042 いざ、領主邸へ!
とある男が茂みからある集団を覗いていた。
盗賊団の斥候である。ここで獲物を見つけ、襲うのであれば情報を仲間に伝えるのだ。
そして、男は頭を抱えていた。
判断基準は護衛だ。護衛の数が自分たちより多いならそれはパス。死んでしまっては意味が無い。
しかし、ある程度護衛がいればそれは美味しい獲物ということになる。
しかし、目の前にいるそれは初めて見るものだった。
自分達は大規模な盗賊で、それなりに人数もいる。だから、護衛の方が圧倒的に多いなんて事は早々ない。
今回も例にもれずに、護衛はそれなり。基準的には美味しい獲物だ。
しかし、おかしいのである。
その護衛がどっからどう見ても王国軍の兵士なのだ。オマケに騎士までいる。
そして、その内側。メイドやら執事やら近衛やらいろいろ・・・近衛!?
そしてさらにその内側。豪華な装飾の馬車もなく、恐らく自分達の食料のみと思われる積荷しかない。あんな物、初めて見た。
そして、中心の豪華でない馬車に乗っているのは明らかに護衛ではないおじさんと貴族の娘と思えなくもない少女だ。
「お、お頭!」
「なんだ?獲物か?」
「い、いや、それが・・・
不思議な集団なんです。おそらく、サーカス団か何かかと。でも、いいもの持ってました。狙ってもいいかもしれねぇです。」
「そうか。よし、行くぞ!!」
「「おぉ!!」」
そして、数分後、遠くから見え始めたサラ達の姿を見て、頭は男を怒鳴りつけた。
「おい!?王国の兵士が何であんなにいるんだ!?」
「いや、でも、あれ、おかしくねぇですか?」
「何がだ!?」
「兵士とメイドと下級貴族っぽいのと平民、それにオンボロ馬車ですぜ?多分、サーカス団か演劇団の連中かと。金は持ってそうですぜ。」
「確かに。そうだな。よし。お前らいつも通りにやるぞ?」
「サラ様、囲まれています。それなりの規模の盗賊団のようです。いかがなさいますか?」
「予定通りにお願いします。」
「了解致しました。」
街道を行く、物騒なと言わざるおえない程の戦力を有するサラ達に忍び寄る盗賊達は、いつも通りの方法にでた。
そう。いつも彼らがやる相手に対して圧倒的戦力を見せつけて降伏させるというやり方を。
「さぁて、そこの旅の御一行様方?一応兵士の衣装は来てるみたいだが、こっちは元冒険者が多い。おとなしく金になるもんを置いていきな!」
そう。この盗賊団。団員の多くは元冒険者なのだ。それゆえに自分たちの戦闘力にそれなりの自信があった。
「ほう?剣なんて抜いて、そんなに殺されたいのか?まあ、いいだろう。お前ら!女以外は殺して構わん。」
盗賊団の頭が命令をするのと同時に、サラも命令を出す。
「彼らを制圧しなさい!」
「はっ!各員、サラ様の身の安全を最優先に行動せよ!」
王国軍の部隊と盗賊がぶつかり合う。双方の前衛が混じりあっているから後衛の魔術師は回復に専念する。
しかし、正規の軍人と冒険者崩れの集まり。その力の差は歴然である。王国軍部隊の兵士の中にも負傷するものはいたが、死者は出なかった。最も、それが出来る強さがあれば盗賊になんてならないのだ。
しかし、盗賊側には下手に強いが故に兵士が手加減できずに致命傷を与えてしまうこともあった。
結果的に、わずか二十分程の戦闘で盗賊団は壊滅。王国軍部隊にアジトの制圧と盗賊団の逮捕を命令し、サラはクロエ率いる特務部隊とボイド侯爵領を目指した。
そして、ボイド侯爵領の領都グランドにも、もちろん、警備兵がいる。
そして、身元確認があるのだ。初めに名乗り出たクロエの身分証をみて、警備兵が固まる。
「近衛騎士団!?いえ、失礼しました!念のため、所属とこの街に来た理由をお願いします。」
「我々の所属は第二近衛騎士団第三特務大隊特殊護衛部隊。私は、隊長のクロエだ。この街に来た理由はサラ様の護衛だ。」
「なんと、特務の!では、サラ様がこちらに?」
「と言うか、目の前にいるのですが?」
サラは身分証明を見せる。もちろん、ミスリルの方である。
「・・・!?大変失礼致しました!どうぞ、グランドを満喫してください。」
「ありがとう。」
特に何事もなく済んだのが幸いであった。しかし、警備兵にとっては王族に会えた上、話もできたのは嬉しいが、それはそれである。新たな最優先任務が発生したのである。
一刻も早くボイド侯爵にこの事を伝えなければならない。
万が一、サラ達の出迎えが出来ないと一大事なのだから。
故に、警備兵は走った。それなりの広さのあるこの街の中を全力で。
それを見たものが事件でも起きたのかと勘違いするほどに。いや、ある意味大事件だ。
侯爵がこの国の端にあるのは、信頼されているからだ。爵位が高く、王に信頼されている者が王国の周り、そして、重要な国境を任されるのだ。
つまり、王族。ましてや今、王国で最も力のあるとまで言われるサラが来ているのだ。機嫌を損ねる理由には行かない。
領主固有の領主軍に帰属する警備兵として、威信をかけた戦いである。
「「サラ様、我が主、ボイド侯爵領へようこそお越しくださいました!」」
「えっと、これは・・・」
「おそらく、先程の警備兵が知らせに走ったのでしょう。」
「にしても、これはやりすぎでは?」
「それだけ、ボイド侯爵にとってはサラ様のご訪問が大事だということです。」
「では、この歓迎に報いなければいけませんね。」
領主邸の門から中までメイドや護衛の兵士がズラリと並び、この短時間に用意されたとは思えない装飾や料理が庭に並んでいた。
それこそ、サラがパーティーでもあったのかと錯覚するくらいには。




