその理由を説明する。


「それは春日井君のレベルが50だからだよ。あの部屋の推奨レベルは30代後半で、女王蟻でも40代後半。格下のボスを倒してもレアアイテムは出にくいんだよね」


「なるほど。じゃあ、売ってもたいした金額にならないな。まあ、戦闘も楽だったし、しょうがないか」


「私が初めてダンジョンに来た時は、レアアイテムをたくさん入手できたんだけどね。それはレベルが離れた格上を倒したからだし、貴重なアイテムがほしいなら格上との戦闘は避けられないね」


「それは経験値もか? たくさんの経験値が欲しかったら、格上と戦わないといけないのか?」


「そうだね。レベルが上がるほど、必要な経験値は跳ね上がる。春日井君の場合は次にレベル59から60へ上がるときに行き詰まると思う。だから、安全に冒険をするのか、危険を(おか)すのか、選択を迫られるときがくるはずだよ」


「それについては、俺は決めている。安全にいくのなら、最初からダンジョンハンターにはなっていない。どこまでも強くなるつもりだよ。でも、問題は南波だ。南波はハンターになるつもりなんてなかったじゃないか。それなのに今は、俺たちとこうして地下99階まで来てしまっている」


 春日井君から急に話を振られ、湊ちゃんはやや困惑していた。

 戸惑いながら応える。


「そんなこと言われても困るよ。春菜のお兄さんから借りた装備のおかげで安全に戦えているけれど、覚悟があるかって聞かれたら、まあ、ないよね……」


 湊ちゃんが少し黙り込んだところに、これまで沈黙していたタブレットのAIが話し始めた。


『覚悟がないのなら、大統領からの依頼も断ったほうがいい。それと、今から向かおうとしている地下100階もだ』


 そもそもの目的は地下100階だ。理由は湊ちゃんと春日井君をボスと戦わせることにあった。ここのボスすら倒せないのなら、大統領からの依頼なんて無理だからだ。

 AIの音声が続く。


『問題は南波湊にある。君は強くなる理由を持っていない。強くなろうとする理由と、その意志があるのか? ないのなら、ダンジョンから立ち去り、二度と足を踏み入れないことだ。今すぐに帰りたまえ』


 AIにしては強い口調で、感情がこもっているようだった。

 あまりの物言いに、私はタブレットに向かって声を張り上げた。


「ちょっと、タブさん。言いすぎじゃないかな? 湊はまだハンターになったばかりなんだよ。強くなる理由なんてあるわけないじゃない」


『それは考え方次第だ。南波湊は神王装備を身に着けている。(あるじ)はこれが偶然だと思うのか? 彼女も(あるじ)と同様に選ばれた者である。だが、人類を救済するという覚悟がなければ無駄に死ぬだけだ。なら、救世主は(あるじ)だけでよかろう』


「人類を救済? 救世主? なんだか話が大きくなっていない? 私は大統領からの依頼を受けるために、ここで湊と春日井君を鍛えようと思っただけだよ」


『大統領からの依頼? なにもわかっていないな…… なにも……』


 具体的なことをAIは話してくれない。

 私は少しいらいらしてしまった。


「タブさんさあ。知っていることがあるのなら、全部教えてよ。ダンジョンってなに? どうして生まれたの? ダンジョンブレイクって? 人類領域侵攻計画っていったいなんなの?」


 私の言葉を遮るように、急にAIの音量が上がった。


(あるじ)!!』


 AIの制止は遅く、春日井君と湊ちゃんは私の発言を聞き逃さなかった。


「ダンジョンブレイク? 人類領域侵攻計画? 筑紫、なんのことだ?」

「春菜、なんのことを言っているの? 春菜こそ、なにを知っているの?」


 私の代わりに、すぐにAIが弁解する。


『知らなくていいことだ。知ってしまうと後戻りはできない。戻ることのできない一方通行なのだ。(あるじ)はすでにその道を進んでしまっている。(あるじ)1人に救済を任せればいい。共に重荷を背負うことはない』


 もちろん、そんな言葉で2人とも引き下がることはなかった。


「いや、待てよ。そこまで聞いて引き下がれない。俺にとって筑紫は大事な友だちだし、本当なら筑紫より強くなって守りたい。いっしょに戦いたい」


「私だって、春菜は大切な友だちだよ。さっき、私のことも選ばれた者だって言ったよね? 私もその道を選ぶのなら、春菜のようになれるっていうこと?」


 春日井君も湊ちゃんも興奮気味に話していた。


『落ち着くのだ、2人とも。覚悟もなければ実力もない者に語ることはできない。この先は地下100階。攻略レベルは65。安全に倒せるであろう推奨レベルは80。地下100階のボスを2人で倒せるのであれば語ろう』


「わかった。約束だぞ」

「いいでしょう。やってやります」


 春日井君と湊ちゃんは、むきになって答えていた。


『なら、レベルを上げることだ。今のレベルでは到底無理だ。3年以内にレベル65に到達できるか? それが無理であれば話にならない』


「今から戦えってことじゃないのか?」


『無理だろう。南波湊は集団戦に強い。春日井隼は生物系のモンスターと相性がいい。だが、地下100階のボスは2人にとって非常に厄介な相手なのだ』


「でも、それを倒せたら? 私たちは認められるっていうことか?」


(あるじ)の力を借りずに倒せれば……な』


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― 新着の感想 ―
更新お疲れ様です。 なんか急に重たい話になって来たぞ…? まぁタブさんの話が全部正解って訳でもないですが、覚悟を決めるのは大事な選択というのは正しいですよね。 それでは今日はこの辺りで失礼致します…
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