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銀白の錬金魔術師  作者: 月と胡蝶
第三章 王位継承編
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親衛隊との戦闘その2

なんとも親衛隊の狙い通りに近距離戦に持ち込まれてしまった二人だが、この時点でまだシルイトは何の行動も起こしていなかった。

唯一したことといえば、ブラッキーが床に捨てたルトゥカが入った袋を拾って肩にかけるようにして持ち上げたくらいだろう。


「おい黒ローブ」


念のため名前がばれないように色で呼ぶことにしたシルイト。

ブラッキーもその意図に気付いたようで特に考えることもなく返事をした。


「何かしら?」

「今動けるか?」


シルイトが聞いているのは文字通りブラッキーが今現在行使している魔術を中断してルトゥカを連れて逃げられるかというもの。

重要なのは重要な情報を持っているであろうルトゥカを誰かが安全なところまで連れていくことであって親衛隊を全員無力化する必要はないのである。


「残念ながら厳しいわね。私の魔術は使うのを止めるとかなり早い段階で回復しちゃうのよ。所詮は幻痛ってところね。それを連れていくならあなたが行った方が良いと思うけど」

「もう一人の銀ローブが心配でね。まああの様子を見れば大丈夫そうだな」


シルイトの目線の先には精鋭である親衛隊と互角以上に近接戦を繰り広げるコンフィアンザの姿があった。




シルイトに見られているとは気づいていないコンフィアンザ。

元より動体視力、体力、判断力において常人を上回るスペックで造られたコンフィアンザはどちらかというと銃による遠距離戦よりもコンマ以下での判断が求められる近接戦の方がより相手を圧倒できるというのも事実だった。

実際、銃を撃つコンフィアンザを見て近距離戦は苦手だろうと考えた親衛隊も体力と集中力がなくなって来たのか動きに当初のキレがなくなってきている。

すると当然スキがうまれ、そこをコンフィアンザがつく。


最初は親衛隊もやせ我慢かと思ったほど容赦なく金属のアーマープレートに叩き込まれるコンフィアンザの拳。

それによって形が変形するのはコンフィアンザの手ではなくアーマープレートの方。

もはやそのアーマープレートに当初の輝きは無かった。


コンフィアンザもただ攻撃するだけでなく、なぜさっきの銃弾の軌道がそらされたのかアーマープレートに接触することで考察をしていた。

近接戦の最中、コンフィアンザはその問いに結論を出した。

弾の軌道がそらされた原因はアーマープレートの作り方にあるのではないかと考えたのだ。

つまりアーマープレートを構成する金属に平らなものを使うのではなく、正面から弾が当たるとほとんど負荷がなく弾を反射する角度でカットされた金属を使っているらしいということだ。


とりあえず結論が出たので対策はこの戦いが終わってから考えることにしようと分析に割いていた意識を近接戦に戻そうとしたコンフィアンザ。

しかし戦っている間に余計なことを考えていたのがまずかった。

意識を切り替える際に一瞬だけできたスキを突き、親衛隊が猛烈なアッパーをコンフィアンザの胴体に浴びせたのである。

普通の人間なら少し体が浮くくらいの威力だったのだが、悲鳴を上げたのは親衛隊の方だった。


「うがぁぁ!!」


親衛隊はコンフィアンザにあてた方の右手を左手でかばいながらコンフィアンザから距離をとった。


コンフィアンザは自分の腹のあたりをさすって状態を確認した。

触感は違和感一つない平常の状態だった。少し首を傾げたコンフィアンザだったが相手がひるんでいるチャンスを見逃すはずもなかった。


コンフィアンザの動きに気付いた親衛隊は右手を攻撃されないように背中の後ろに隠しながら構えたものの両手でもいっぱいいっぱいだった戦闘が片手でできるはずもなく、あえなくコンフィアンザに倒された。




コンフィアンザが親衛隊を倒しているとき、シルイトは扉の向こうから新たにやって来た親衛隊「オメガ」と向かい合っていた。

時は少し前に遡る。


「なら俺だけ先に脱出する」


コンフィアンザの戦いっぷりを見たシルイトは自分が助太刀しなくても大丈夫だと結論づけて先に離脱することにした。


「わかったわ、それじゃああなたの実家で落ち合いましょう」

「そうだな・・・ただ、それはここを脱出できたらの話になりそうだ」


シルイトが見つめる扉から一人の大男が入って来た。


その大男は他の親衛隊と同じように煌びやかなアーマープレートを付けていたため同じ所属であることはすぐにわかったのだが、他の親衛隊のものよりもだいぶ武骨なデザインとなっていて、より実戦に特化した構造になっているようだった。


「ここから先は誰も通さんっ!!」


大男は扉から屋敷の中に一歩だけ入ると腕と足を肩幅に開きがっしりと構えた。


「ますた、援護に来ました」


向かってきた親衛隊を沈ませたコンフィアンザがシルイトのもとへ戻って来た。

かなり白熱した格闘戦を演じて来たはずのコンフィアンザだったが息が切れた様子は全くない。


「ああ、お疲れ様。それじゃあとりあえずあいつに銃を一発ぶっ放してみてくれ」

「了解です」


そう言うとコンフィアンザは仕舞っていた銃の内一丁を取り出して撃った。

弾は確かに大男にあたったのだが今回は弾道をずらされることすらなく完全に防がれた。

攻撃を受けた大男はというと、下手に動いて扉の守りが薄くなれば誰かが逃げ出しかねないと思ったのかてこでも動かないようだ。


「ダメみたいです。目視ではかすり傷すら見えません」

「気にする必要はない。自衛できるようにしてろ」


目視とは言ってもコンフィアンザの目は他の身体機能と同じくかなり強化されているものなので実質傷はつけられなかったと見ていいだろう。

シルイトもコンフィアンザが銃の弾道をそらされているのを見ていたので特に驚きはしなかった。

代わりにシルイトは自らの銃を取り出した。


「パーマネント」


いつものように鋭い殺気と共に永久不変の弾丸が放たれた。

シルイトは勝利を確信して薄く笑みを浮かべていたがやがてすぐにかき消されることになる。

シルイトの殺気を浴びた大男は固まるのではなく逆に触発されて大きな唸り声のようなものをあげた。


「ふんっ!!」


その声と共に大男から無秩序な魔力が放たれた。

シルイトのパーマネントバレットは魔力を用いて効果を表す類の技である。

そのため濃密な魔力下ではその効果が大幅に薄れてしまうのだ。

今回もそれと同じ現象が起きていたため、パーマネントバレットはそれ以上進むことができずに地面に落ちた。


「厄介な奴が相手だな」

「どうされますか?」

「秘策がある。おい、黒」

「なに?」

「そっちの魔術の行使の片手間でいいから一分間だけ煙を出すとかであの大男の目から俺を見えなくしてほしいんだ」

「それくらいならお安いご用よ。今からやる?」

「ああ、やってくれ」


シルイトがそういったと同時にブラッキーとシルイトが動き始めた。


次回は来週の土曜日、零時に投稿予定です。

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