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迷宮で目覚めたら、何故か進化の剣だった  作者: 空地 大乃


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第五十四話 マージュのお願い

 腕輪を買おうにもマナが全然足りなかった。なにせミラの手持ちは663マナだ。もう笑えるぐらい足りない。


「あ! そうだ、それならこの結晶を買ってもらうことは可能かな?」


 すると、ミラがウェストバッグから土の結晶や風の結晶を取り出してカウンターに並べた。


 なるほど、これを買い取ってもらえれば少しは足しになるかもだけど。


『あ、はい。こ、これであれば一つ50マナで――』


 うん、全然足りないのには変わりなかった。低品質でも50マナで買ってくれるのは中々ありがたい気もするけど、それでも合計200マナだしな。


 まあ、でも一応現状使いみちがないということで売ったけどね。


 で、そこまでの取引を終えたミラだけど、なんかマージュの視線がミラのウェストバッグに注がれてるんだよな。


『ミラのバッグに何かあるのか?』

『あ、は、はい。そのバッグ、お、恐らく魔法具のバッグだと思うのですが、ま、魔石が無くなってるな、と、そう、思って』


 うん? 魔法具?


「え? と、いうことはこのウェストバッグには何か特別な仕掛けがあるの?」

『は、はい。特別というか、ば、バッグ系はわりと、こ、ここでは一般的ですが、異空間収納の力が、ひ、秘められています』

『異空間収納? それって何なんだ?』


 耳慣れない言葉に俺は聞き返す。何かに役立ちそうな気配ではあるけどな。


『異空間収納というのは、魔法で創り出したこの世界とは別な空間に収納スペースを作ったものです。それが機能すれば、見た目以上に物を入れられるようになるのですが』

「へ~それは便利だね。ね、エッジ!」

『ああ、それがあれば素材集めも楽になるしな』


 それにしても本当、魔法具の説明の時はスラスラ言葉出てくるんだな。

 

 とは言え、これは拾い物だったな。クラーケンとかいう妙な魔物がいるところに転がっていたバッグだけに、それなりに使えるものだったということか。


 ただ――魔石がないとただのバッグってことでもあるんだよな。


『それで、このバッグはもう魔法具としては使えないのか?』

『い、いえ、そ、そのボタンの上に、ち、小さな孔があると思いますが、そこに異空間収納の効果のある、ま、魔石を嵌め込めば、まだ、つ、使えますよ』


 うん? そう言われてみると確かに孔があいてるな。


『そうか、それでその魔石っていうのはここにはあるのか?』

『は、はい、魔石は、性能によって違いがあり、50キログラム用、100キログラム用、500キログラム用、1000キログラム用の4種類があります』

「それは、おいくらぐらいなのかな?」

『は、はい、ま、魔石を嵌め込むだけなら、し、下から、500、1000、8000、20000マナ、で、ですね』


 ミラががっくりと肩を落とした。そりゃそうだ。いや、500マナのであれば買えなくもないんだけどな、腕輪のことを考えるとな。


『……も、もしかして、ま、マナが、た、足りませんか?』

「……うん、情けない話だけどね」

『い、今、お、お手持ちはどれぐらいで?』

「863マナかな~今結晶を買い取ってもらえてその分も増えたんだけどね~」

 

 あははっと半笑いを浮かべるミラだ。まあ、腕輪の値段は想定外だったしな。


『そ、そうですか。ですが、ミラさんは、う、腕輪がないと困りますよね?』

「え? うん、そうだね。でも買えない以上手は考えないと」

『な、なら! お、犯します!』

「え、ええええぇえええぇええ!?」


 ちょ、ま、突然何いってんのこの子!


『おい、おま、何言い出してんだ!』

『す、すみません間違いました! お、お貸し致します!』


 間違いかよ! どんな間違いだよ! ミラも思わず目を見開いてたじろいでしまっただろ!

 

 ……全く。まあ、このダークエルフ見た目はいいから、ミラとしてはそれはそれで嬉しかったかもしれないけど……。


「……何かいまエッジ、変なこと考えなかった?」

『ふゎっ! い、いや別に――』


 何か妙にジト目で睨んできてる。妙に鋭い時あるなミラは。


「でも、貸し出しというと?」

『あ、はい。こっちの腕輪の方なら、貸し出しても、それなら、ま、魔石の方は買えますよね?』

「それは、そうしてくれるならこんな嬉しいことは無いけど、大丈夫なのかな?」

『は、はい! あ、ただ、もしよければ、か、狩りが終わった後、こ、こちらで引き取れるものは、ひ、引き取らせてもらえると、う、嬉しいです』

「え? うん! 勿論そんなことでいいなら全然するよ! でも、それで本当に?」

『あ、はい。では、この腕輪はお貸しします。あと、魔石は、お、お買上げという形で――』


 うん、マージュの意外な提案で話が上手くまとまった。素材はどっちにしろアロマの事があるからついでだしな。


 貸し出し品だから丁重に扱う必要はあるけど、素材を売ったお金が貯まればそのまま買ってしまえばいいしな。


 魔石も嵌めてもらって、ウェストバッグも魔法のバッグとして生まれ変わった。一番下の入る重さが50キログラムまでのとはいえ、これでかなり素材集めも楽になるな。


「このバッグに入る大きさは、やっぱり口を開けた程度までなのかな?」

『い、いえ、魔石を嵌めたことで、大体その口の倍ぐらいまでのであれば入ります』

「へ~便利なんだね~」


 ミラが笑顔を浮かべて返す。確かにそれは便利だな。


『あ、あの、それと、その、もう一つ、もし、よ、よければなんですが』


 こうしてある程度話も終わり、そろそろ辞去しようかといったところで、マージュがどこか照れくさそうに話し出す。


「うん? 何かな? 僕に出来ることなら言ってよ! こんなに色々してもらって何もしないのは悪いもんね」


 自分の胸を叩きながらミラが言う。まあ確かに腕輪を貸してもらっただけでもかなりの恩だな。


『そ、その、よ、良ければなので、すが、お、お友達になってもらえますか?』


 そして意を決したような念の声。美しい銀髪の端を摘んで、口元に持っていき、もじもじしながらの発言。

 

 ……うん、この子きれいだけど可愛いって側面もあるな。同時に残念でもあるけど。


「そんなの勿論だよ~僕からお願いしたいぐらいだし、もう大歓迎!」


 すると、まあ判ってはいたけどミラは快諾した。むしろミラも嬉しそうだな。


 まあ、こんな綺麗でちょっとエロい女性に友達になってくれと言われればそりゃ嬉しくもなるかな。


『ほ、本当ですか? あ、ありがとうございます!』


 そして、マージュもかなり嬉しそうだ。

 と、いうわけでお互い友達になったところで本来の目的のため店を後にする。


 さあ、アクアシャーク狩りだ!

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