040 グランドへ!
「すみませ〜ん」
うどん屋のおっちゃんにまた来ると伝えて、サラは宿を探していた。
「はーい。って、あれ?おねぇちゃん1人ですか?」
とある宿を見つけて入ると、外見12歳(年齢も同じ)のサラから見ても小さな女の子が出てきた。
もちろん、血縁関係はない。
「そうだけど、宿、泊まれるかな?」
「一人部屋ですか?」
「うん。あるかな?」
「空いてます!1泊銀貨2枚、5泊で銀貨12枚の先払いですが、大丈夫ですか?」
「うん。これでお願い。」
前回、サラは学んだのだ。うどん屋で。
金貨などだそうものなら騒ぎになると。
だから、数少ない大銀貨を出した。
まあ、それでも、少女が持っていれば驚かれる額なのだが。
「大銀貨ですか?」
「うん。とりあえず、1泊分でお願い。」
この世界では、銅貨が最低単位で銅貨が10枚で銀貨1枚、銀貨10枚で、大銀貨1枚。ここまでが、一般に使われる額だ。
そして、大銀貨100枚で金貨になり、またそれが10枚で大金貨になる。
そして、今のサラの手持ちは金貨と大金貨がほとんどだ。
「これは、本格的に仕事しないと不味いかなぁ。」
お金はあるのに、高額すぎて使えないから小銭を稼ぎに仕事をする。不思議なものだ。
疲れがたまっていたサラは、部屋につくなりベッドに倒れ込み、そのまま眠りについた。
翌朝、サラを起こしたのは携帯電話モドキだった。
「うぅん・・・・?
え?アリス?」
「あ、もしもし?」
「お姉ちゃん?」
「そうだよ。どうしたの?」
「本当に話せるんですね。離れていても。」
「もちろん。」
「それで、今、サンドラから使節が来て、挨拶だとか何とか言ってたんだけど、なんか、条約かなにか結びたいらしいんだけど。どうしたらいい?」
「じゃあ、それは・・・ちょうどいいや。国境付近のボイド侯爵領で会談するって伝えて。私、端の方だけど今そこにいるから。」
「王城ではなくていいのですか?」
「まあね、サンドラとは仲は悪くないけど、特別言い訳ではないから、向こうにとっても自国領が近いのは安心だと思うよ。まあ、大きい川が流れてるから、大丈夫だと思うよ。いまから、侯爵家に行くから、サンドラの人には伝えておいて。」
「では、私も」
「いや、アリスは王城に残って。内政もまだ掴めきれてないだろうし、なんか嫌な予感がするから。それと、使節の護衛として可能な限り私の騎士団をこっちに来させて。」
「お姉ちゃん、それは、また戦争に・・・」
「違うよ。ただの保険。刺激しないようにするから安心して。ただ、向から来たなら容赦はしないけどね。」
「日取りは?」
「1ヶ月後にして。」
「わかりました。お願いします。」
サラの冒険者ライフはまた少し遠くなりそうだ。
もちろん、そんなこと、サラが許容できるはずがない。
待ちに待った冒険者という楽しそうな未来を手放すつもりは全くない。
翌朝。あることを考えたサラは、冒険者ギルドに来ていた。
「すみません。ボイド伯爵領の領都への護衛依頼ってありますか?」
「あの、ギルドカードを確認させていただいてもよろしいですか?」
「はい。」
サラは、隠す必要も無いので素直に渡す。もちろん、銀の昨日作った方だ。
「あなたが・・・。わかりました。ありがとうございます。依頼の件ですが、グランド・・・領都行きは何件かあるにはあるのですが、Bランクとは言っても実績が無いので、先方が認めて下さるかはわかりませんが、大丈夫ですか?」
そう言いながら、受付嬢がいくつかの依頼書を並べて行く。
「それはわかってます。一番受けてくれそうなのはどなたですか?」
「では、アイズさんはどうでしょう?報酬こそ少ないですが、恐らく、向こうに着けばもっと払って下さると思います。信用もできる方ですよ。」
「それは、どうしてですか?」
「アイズさんは商人の中では有名な商会主で、孤児院に寄付をしたり、時々料理を振舞ったりと優しい性格で有名なんですよ。
それが、来る途中で大規模な盗賊団に襲われたらしく、帰り分の食料調達で僅かに隠し持っていたお金も使ってしまったみたいなんです。
それで、ギルドの報酬は依頼主からの先払いでギルドを通して受注者に渡されるので、この額なんです。」
「わかりました。では、その方のところへ行ってみます。」
「わかりました。では、1度受注差し止めにしておきますので、決まり次第ご報告をお願いします。」
「わかりました。あの、アイズさん?の居場所ってわかりますかね?」
「リーフリース商会の商社にいると思いますよ?最近出来たばかりの建物です。ギルドを出て少し左に行けばわかると思います。」
言われたとおり、建物はすぐにわかった。
これは、明らかにお金持ちの立てる建物だ。
これだけの物があって、何故中にお金が無いのか不思議なくらいだ。
「すみませーん!」
「はい。どなたですか?」
「冒険者ギルドから来ました!」
「おぉ!それは有難い!」
ドアが開き、中から渋いおじさんが出てくる。
「私は、ここの商会主のアイズだ・・・えっと、お嬢ちゃんが冒険者?」
「はい。護衛依頼を受けに来ました。」
じゃあ、行きましょう。とはならず、当然怪しまれる。
「その、お嬢ちゃんは、パーティーの使いできたのかな?」
「いえ、私1人です。」
「じゃあ、お嬢ちゃんが冒険者だと?」
「はい。ギルドカードならここに。」
「銀!?」
手渡されたギルドカードに、アイズは目を丸くしていた。
「それにしても、実績が何も無いんだが、最近登録したのか?」
「はい。ランク試験に受かったので・・・」
「そ、そうか。ただ、お嬢ちゃん1人には任せられない。これは、お嬢ちゃんの力を信じてないわけじゃないが、大人としてそれは出来ない。」
「何故ですか?」
「ギルドで聞いたかは知らないが、私の馬車は盗賊に襲われたんだ。ここに運び込む予定だった金品を全て取られた。幸い、女性はいなかったから良かったが。」
「私、多分そこらの盗賊には負けませんよ?」
「いや、そこらの盗賊じゃない。あいつらは多分大規模な盗賊だ。もしかしたら、手配されているかもしれない。」
「なら、戦える大人が複数いればいいですか?」
「今の私に金はない。向こうに着けばいざ知らず、今はギルドに渡している分でギリギリだ。追加で払うのは難しいぞ?」
「大丈夫です。ついてきてください。もちろん、向こうへ向かう準備をして。」
「そうか。なら、信じるぞ?」
「はい!」
「で、嬢ちゃん。何故ここに?」
サラがアイズを連れて来たところ。それは、リステイン王国軍の駐留所だった。
「もちろん、兵士に手伝ってもらうためです。」
「いやいや、いくらBランクと言っても冒険者は冒険者だ。それに、仮にお嬢ちゃんがどこかの貴族様だとしても、王国軍に命令権はないんだよ?一一般市民の個人的な護衛なんて余程のことがないとしないよ。」
「それは・・・どうでしょう?」
これは、人選を誤った。
アイズの率直な感想だった。




