043 色々と準備を
「サラ・リステイン様。クリフスト・ボイド、ボイド侯爵家当主を賜っています。ようこそ我が領地へお越しくださいました。どのようなご要件でしょうか?」
「ボイド侯爵、歓迎ありがとうございます。間もなく王都から知らせが届くかと思いますが、リステイン王国はサンドラ王国と会談をすることになりました。そして、両国の合意の元、国境に面しているこの領で会談をすることになったのですが、大丈夫ですか?」
「もちろんでございます。直ちに使節団の受け入れ準備に入らせます。」
「お願いします。それと、王都から私の騎士団がこちらに来ると思います。そちらもお願いします。会談はあと30日後を予定してます。」
「承知いたしました。では、少し失礼します。バート!聞いたな!人が足りなければお前の判断で動かしていい。準備に動け!」
ボイドにバートと呼ばれた執事は礼をして屋敷の中に戻っていった。
「では、サラ様、ここでは何ですから、中で話を聞かせていただけますか?」
「はい。」
ボイドに連れられ、サラは屋敷の中に入る。王城程ではないが始めてきたサラは迷いそうなくらいのものだった。
サラが案内されたのはいかにも高級そうなテーブルやソファーの並ぶ応接間だった。サラの一歩後方には相変わらずメイド姿ままのクロエが立っていた。
「サラ様、是非お座りください。」
「ありがとうございます。クロエさんもどうですか?」
「お心遣いありがとうございます。ですが、私のいるべき場所はここなので問題ありません。」
「そうですか。辛くなったら言ってください。
では、ボイド侯爵。順を追って説明しましょう。」
おそらく、護衛だからやメイドとしてなど、色々あるのだろう。
そういう結論に至ったから、サラはあまり気にせずボイドとの話に戻した。
「まず、アリス・・・元女王の元にサンドラからの使者がきたそうです。ですが、外交に関する事は私が担うことになっているので、私が王都から離れていたがために両国の境であるここでという訳になったのです。
最も考えられる理由は、ただの新女王の元のリステインとの国交や貿易の再確認ですね。」
「なるほど、では、最もではない可能性なんとお考えで?」
「はい。砲艦外交なんてことにならないといいのですが。」
「ほうかん外交?」
「あぁ、いえ、武力、軍事力を盾にした外交です。何しろ、王族の残りが私たちだけなものですから。強気に出ればあるいはなどと考えてないとも言えず。」
「なるほど。」
「申し訳ありません。ボイド侯爵の領地を巻き込む形になってしまうかもしれません。」
「いえ、そこまでお考えだったとは。安心いたしました。それで、私は何をすればいいのですか?」
「はい。領民やご家族の安全を第一に考えてくださって構いません。しかし、西のバーシアス、南のサンドラ、そして、リステインすべてに面した海から敵が来る可能性を危惧しています。ですから、私の騎士団の一部を沿岸部に展開したいのですが、そこの住民達には避難をしていただくかも知れません。
領主である、貴方から説明していただいた方が、皆さんも納得するでしょう。」
「海から・・・ですか?」
「はい。リステインでも船の軍事利用は進められています。向こうが既に完成させていてもおかしくないかと。向こうは、こちらに面している北側以外はほぼ海に面していますから。西南以外海がない我が国よりも開発が進んでいる可能性は大いにあります。
そして、我が国で開発中の砲艦も、大量投入されては成すすべがありません。」
「なんと、そこまでとは・・・確かに、海から大量の兵に加え、大砲の砲撃まであるとなると、辛いですね。」
戦況を想像したのか、ボイド侯爵は眉間にシワを寄せる。
サラは、リステイン王国の技術レベルから考えて、魔法という物理法則すら超越するものがある世界で兵器の発達は必然であり、その成長は地球のそれをも超えるかもしれないと考えていた。
バーシアス帝国との技術交換で既に強い魔法を撃ち出す戦車の様なものを見た時からそう感じていた。
「私の方でも、対策はします。ですが、もしそうなった場合、沿岸部への被害は免れません。ですから、避難をお願いしたいのです。」
「わかりました。」
と、そこへサラの携帯電話がアリスからの着信を伝える。
「ボイド侯爵、少し失礼します。
もしもし?」
「あ、もしもし?おねーちゃん?会談の場所なんだけど、サンドラの方からボイド侯爵領のサンドラとの国境、海沿いのリーファスでどうかと言われたんだけど、どう?」
「海沿い・・・わかった。それでお願い。少し、手荒なことになるかもしれないけど、戦争にはならないから安心して。」
「うん。終わったら、一回帰ってきてくれない?」
「いいけど、何かあった?」
「いや、・・・・・すこし、さ・しい・・・」
「え?」
「いや、何でもない!じゃあ、終わったら教えてね!」
「うん。その内政の方、頑張れ。」
「ありがとう。」
多分、寂しいと言ったのだろう。
それもそうだ。サラは精神年齢はかなり高いが、アリスは正真正銘家族をほとんど無くした10歳だ。寂しいに決まってる。
サラは、少し反省した。これが終わったら、1度王都へ戻ろう。
それまでには、復興もだいぶ進むだろう。
学園の仲間にも会えるかもしれない。
そのためには・・・
「ボイド侯爵、もう一つお願いがあります。」
「なんですか?」
「土の操作系魔法に長けた魔術師を貸していただけませんか?それと、海沿いの山に穴を開けてもいいですか?」
「両方とも、おまかせします。私は、領主軍には陸上の警備強化、海沿いの街への避難の支持を致します。」
「ああ、それなのですが、会談はリーファスで行います。リーファスには避難の支持は要りません。」
ボイド侯爵との話し合いも終わり、サラは作戦を考えていた。戦争にせず、相手が武力を盾にした外交をしてきた時に対処法する方法を。
3週間後、第二近衛騎士団と領主軍の土魔法が得意なもの達によって、リーファスの近くにある海沿いの山に大きな穴が開けられていた。
とてつもなく大きな穴が。
その穴は高さが50m、そして、水中にも20mほど。長さは400m程もある。
ここに、サラの切り札にして、武力による威圧を一瞬にして砕けるものが入る。
そして、サンドラ王国との外交の日までの一ヶ月は瞬く間に過ぎていったのだ。




