039 カード完成!そしてうどん
「ギルドマスター、これは・・・」
「あぁ、わかってる。」
「あのお嬢ちゃん、本当に人間なのか?」
「多分な。ただ、平民じゃない。多分、リステイン王国の実質的な支配者だ。」
「は?リステイン王国の頭はアリス陛下だろ?」
「まあ、そうだ。しかし、ギルマス会議で聞いたんだが、ギルドの諜報部隊の報告によれば、アリス陛下の姉にあたるサラ王姉様がこの国の行方を握っているとか。」
「なんでだ?両方まだ小さい少女だったと思うんだが。」
「そうだ。ただ、そんな幼き女王が最も信頼していてこの国の軍と外交を任され、そして・・・・・」
「そして?」
「バーシアス帝国との戦争をほぼ単独で制圧するだけの力があるらしい。」
「まさか・・・な。」
そう。簡単に信じられる話じゃない。しかし、実際に目の前にいるのだ。名前、年齢、性別が同じでいとも簡単に街一つを消し飛ばしてしまいそうな魔法を放ち、自らでその力を押さえ込んだ人物が。
「あの、サラ・リステイン様ですか?」
「えっ!?」
「「?」」
「なんで・・・」
「じゃあ・・・。す、すみませんでした!ご身分を知らなかっとはいえ、ご無礼を致しました。」
ギルドマスターが慌てて謝罪しながら肩膝をついた。それを見て、ギルもそれにならう。
「ちょ!?や、やめてください!」
「いえ、そういう訳には・・・」
「あぁ、もう。わかりました。では、サラ・リステインとして貴方方おふたりに命じます。
私は諸事情で身分を隠して冒険者になります。その際、今あった出来事及び私がサラ・リステインであると言うことの他言を一切禁止します。
また、それらを悟らせるような行動も禁じます。これまで通りに接してください。
そして、これはお願いですが、出来れば試験はこのまま受けさせてください。」
「あ、あぁ、わかった。」
「ありがとうございます。」
「それと、試験に関しては合格としか言いようがない。よし。私の部屋にもどるぞ。っと、その前に、まずは、ここをどうするかだな。これでは誤魔化そうにも誤魔化せん。」
「俺には治せないぞ?誰か、魔法を使えるギルド職員は・・・あ、いや、嬢ちゃんまさか、治せたりするか?」
「まあ、多分。」
「そうだよな・・・」
もう、驚くことすら諦め始めているギルとギルドマスターであった。
「では、始めます。」
ふたりは無言で頷く。
「我、汝らに願う。すべての生命に祝福と試練を与えし恵の雨よ、すべてを照らしその温もりで包む輝ける太陽よ、すべての命を育みし広大なる大地よ。貴方方に願おう。大地を司りし豊穣の神、すべての木々の長たる大精霊よ。荒れ果てたこの地に愛を!神庭転写!」
サラのイメージ通り、大地の神の庭。その数多の自然が荒れた大地に転写され、上書きされていく。
「ギルマス・・・」
「荒れた土地が・・・」
それこそ、この魔法というには少しばかり効果の強すぎる魔法を連発してしまったサラか放つ神力の輝きにふたりは夢のような出来事だと思いつつも、目の前にいる存在こそが「神」その物なのではないかという思いにも囚われていた。
一方、サラは唖然とする2人を横目に完璧に2人の口止めができたと安心していた。
もちろん、自分に第2近衛騎士団の中の精鋭中の精鋭で構成された護衛に見られていたなど知らずに・・・・・
そして、その情報が少し離れた場所にいる護衛部隊の本隊の40人ほどにまで伝わっていることも。
また、リステイン王国軍部内に不思議な宗教ができ始めたのはこの時だった。
サラがリステイン王国を導くために降り立った神か神の御使いであると。
「さて、サラさ・・・嬢ちゃん。本当にBランクでお作りして大丈夫か?」
「あの、ギルドマスターさん?言葉遣いがおかしいですよ?」
「あ、ああ、わるい。で?」
「はい。お願いします。くれぐれも、お間違えのないように。」
「わ、わかった。例の件に関しては機密扱いで登録しておく。こうしておけば、ギルドマスターや貴族など、立場のある人にしかわからない。」
「それでお願いします。」
ギルドマスターが水晶の様なものにカードをかざして操作を始め、しばらくすると、カードが銀色になった。
「じゃあ、最後にこのカードに魔力を流し込んでくれ。」
「こう?」
「よし、完成だ。」
「嬢ちゃんは、その、自分の身分証があるだろうが、これも一応身分証になる。こっちを使ったほうが・・・
まあ、トラブルは少ない・・・と思いたい。」
そう。サラが元々持っているのは王族である証となり、最高ランクのカードであるミスリルの身分証だ。
ギルドマスターはそれよりはと考えたのだが、ミスリル、金の次にランクの高い銀のカードで冒険者ランクBの少女。
どちらもあまり変わらないのではと考えるのであった。
「では、ありがとうございました。しばらく街を見て回ってからなにか依頼でも受けに行きます。」
「お、おう。無理はするなよ。」
「お心遣いありがとうございます。ギルさんも、色々とありがとうございました。」
「おう。なにかあったらまた手伝ってやる。」
こうして、何事もなく・・・
とはいかないが、無事冒険者登録をすることが出来たサラは街の散策を始めた。
ここは、リステイン王国の南の端にある領地のため、北よりの王都とは違う雰囲気がある。
「あっ!うどん!!!」
そう。サラは久しぶりに懐かしい食べ物を見つけたのだ。
「おじさん!これ一つ下さい!」
「嬢ちゃん、うどんの事か?」
「そうです!うどんです!あぁ・・・」
ただのうどんだが、もう食べれないと思っていたものに出会うと感動が込み上げてくる。
「銅貨8枚だ。」
「え・・・」
「どうした?金がないのか?」
「いえ、そういう訳では・・・」
「まあいい。訳ありみたいだし、まだ若いんだ。今日は俺のおごりだ。」
「え、あ、あの・・・」
「いいから食え。」
お金がない訳では無い。
銅貨なんて細かいお金がなかったのだ。
アイテムボックスにも金貨しかない。
でも、後で説明すればいい。
まずは、うどんを一口・・・
「えっ!?どうした?嬢ちゃん、なんで泣いてんだ!?」
「あの、いえ。すみません。」
何故か、目から涙が溢れてくる。
今までは色々とありすぎて実感がなかったが、こうして失ったものに触れると溜まっていたものが流れ出す。
「もう、2度と食べられないと思っていた故郷の味だったので・・・」
「嬢ちゃん・・・サンドラの生まれか?」
「いえ、一つ隣の国という問題ではなく、どんなに頑張っても、どんな手段を使ってでも、2度と行くことが出来ない場所、合うことが出来ない人の事を思い出してしまいました・・・」
地球の味にかなり近いこのうどんの味は、過去の自分、家族、友人、生活、今では絶対に見ることの出来ない当たり前だった町並み。
それらを思い出させるのに充分だった。
そして、この日、サラはこの世界で初めて人前で泣いたのだった。
そして、うどん屋の店主はサラの背中をそっと撫で、「大変だったな」とだけ言った。
多分、サラの過去など全くわかっていない。それでも、その言葉は確実にサラの心に届き、心のうちに留めていた感情をしっかりと受け止めた。
「お、嬢ちゃん。起きたか?」
「うぅん・・・・・・・!?」
サラはハッと当たりを見回す。
日は既に傾き、店にも夕食を食べに来た客が増え始めていた。
「あの、私・・・」
「大丈夫だ。気にするな。少しは楽になったか?」
「はい。すみません。ありがとうございます。」
「また、来るといい。泣きに来てもいいが、客として来てくれると嬉しいな!」
「はい!あ、そうです。さっきのうどんの代金、お支払いします。」
「いや、いいんだ。それに、お金、ないんだろう?」
「いえ、その、身分は・・・すみません。今はいえないのですが。でも、今もっているのが大銀貨で・・・」
「はぁ?まさか、貴族様だっか?いや、でしたか?」
「あの、お願いですから普通に接してください。それに、私は貴族ではありませんから。」
「そ、そうか。で、お釣が多くなっちまうがいいか?」
「いえ、お釣りはとっておいてください。」
「いや、そんな大金・・・」
「その代わり、今度、また、美味しいものをたべさせて下さい。」
「そうか。なら、その時はこれで最高の飯を作ってやる!」




