022 転換点
白い天井が見える。
頭が痛い。
そして、身体が全体的に重い。
ここはどこだろうか?
いや、違う。そうじゃない。
私は確か、戦争に・・・・・
「っ!!!王都が!!」
サラは飛び起きようとしたが、身体が全くいうことを聞かない。
「サラさん、動かないでください!」
どこかで聞いたことのある、しかし、全く思い出せない声がサラの耳に届く。
「・・・ごめんなさい、どなたですか?」
「へ?私ですよ。セレネティアです。
ティアとお呼びください。」
「で?何しに来たの?」
「いえ、たまたま会いに来ようかと様子を見ていたら、今にも消えそうなサラさんがいたので。」
「え?消えそう?」
「はい。サラさんの根源である神力がほぼ底をついています。」
「あの、一応聞くけど、仮に神力?が無くなったらどうなるの?」
「サラさんという存在が消えます。」
「はぁ!?なんでよ!」
「そんなの、サラさんがあんな変なものを創るからですよ!
そもそも、サラさんの能力は、この世界の全てに干渉する力です。それで、この世界にあるはずのない技術、大きさで物理法則を超越するものなんて創ったら、途方もないような神力を使うに決まってますよ!
そもそも、干渉の中でも創造だけが馬鹿みたいに神力を使うんですから!」
サラはすごく嫌な予感がした。
「え?じゃあ、このだるさも、この前物創って遊んでた時にちょっと疲れたのも?」
「はい。神力の消耗によるものです。
世界に干渉して創造をするためには、かなりの量の神力を使います。
そして、創造はその大きさや複雑さ、その世界への干渉度、影響力によって比例するように神力の消費が増えます。
神のなせる最高の力で世界に直接改変を加えるのですから当たり前です。」
「え?じゃあ、せっかく創ったのに使えないの?あの戦艦。」
こんな思いまでして創った渾身のお城戦艦が使えないかもしれないということに。
「いえ、一度作ってしまえばあとは、通常の神力の消費ですみます。
恐らく、あの変なものを動かすのには大した量も要らないでしょう。
でも、あんまり長時間物理法則に逆らった飛び方をすると危ないですよ。
それにしても、なんであんな物創ったんですか?この国では大砲なんてないのに、戦艦である意味あったんですか?
それに、もうあれ戦艦じゃ無くなってますし、そもそも、神力で動いてたらこの世界の魔力での攻撃なんてないも同然じゃないですか。
ちょっとやりすぎじゃないですか?」
サラはほっと、胸をなでおろし、安心した。
が、すぐにセレネティアの言葉が戻ってくる。『この世界の魔力での攻撃なんてないも同然じゃないですか。』
なんだって?
そんな、この世界の対空戦闘の力なんて魔法ぐらいなのに。
何故こうなった。
しかし、今更仕方がない。
サラが神力で出来るのは物を創るところまでだ。その後に付け足すことは出来ても、創りなおす事は出来ない。
どうしようもないので、サラは攻撃されないなら安全だ。と開き直ることにした。
「まあ、分かったんだけどさ、助けてくれない?」
「はぁ、次からは気をつけてくださいよ?」
セレネティアが何かを呟きながらサラに触れると、サラは身体のそこから力が戻ってくるような感覚になり、気がつけば頭痛や倦怠感は無くなっていた。
と、不意に、「じゃあ、また。」と言い残してセレネティアが消えた。
どうした事かと思い、困惑するサラであったが、すぐに分かった。
「お姉様!ご無事でしたか!?」
サラの寝かされていた部屋に駆け込んできたのは、サラの妹。恐らく、サラにとって今この世界で最も大切であろう人物だ。
「アリス。心配してくれたの?ありがとう。」
「はい。お姉様が皆さんのために敵に立ち向かって行って倒れたと聞いた時は気が気ではありませんでした。
ご無事なようで嬉しいです。」
サラの妹──アリス・リステインである。
「アリス、別にそんなかしこまらなくても。私達、姉妹でしょ?」
「そうですね。」
一度、話をきり、大きく息を吸うアリス。
「お姉様、一つ、お願いを聞いてください。」
「何でも言って。」
「少しの間、胸を貸していただけませんか?」
そういったアリスの目には涙が浮かんでいた。
それを見て、サラはある結論にたどり着いた。
あの王都の惨状からして、王宮は無事ではなかった。つまり、そこにいた可能性の高い国王と王妃、サラの、そしてアリスの父と母、さらに2人の姉の生存は絶望的だ。
恐らく、兄は戦線にでていたからあの惨劇には巻き込まれていない。
そして、アリスはその最悪の報告を聞いてしまったのだろう。
王都陥落と家族の死を。
「・・・うぐっ・・・うっ・・・・あぁぁぁぁ!!」
しっかりしていると言われていたアリスもまだ10歳だ。
前世の意識が主体となっているからまだサラの精神は安定しているものの、アリスはそうではない。
サラは、アリスをそっと抱きしめた。
「大丈夫。この国も、この国の人たちも守ろう。
それが私達にできる、お父さんやお母さんへの恩返しだよ。お父さん達の出来なかったこと、私達でやって見せようよ。
それに、まだ、御兄様が」
いる。そう言い終わらないうちに、扉が開けられ、一人の兵士が入ってくる。
服装と披露からして、伝令だろう。
そして、その後には第五近衛騎士団のバイスさんたちがいる。
「申し上げます。キルク第一王子、グライア平原にて戦死なされました。
敵は、王都に前線基地を作ろうとしています!」
「サラ様、あなたの騎士、あなたに忠誠を誓ったものとして申し上げます。
サラ様、王宮にいた国王陛下、王紀様、姫様達の安否はわかりません。
が、おそらくは・・・・・
よって、いま、リステイン王国の行く末はサラ様にかかっています。
どうか、ご命令を。」
それは、戦時下だから、王族だから仕方の無いことなのかもしれないが、10歳と12歳の少女達には辛い、そして、サラ達とリステイン王国の大きな転機となるバイスの発言だった。
次回、リステイン王国が反撃の狼煙を上げる!!!




