021 鋼鉄のバハムート
「では、サラ様、どうかご無事で。」
「はい。バイスさん達も。また、会いましょう。」
また会おう。これは半分は多くの場合、普通の別れとして使われる。
しかし、それは時として最後の別れの言葉ともなる。
言葉とは面白いものだ。
同じ言葉、同じ場面でも、状況によって全く意味が逆になるのだから。
「サラ様とリステイン王国のために!
全員、最速で作戦を遂行しろ!」
「「「「おおおおおおお!!!!!」」」」
「では、サラ様、言ってまいります!」
完全に1万5千で王都から兵士、避難民救出に行くのと、たった1人で龍災と数万のバーシアス帝国軍に突っ込んで行くのでは、明らかに後者の方が困難で危険なのだが、言ってまいります!と言われると、どうしても逆に聞こえてしまう。
少し前にゼロ戦を見たからだろうか。
ふぅ。
と、離れていくバイス達の背中を見ながら息を吐き出した。
ため息ではない。これは決意の表れだった。
と、この決意を持って頭を全力で回転させていた。
王都を迅速に開放し且つ帝国を完全な敗北へと誘える最高の手段を。
原子爆弾?
ダメだありえない。
戦艦?
ここは陸地だ。浮き砲台にすらならない。
天使?
そもそも、天使って強いの?
エミール
回復してるのかわからないし、無理はさせられない。そもそも、リステイン王国が勝ったことにしなければ。やはり、人工物で。
王都への爆撃?
爆撃機でも創るか?でも、その後どうする?
でも、爆弾より、戦艦の主砲弾の方が破壊力があると聞いたことがある。
まあ、実際には炸薬、つまり、爆発の元となる物の量は小型の航空機爆弾程度の30キロ程だったらしいが、それを包んだ1.5トン程の鉄の塊が超音速で飛んでくるため、その威力は昔の炸薬2000キロ、TNT爆弾1.5トンに相当し、直撃すれば厚さ40センチの装甲板も貫けるらしい。
それならば、狙った場所へ、そして、空の龍へも攻撃できる。
幸いなことに、龍は1点に止まって悠々と眺めているので、格好の的だ。
なるべく、地球の技術を越えないようにしていた。地球の技術でさえオーバーテクノロジーなこの世界にそれ以上のものをもたらすなんて正気の沙汰ではない。
そして、戦艦大和の主砲を作ろうとしたサラだったが、主砲の外観は知っているが、仕組みや船体内の部分など、全くわからない。
が、ここで気がついた。
ある程度やらかすと決めたのだ。
そして、王都にいるのは龍と信頼のおける騎士団とそれどころではない避難民、そして、帝国兵だ。
戦艦についている主砲だけを創れないなら、戦艦ごと創ればいいと。
そこからは早かった。
というか、まだ避難が完了していないため、急ぐ必要も無い。
サラは、今後の夢のために少しだけ細かく設定を考えた。
『主に兵装や見た目は戦艦大和で。でも、砲の精度とか、通信機とか、ミサイルとかレーダーの性能は私の知っている地球に置いての技術でできる範囲にグレードアップ、防御力もそれなりに!それと、内装とか部屋とか設備とかも地球の現代技術でできる最高のものを!!それで、私の意思通りに勝手に動いてくれる水上航行はもちろん、飛行可能な戦艦!』
が、多くの人はこう思うだろう。
それは戦艦とは言わない。むしろ、なんとか戦艦ヤマトの方だろう。
いや、少し違う。
サラの頭の中をそのままに言い表すなら、『強くて居心地がよく、自分の思い通りに動いてくれる便利な第2の城』である。
これこそ、大和ホテルである。
サラは、期待に胸をふくらませた。
その一時は、戦争のことなど忘れて。
この船に乗って海を渡るのもいい。
空を飛んで各地を旅するのもいい。
サラは、東の空に合図の発炎筒の煙を見つける。これは、あらかじめ渡しておいたものである。
退避完了の合図である。
サラは創造の力を使い始めた。
こうして光の粒が集まることで形を創り始めた戦艦?を横目に、サラは物凄い倦怠感と頭痛、吐き気に襲われた。
そして、その意識は朦朧とし、サラは倒れてしまった。
サラの気絶する前の最後の努力は、直前に出来上がった謎戦艦をアイテムボックスにしまった事だった。
避難とサラの切り札までの時間稼ぎとしてまだ少数の近衛騎士団の騎士や魔法師が戦っている。
「サラ様!!!」
そんな中、サラを担ぎ上げ、自らの馬に載せて戦場を走破する1人の男の姿があった。
その姿は、まさに姫を救出した英雄であった。
そして、その英雄の目には、今抱きかかえている少女が直前まで召喚しようとして失敗したのであろう巨大な物。
鋼鉄の龍。いや、鋼鉄の龍王とも言うべき物の姿が焼きついていた。
皆さん、読んでいただき、ありがとうございます。
皆さん、夏といえば何を想像しますか?
私は、海やプール、とにかく水のある所を思いますね。暑いのは苦手です。




