012 エミール
今回から視点が変わります。
「私は、ここに第5近衛騎士団の設立を宣言します。
そして、バイス・ライゲルトさんを我が騎士、第5近衛騎士団の団長とすることを宣言します。」
「この者、我が娘、サラ・リステインによる第5近衛騎士団の設立を52代リステイン王国国王として見届ける。」
サラの設立の宣言と国王の見届け宣言でサラの第5近衛騎士団設立が正式に決まり、発表された。
この後、第5近衛騎士団に導入したこの世界にはない考え方の説明などをして式典は終わった。
式典が終わり、サラは第5近衛騎士団所属の馬車で学園に向かっている。
もちろん、国王や王妃は少し残っていくように誘ったが、サラは学園に行きたいという理由だけで断った。
その帰りの馬車、窓から外を眺めていたサラはちょうど通りすぎる路地の小道に人が倒れているのを見つけた。
「止めてください!」
「姫様!」
サラは、護衛の制止を無視して止まった馬車から飛び降り、路地へ走った。
「あなた!大丈夫!?」
倒れていたのは少女だった。
が、貧しくて満足食べられなくて倒れているようには見えない。
というか、しっかりとした生地の服を着ている。
サラは少女が倒れている理由を考えたが、その答えはすぐにわかった。
始めに駆けつけたときは路地の暗さと焦っていたこともあって見落としていたが、原因は明白。理由はわからないが、吐血している。
でも、まだ息はある。
「この子を王宮へ!はやく!」
「は、はい!」
サラがようやく追いついてきた護衛の騎士に命令をだすとすぐに動いた。
それもそのはず。彼らの所属は第5近衛騎士団であって、そのトップであるサラの命令は絶対だからだ。
しかし、それと同時に発足時に最大の命令として何か間違っていると思ったら意見するようにとされている。
護衛騎士の中で一番階級が高い者が口を開いた。
「姫様。」
「なに?」
「私は、第2護衛小隊隊長のダリスです。階級は中尉です。意見具申をよろしいでしょうか?」
(中尉って言うと、士官だけど階級は低いってところかな。)
「なんですか?」
「一般市民を王宮に入れるとなると、少し問題になるかもしれません。」
そう。王族が一般市民を一人助ければ、必然的に他も助けなくてはならない状態になる。
そして、それは置いておいたとしても、少女を王宮に入れるにはそれなりに手続きが必要になる。
「そうですね。確かに。でも、その子は助けたいんです。」
「そこで、王宮ではなく教会へ向かわれてはどうでしょう?」
「教会の治癒術士より王宮の医者の方がよいのでは?」
「いえ、私は専門ではないので詳しくはわかりませんが、恐らく、毒か呪いの類いでしょう。
それならば、教会の治癒術士が適任です。」
「なるほど、物知りなんですね。では、教会へお願いします。」
「承知いたしました。」
教会へ行くと、急患として扱ってもらえた。
いや、明らかに急を要しているが。
「聖女様、この子は助かりますか?」
「サラ様これは毒にも近いですが、呪いです。解呪しますので、少しお待ち下さい。」
聖女が、祈るように何かを呟き、5分ほどすると少女の表情が和らいだ。
「サラ様、終わりました。もう大丈夫です。が、念のため数日は安静にさせてください。」
「ありがとうございました。」
これで、サラは2つの物を得た。
少女の命と、聖女様はすごいという知識だ。
もともと、サラは無宗派で無神論者だったので教会の病院も気休め程度だと考えていた。
が、あれを目の前で見せられては信じない訳にはいかない。
サラはあのあと、未だに目を覚まさない少女に寄り添い続けている。
「私を助けたのはお前か?」
突然かけられた声に一瞬戸惑うが、すぐに自分に向けられた少女からの問だとわかり、説明する。
「いえ、確かに私はあなたを見つけてここまで運ばせましたけど、実際に治療したのはここの治癒術士さんです。」
「わかっている。だが、路地で吐血していて助からなさそうな少女を助けるようなものはいなかったからな。
私は、お前に感謝したいのだ。
ありがとう。」
「いえ、どういたしまして。
私は、サラ・リステインです。一応、この国の王女なので、何かあったら言ってくれれば力になりますよ。」
すると、少女は少し考えてからこう答えた。
「なら、いくつか願いを聞いてもらっても構わないか?」
「もちろん。」
「まず、一つ目だが、私がお前の友として今後お前についていくことを許してほしい。
もちろん、ただでとは言わん。それ相応の対価は払う。お前の|守護神≪ガーディアン≫となる。
そして、これは二つ目だが、私がお前の|守護神≪ガーディアン≫である間、食事と寝床の提供と出来ればお前との血の契約を望む。」
「なるほど。ごめん。さっぱりわかんない。」
「戯け。まさか、私達のことを知らんわけではないな?」
「えっと?だれ?」
この世界においてはかなり常識的な事だが、サラは知らなかった。
いや、厳密に言えば知ってはいたのだが、それは子供時代のサラ・リステインの意識の中にあり、今のサラの記憶の中にはどうでもいい歴史の内容程度にしか記憶されていなかった。
「お前、神と魔王については知ってるか?」
「・・・・・」
「はぁ。この世界には、神と魔王いや、そう呼ばれる者たちがいる。
どちらも、創造神によって造り出された。数千年前までは創造神によって縛られていたのだが、今では皆好き勝手にやっている。
そして、人間といざこざがあって敵対した者が魔王と呼ばれ、その他が神族と呼ばれるようになったということだ。」
「で?」
「うむ。話を戻すと、私は闘神エミールと呼ばれている。つまり、神だ。」
場に沈黙が訪れる。
サラは、今までの情報を整理するのでいっぱいだ。
「驚かんのだな。」
「い、いやぁ、普通は驚くんだけどね。
あいにく、私はもっと意味のわからない奇跡体験の結果ここにいるからね。」
「ふん。死地からでも蘇った感じだな。」
「うーん。まあ、近いかな。」
「なっ!?」
「で?そんなことより、説明は?」
「そ、そうだな、私達神族や魔王は生きるのに神力が必要だ。そして、人間の血には常に一定量の神力が流れている。
そこで、私がお前の|守護神≪ガーディアン≫となる変わりに血の契約を結び、その神力を分けてもらおうと言うわけだ。
確かに、お前一人の神力では私が全力を出すには足りないだろうが、まあ、十分だろう。」
「私に害はないの?」
「あぁ、問題ない。」
「なら、契約成立だね。
どうせ、私が断ったら当てないんでしょ?」
「痛いところを突いてくるな。まあ、そうだ。
これからよろしく頼むぞ。サラ。
私のことはエミールと呼んでくれ。」
「わかったよ。エミール。」
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