親衛隊との戦闘その1
外からなだれ込んできたのは六人ばかりの男達。
全員がそろって煌びやかなアーマープレートを付けており、顔はそのアーマープレートに隠れてよく見えない。
「シルイト君、彼らが誰だかわかる?」
「ただの騎士団員ではないな。親衛隊に近い部門かもしれない」
「たまに王族の護衛をやってるっていうやつね。とりあえず話はここから逃げ出してからにしましょう」
男達、もとい親衛隊の面々は屋敷に突入してシルイト達の姿を見るとすぐに止まった。
「我々は王国騎士団の最上位に位置する親衛騎士団だ。エーゼン邸への不法侵入で君たちには拘束されてもらう。抵抗しないのであればそのフードを外してもらおう」
しかし、シルイト達はそんな親衛隊の言葉はスルーして全くスピードを緩めずにそのまま親衛隊がいる扉へダッシュしていった。
「なるほど、あくまでも抵抗するか。されどここは通さん!!」
シルイト達と親衛隊の距離はおよそ二十メートル。剣の間合いにしては遠いし魔術の間合いにしては若干近いという微妙な距離であった。
すると、親衛隊はおもむろに腰から拳銃を取り出して構えた。
「それ以上前に進んだら撃つ!!」
それを聞いて走るのをとりあえずやめたシルイト達。
親衛隊とにらみ合いながら作戦を練ることにした。
「シルイト君達は彼らを無力化できる?」
「殺すことは簡単だが殺さずに無力化するのは難しい」
シルイトには対ブラッキー用に学園入学前に編み出した攻撃法があるのだが、それを使って親衛隊を殺してしまうとダルス・エーゼンの時よりもはるかに大事になってしまうのは目に見えていた。
「手や足を使い物にならなくすればいいだけよ。フィアさんならできるんじゃない?」
「一人や二人なら造作もないですが、私は銃を二丁までしか扱えませんのでそれ以上の敵に対処することは難しいです。それに今向けられている銃口をどう対処するのかも決めた方が良いと思います」
「それなら大丈夫。私も攻撃するから。それに相手の銃も一回は撃ってもらわないと、この金色少女が覚醒しないからね」
ゴールディアンはどうかしたのかといった風にこちらを見上げて首を傾げた。
「それで、相談は終わったかな諸君。できればさっさと抵抗を止めて拘束されてくれないか?」
親衛隊のリーダー然とした男がそう声に出したが、それに反するようにシルイト達も戦闘態勢に入った。
「愚かな賊だ。登降はしないものとみなしこれより殲滅する」
男が言い終わった直後、こちらに向けられていた銃が一斉に火を噴いた。
シルイト達にあたりそうになる直前にシルイトがイシルディンを使って防御した。
ブラッキーも自分で防御魔術を使ったようだがイシルディンを見てすぐに解除した。
「自身への攻撃を確認。封印は解除されました」
唐突にゴールディアンが感情のこもっていない様子で声を発した。
「条件クリア。戦闘許可を受託。モード変更。ペンサンドの鍵を開錠」
「みんなこの娘から離れて!!」
ブラッキーが警告を発するのとゴールディアンの足元から金色の光が放たれ始めるのはほぼ同時だった。
シルイトが防御として構築していたイシルディンの壁はゴールディアンに近い部分だけ金色の光に分解されて穴が開いていた。
「この光であいつらも動揺しているだろうし、今のうちに扉を突破しよう」
シルイトの言葉を合図にコンフィアンザが銃を構えて発射した。
弾丸は正確に二人の団員の右足首に命中し、二人とも痛みに耐えかねて倒れた。
「なぜ弾が貫通する!?」
通常なら硬いアーマープレートに阻まれて銃撃は効果を為さないらしい。
だから遠距離からの奇襲ではなく堂々とした正面突破に踏み切ったようだ。
しかし、コンフィアンザが使う銃は錬金術による本来の機構に加えて魔術による威力の底上げがなされている。
シルイトのパーマネントバレットには及ぶべくもないがスピードや適応能力が求められる対人戦闘ではむしろパーマネントバレットよりも使いやすいといえよう。
一方でブラッキーも応戦を始めた。
ちなみに階段を駆け上がっているときにブラッキーが持っていたルトゥカが入った袋は床に捨てられている。
ブラッキーがぼそりと詠唱をすると、親衛隊の一人が足を押さえながら苦痛に満ちた声を上げ始めた。魔術による人体への直接干渉である。
本来は魔術が生命に対して直接干渉することは難しい。
生体エネルギーが魔術の邪魔をするからである。
それではブラッキーはどのように攻撃しているのかというと例えば今の場合は足を実際に切断するのではなく、あくまでも足が切られたかのように幻痛を与えているのだ。
精神への干渉は肉体への干渉よりも遥かに簡単なためブラッキーもこの方法を採用している。
もっとも、遥かに簡単とはいってもほとんどの魔術師はできない芸当である。
一方で、親衛隊側も反撃を開始していた。
シルイト達の攻撃によって戦闘不能になった人員を引いて残った人数は三人。
「単体での攻撃は危険だ」
「最初に誰を狙う?」
「あの金ローブが一番危険そうだな」
「じゃあアルファとベータは金ローブへ行け。俺はあの銃をぶっ放した銀ローブを相手にする。今のところあの銃を止められるのは俺だけだろうからな」
親衛隊では基本的に任務中はコードネームで呼び合うことになっている。
素性が知れ渡るとプライベート時に襲撃されかねないからだ。
「だが、それではほかの人間には逃げられるのでは?」
「問題ないオメガがもうすぐ到着する」
その名前に気圧されたのか二人が息をのんだ。
オメガとはその作戦において最も強い者に与えられるコードのこと。
今回の任務ではどんな攻撃も完全に防ぐと豪語する男がオメガとして作戦に参加していた。
息をのんだ二人はオメガという名に安心もしたようで互いにうなずき合った後、二人してゴールディアンに向かって走り出した。
対してゴールディアン。
二人がこちらに向かってきているのを見ると、主に相手の腕や足に狙いを定めて金色の光線を放った。
しかし、二人も相手が自分たちに致命傷を与えようとしているわけではないことをわかっているのか手や足だけ器用に動かして光線を避けている。伊達に親衛隊を名乗っているわけではないようだ。
そのまま二人は腰につけていた剣を引き抜くとゴールディアンに向かって切りかかろうとした。
ゴールディアンは攻撃が全て避けられるのがわかったため仕方なく防御に徹することにした。自身の周りに金色の光壁を築いたのである。
流石に光壁に切りかかっては剣の方が消されてしまう危険があると判断した二人はそのままゴールディアンとにらみ合いを始めることになった。
一方でコンフィアンザはというと、三人の親衛隊の内の残りの一人がこちらに向かって走り始めていた。
銃の間合いよりも詰められると絶対的優位は崩れるためコンフィアンザも両手の銃をどちらも使ってその親衛隊を迎え撃つことにした。
しかし撃っても当たることは当たるのだが、当たっても弾道をずらされてしまい貫通にまで至らない。
「やはり、この鎧は強い」
距離を詰めんとしている親衛隊がそうつぶやいた。
確かに彼のアーマープレートは他の親衛隊員のそれとは見た目が若干違う。
基本的な形は同じなのだが、表面が様々な面にカットされているため当たった光が乱反射している。
コンフィアンザの銃弾もこの光と同じように別の方向に反射されて威力が減衰しているのだろう。
コンフィアンザの攻撃をものともしない彼は勢いを殺すことなく銃の間合いからはずれ格闘戦の間合いとなった。
もはや銃は使えないと悟ったコンフィアンザは銃をローブの内にしまい、親衛隊と同じように格闘戦の構えをとった。
コンフィアンザの格闘戦が始まる。
というわけで久しぶりの戦闘が始まりました。
この章ではちょくちょく戦闘を入れていく予定です。
次回は来週(次の)土曜日の零時に投稿します。




