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銀白の錬金魔術師  作者: 月と胡蝶
第三章 王位継承編
33/87

エーゼン邸にて

章の構成を変更しました。

それに伴って一部の後書きや前書きを変更または削除しています。

エーゼン邸は門から実際の家の扉まで若干の距離があり、その間をきれいに手入れされた腰の高さくらいある植木が埋めていた。

シルイト達はその植木の一番門に近い位置で腰をかがめて様子をうかがっていたのだが、少女の姿が完全に扉に向こうへ消えるのとほぼ同時に動き始めた。


「ますた、どのように侵入しますか?」

「まずは侵入できそうな場所を探してみないとな」

「ドアから直接入るというのは?」

「さすがに横暴すぎないか」

「いえ、すでに門は突破して残るは扉だけです。この距離ならたとえ何かを隠そうとしていても隠蔽しきれずに私たちと出会うことになると思います」

「なるほど、じゃあその案でいこう」


そう言うとシルイトはドアの前に立って腰につけたイシルディンの集合球体を動かし始めたのだが、コンフィアンザがそれを止めた。


「待ってください、先ずは普通にドアノブをまわしてみましょう」

「おいおい、それは無理なんじゃ・・え?」


シルイトが否定しようとしている間にすでにドアの前に立ったコンフィアンザは何事もなかったかのようにドアを開けた。


「あれ、開いてたの?」

「おそらくは。少女、もといゴールディアンは私たちに気付いていたうえでわざと放置していたのではないでしょうか?」


コンフィアンザが言い終わるのとほぼ同じタイミングでまたしても家の奥から男の悲鳴が聞こえて来た。

急いで悲鳴が聞こえた方へ走り出す二人。


玄関から入ってまっすぐ行くと、廊下の右側に地下へと続く階段が存在していた。

その階段は入口からすでに大量の血痕がこびりついており明らかに尋常ではないオーラを発していた。


「明らかにこの先のようですね」

「そうだな。念のためフィアンは実戦装備を許可する。魔術も任意の発動を許可」

「了解です」


二人はそのまま地下への階段を下りていった。


階段を降りて、閉まっていたドアを開けるとそこには鉄格子で仕切られた牢屋のような場所が存在していた。

地下が丸々一室牢屋になっているようである。

牢の中には大量の死体が捨てられていた。その服装から死体の多くが戦闘職についていたことがうかがえる。

その中で生きている人間は血まみれの男とその男を拷問している黒いローブを纏った人物、そしてゴールディアンの三人のみである。


「おい!なにをやっている!」


思わず叫んでしまったシルイトの方へその場の全員が振り向いた。


「あら、ワイバー君、いえシルイト君だったわね。どうしてここへ?」


拷問していた人物はこちらを振り向きながらシルイトにそう話しかけた。


「やっぱりブラッキーか。俺は金色に案内されてきただけだ」


それを聞いたブラッキーは案の定ゴールディアンをキッとにらむがゴールディアンはどこ吹く風である。


「ぶらっきーは隠そうとしてたけどきんいろは隠さない方がいいとおもった」

「もう、今更いいわよ」


やれやれといった風に首を振るブラッキー。


「まだ俺達への説明がないぞ」

「しょうがないから言うわ、こいつはルトゥカ・エーゼン。あなたの家族の敵とも言える人物よ」


驚きのあまりしばしシルイトは呆然とした。


「大丈夫ですか、ますた」

「・・・ああ、問題ない」

「私は聞いたから答えただけよ?」


思ったよりもシルイトのショックが大きかったせいか、ブラッキーが自分に非はないと主張する。

ちなみにゴールディアンは牢の中を物色しているのか奥の方でぴょこぴょこと動いていた。

拷問されていたルトゥカは話の内容を聞かれないようにシルイトの姿が見えた段階でブラッキーが気絶させていた。


「わかっている。それで、ルトゥカといえばエーゼン家の現当主じゃないか?」


確かにエーゼン家も王都の中枢に居を構える程度には有力な家系である。

しかし当時のウィスターム家はもう一つの王家とも言われるほどの力を持っていたので、ここまで完全にもみ消せるはずはないのである。


「いかにも彼はエーゼン家の当主よ。でもこの話には裏があるのよ。当然と言えば当然だけどね。こいつも1人じゃあどんなに憎く思ってても他家を攻撃しようとするほど愚かではないでしょうし」

「じゃあ、いったい?・・・!」


シルイトがさらに追及をしようとしたのだが、ブラッキーが思わぬ行動をとったので思わず口をつぐんだ。

ブラッキーは自分が来ていたローブのフードを深くまで被って臨戦態勢に入っていた。

性格には臨戦態勢ともいえるほどに張り詰めた気を放っていた。


「ブラッキー何をしているんですか?ますたを攻撃しようとするなら容赦はしません」


いつの間にかシルイトの前に出て守るように対峙したコンフィアンザは絶対零度のような声色で声を発した。

両の手には既に銃が握られており、片方はブラッキーに、もう片方は念のためということで奥の方でいまだにうごめいているゴールディアンに向けられていた。


「ちょっと待って、フィアさん」


何故ブラッキーはコンフィアンザと呼ばないのかとシルイトは一瞬考えたが、貴族の長男だった自分と違ってコンフィアンザはここ数年で造ったために情報が出ていないだけなのだとわかった。


「動かないでください。動くと撃ちます」

「そうじゃなくて、今この家に誰かが突入しようとしているの。たぶん王国騎士団だと思う」


それを聞くとコンフィアンザは驚いたように少し目を見開くと数秒だけ固まった。

数秒経つと銃の構えを解いたコンフィアンザがシルイトに話しかけた。


「ますた、あの女が言っていた言葉は本当です。今すぐここから立ち去りましょう」


どうやらコンフィアンザは索敵魔術で存在を探知したようだった。


「あなたも魔術が使えるのね。シルイト君もそうだけどどうして錬金学園なんかに入っていたのかしら?」

「それはブラッキーも同じだろう。そんなことより今はどうやってこの場を切り抜けるかが先決だ。こっちに質問している暇があったら向こうの金色をなんとかしておけ」


そう言うと、シルイト達は銀白色のフード付きのローブを羽織った。もちろんフードは深く被っている。


「シルイト君、まだゴールディアンの事を金色って呼んでるのね・・まあ、いいわ。確かにあの娘を何とかしないといけないのは確かだし」


ブラッキーが目を向けた先には物々しい雰囲気を全く意に介さずに依然として物色を続けるゴールディアンの姿があった。


「ゴールディアン!!」


大きな声で名前を呼ばれたゴールディアンはビクッと体を震わせた後に恐る恐るこちらを振り向いた。


「早くローブを着てフードを被りなさい」

「どうして?」

「敵が来るわ」


その言葉にハッとなったのか、ゴールディアンは流れるようにローブを羽織りフードを被った。


「その状態の金色は戦闘に使えるのか?」

「一回こちらの陣営が攻撃を受ければペンサンドの鍵の封印が解けて開錠できるようになるわ」

「鍵自体を封印してるのか」


シルイト達は気絶させたルトゥカを袋詰めして地上へ続く階段を駆け上がっていた。


「そもそもなんで封印なんてしてるんだよ」

「あの娘の魔術は制御が効かないの。だからペンサンドの鍵を開錠している間は常にあの金の光が放たれ続けることになるのよ」

「確かにそれは穏やかじゃないな」

「だから自分の意志では簡単に開錠できないように封印したんだけど、もともとの魔術がちょっと強力だったせいなのか封印をすると人格までちょっと影響が出ちゃうみたいでね。まあ、命に関わる問題ではないから大丈夫よ」


本当に大丈夫だろうか?とシルイトが不安になりながらも一階に戻ってくると、タイミングよくシルイト達が入って来たドアが大きな音を立てながら勢いよく開いた。

久しぶりに戦闘が行われる予感・・・。


そして次話は明日の零時に投稿します。


このままコンスタントに書き続けていれば毎週投稿できるのですが、私生活で忙しくなったり病気に感染したりやる気がなくなったりすると、一時的に投稿できなくなる場合があります。


一応、一話分投稿した段階で既に次話の本文が完成している場合は「~の時間に投稿します」と断言して、まだ書き途中か校正中の場合は「投稿する予定」だったり「投稿したい」といった感じで書き分けているのでそこから察して頂けるとありがたいです。

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