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【悲報】レベル1の妹。兄の装備でダンジョン配信を始める。(84億円相当の激レア装備で最下層スタート、未確認ドラゴンに遭遇した模様)  作者: 高瀬ユキカズ
最強の初心者パーティ

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第197話 ゴブリンメイジの集団

 マッピングアプリには地図だけでなく、近くにいるモンスターをドットで表示する機能がある。


 モンスターの放つ魔力のようなものを検知しているらしい。アプリの性能は以前よりも向上しており、近づけばモンスターの名前やステータスを確認することもできた。


 ドットの色は、私たちのパーティに対してどれくらいの強さがあるのかを示している。

 青・黄・赤・紫の4段階で、自分たちより弱いモンスターなら青だ。地下13階であれば、表示されるドットはすべて青だった。


 今はまだ距離があるためモンスターの位置がドットで表示され、その色とモンスター名だけが判別できる。


 春日井君は自分のダンジョンデバイスを見つめながら、不思議そうに首をかしげていた。


「なんだか、やたらと固まっているドットがあるよな?」


 湊ちゃんも同じように怪訝そうな顔をしている。


「私たちの移動経路だね。都合のいいことに」


 湊ちゃんもアプリの使い方に慣れてきたようだ。彼女が持っているのはただのスマホだが、私のタブレットを経由することでダンジョンデバイスと同等の機能が使用できている。


「モンスター名を見ると『ゴブリンメイジ』。こんなこともあるんだね。春菜が言っていたのってこれのことでしょ?」


「そうそう。ゴブリンメイジの集団を相手にしたかったの。でも、都合が良すぎて漫画やアニメだったらご都合主義って言われちゃうね」


「まあ、いいんじゃない? こんな偶然もあるよ。ね、春日井君」


 湊ちゃんの声には少し緊張が混じっており、春日井君に同意を求めているようでもあった。


「大丈夫かな? あ、大丈夫というのは南波が怖くないかっていう意味だけど。怖くはない?」


「大丈夫、がんばるよ。春日井君」


「むん!」といった感じで、湊ちゃんは気合を入れようと両手をグーに握って構えた。


 歩き出すと、すぐにゴブリンメイジの集団と遭遇した。

 その数、12匹。

 アプリを見てわかっていたことではあるが、12匹ものゴブリンと一度に遭遇するのは珍しい。まだこちらとの距離はあった。


「ずいぶん多いな。こっちに向かって走ってきたぞ」


「たぶん、まだファイアーボールの射程圏外なんだよ。湊、春日井君、注意して。届く距離に来たら一斉に撃ってくるから」


「私、どうしたらいい? なにをすればいいの?」


 不安そうな声で湊ちゃんに尋ねられる。


「何もしなくていいよ。ただ見ていて。いざとなったら私が対処するから」


 すぐにゴブリンたちは近づいてきて、5mほどの距離で足を止めた。一斉に杖を振りかざし、ファイアーボールを放ってくる。無数の火の玉がこちらへ飛来し、洞窟内は赤く熱せられ、視界が炎に包まれた。


「うわあ! ちょ、ちょっと待って。これ……、本当に平気なの!?」


 湊ちゃんはへっぴり腰になり、半身に構えている。正面から受けるのではなく、いつでも逃げ出せるような姿勢だ。私はそんな湊ちゃんの腕を握り、声をかける。


「平気……な……はず……」


 少し違和感を覚えたため、私の返事はどこか頼りないものになってしまった。


「『はず』って! 春菜! 大丈夫って言ったじゃない!」


「言ったけどさ! 通常より威力が強い気がするの!」


「気がするってなに!? 大丈夫なの!? 大丈夫じゃないの!?」


 放たれたファイアーボールは、私たちに直撃する寸前で爆散して消滅した。私たちの身体の周囲には、薄青いベールのような膜がぼんやりと浮かび上がっている。


「パッシブスキルが発動したよ。ファイアーボールはすべて無効化された」


「じゃあ、大丈夫だったんだね」


 湊ちゃんはほっと胸をなでおろす。

 ゴブリンたちが掲げる杖の先が光り始めた。魔力を溜めているのだ。その光は徐々に強まり、次なる魔法攻撃の準備を示していた。ゴブリンメイジの魔法にはタイムラグがあり、再発動にはチャージが必要だった。


――無事だと!?


 ゴブリンのさらに奥から、小さな声が聞こえた気がした。

 私は春日井君に確認する。


「春日井君、今の声聞こえなかった? ゴブリンメイジが喋ったのかな?」


「いや、ゴブリンメイジは言葉を話せないはずだ。そんなに知能も高くないし」


 湊ちゃんも聞こえなかったようで、首を振っていた。


「じゃあ、気のせいか……」


 私は深く考えず、次の行動に移ることにした。


「とりあえず数を減らしておこうか。こんな集団を放置しておくわけにもいかないし」


「あ、じゃあ、私の弓の練習をしてもいい?」


「いいよ。でも適当に射って、さっさと先に行こう。ゴブリンメイジ相手だと練習にもならないからさ。適当でいいよ、適当で」


「うん、わかった。じゃあ、適当に数本射っておくね」


 湊ちゃんは背中から弓を下ろして弦を引き、本当に無造作に矢を放った。ゴブリンメイジに命中するものもあれば、脇をすり抜けていく矢もあった。


――うぎゃ!?


 洞窟の先、はるか遠くで小さな悲鳴が上がった。今度は間違いなく聞こえたような気がした。


「え? やっぱり人の声がした気が……」


『大丈夫。かすっただけだ』


 私の言葉にが、タブレットのAIが応答する。「かすった」というのは、ターゲットのゴブリンに対してという意味だろうか?


「気のせいじゃない?」

「俺にも聞こえなかったな」


 湊ちゃんと春日井君は、やはり聞こえなかったと言う。


「じゃあ、先へ進もう。次はちょっと40階に寄って行きたい」


――40階!?


 声の主は、洞窟のずっと奥、ゴブリンメイジたちの後方にいるようだった。


「やっぱり声が聞こえた。間違いなく誰かいる」


『ふはは……。主よ、次は40階か。レベル30には少し厳しいな』


「タブさん、レベル30って何? いったい何のこと? ねえ、春日井君も声が聞こえなかった? 湊も?」


「こだまじゃないかな? ダンジョン内は声が反響しやすいし」

「そうだよ、きっと。春菜の声が壁で跳ね返ってきたんだよ」


 2人ともあまり気にしていない様子だったので、私も考えすぎかと思い直し、気に留めるのをやめた。


「そっか、そうかもね」


 タブレットを操作し、地下40階へのルートを検索する。13階に寄り道したことで、他のハンターと遭遇する可能性が高まりそうだった。


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