勇者様とお兄様
勇者登場!
お兄様は次にお城に私を連れていってくれた。
「父上はここの魔導師長をしている。アリアンロッドが来たら喜ぶだろう。」
「お邪魔じゃないですか?」
「大丈夫だよ。きっと跳び跳ねて喜ぶよ。」
お兄様に連れられて行き着いた部屋は沢山の魔導師さんが仕事らしき事をしている部屋の奥にあった。
私達がドアを開けようとするとドアが勢いよく開いた。
「魔王を倒したら直ぐに帰してくれるって言っただろ!今すぐ日本に帰してくれ!」
怒鳴り声と共に出てきたのは梨元先輩だった。
「勇者も大変ですね。」
「イディオン!お前も俺が帰れる手段を探してくれ!」
懐かしい声に私は深々と彼に頭を下げた。
「アリアンロッド?」
「御無沙汰しています梨元先輩、また視界に入ってごめんなさい。」
「?………」
梨元先輩は私の被っていた魔導師のマントのフードを外して叫んだ。
「あ、雨宮さん!何で君がここに!」
「話せば長いです。」
「本当に雨宮さんだ!あ、あの日言えなかった事………」
「あ!あの日私は死にました。梨元先輩を召喚するためにあらわれた魔方陣に巻き込まれて魂と体が別々になったらしいです!体は臓器提供されちゃって元の体には帰れないらしいです。あの日梨元先輩の話がちゃんと聞けなくてごめんなさい。」
私の言葉にその場に居た全員が青くなった。
「え?じゃあ今居る雨宮さんは?」
「こちらのイディオンお兄様の妹さんの体を神様から無理矢理いただいてしまいまして今にいたります。」
暫くの沈黙の後、梨元先輩は私の手を握ると言った。
「解ってると思うけど、俺は雨宮時雨さん貴女が好きです!」
「え?」
「あの日、俺は君に告白するために図書室に呼んだんだ!俺と付き合ってください!」
「………ごめんなさい。」
私は深々と頭を下げた。
「私みたいな人間を好きになってくれて、ありがとうございます!私は先輩を幸せにする自信がありません。梨元先輩を好きな女の子はたくさん居ますから………ごめんなさい。」
梨元先輩は固まってしまった。
「そ、そんなことはどうでも良い!君がアリアンロッドの体に入る原因は魔法陣なのか?」
「はいお兄様!魔法陣に片足が乗っていたみたいです。」
お兄様は頭を抱えてしまった。
見ればドアの向こうのお父様も頭を抱えている。
「どうしたんですか?」
「君を殺してしまったのは僕達だ。………本当にすまない。」
あの魔法陣はお兄様達の作った物だったらしい。
「そうだったんですね。………お兄様達は気にする必要無いですよ!私が魔法陣に見とれてしまったのが原因ですから。あの魔法陣は綺麗でした。………私が笑って言えたらお兄様は笑ってくれたかも知れないのに、ごめんなさい。」
私がシュンとするとお兄様は慌てて私を抱き締めた。
「ごめん。」
「お兄様には笑っていてほしいです。勿論お父様にも。」
「解った。アリアンロッドの前ではいつでも笑うからね。」
「はい。お兄様。」
私は嬉しくなってお兄様の背中に腕を回した。
「イディオン!何でお前が雨宮さんとイチャイチャしてんだよ!」
「彼女は今僕の妹だからだよ!」
「ふざけんな!離れろ!」
お兄様はさらに私を強く抱き締めた。
「イディオン!」
「ショウタロウは煩いですね!僕達は父上に会いに来たんですからショウタロウは関係ないでしょ!」
「お前に無くても俺は雨宮さんに話がまだある!」
私はお兄様の背中から手を離したがお兄様は離してくれなかった。
「梨元先輩なんでしょう?」
「………とりあえずイディオン離れろ!」
お兄様はようやく離れてくれた。
「俺、諦められないから俺の事好きになってもらえるように頑張るから!今度デートしてください。」
私が返事をする前にお兄様が私と梨元先輩の間に立った。
なぜかお兄様の左手が炎に包まれている。
「アリアンロッドとデートしたければ僕を倒してからだよ。」
「え?」
「僕の大事な妹だからね!生半可な男にくれてやる気なんてさらさら無い。」
「ま、魔王まで倒したのに認められないってなんだよ!認める気なんて無いだろうがお前!」
「………だから、僕を倒せたらデート一回ぐらい認めてあげるって言ってるだろ?」
「イディオン!お前、今魔王みたいな顔してるぞ!」
「アリアンロッドのためなら僕は魔王にでも喜んでなるよ!さあ、かかってこい糞勇者。」
お、お兄様から邪悪なオーラが出ている。
「アーリー、危ないからこっちにおいで!美味しいお茶を淹れようね。」
お父様に呼ばれてお父様の元に向かうとお父様はニコッと笑って指をパチンと鳴らした。
音とともに部屋のドアが閉まり、フワフワとティーセットが飛んできて勝手にお茶を淹れ始めた!
「アーリーはお砂糖はいくつ?」
「………2つもらって良いですか?」
背後のドアの向こうからドッカンドッカン音と人の悲鳴のような音がしているがお父様は素知らぬ顔だ。
「お、お父様、あの、」
「あっちは勝手にやらせとけば良いよ!アーリーは甘い物は好きかな?」
お父様が机の引き出しを開けると長細いマカロンみたいなお菓子が飛び出してきて私の手の上にのった。
ありがたくそのエセマカロンを食べ始めるとお父様は口を開いた。
「アーリーは小動物みたいだね。」
そんな平和な会話をしていて良いのか解らない音が背後からしていますお父様。
「………アーリー、本当にすまなかったね。君の人生を終わらせてしまって。」
「お父様、私はこっちに来れて幸せになれる気がしています。向こうの世界で私はどうやって家族から逃げれば良いのか解らなかった。家族がこんなにも素敵な存在だなんてしらかった。だから、ありがとうございます。」
私の言葉にお父様は泣いてしまいそうになるのを必死でこらえている様だった。
………未だに酷い爆発音がしてるのが気になる。
ドアを激しくノックする音がして、お父様が指をパチンと鳴らすとドアが少し開いてドアを叩いていた魔導師さんが浮かんだ状態で部屋に入ってきた。
お父様の魔法で入ってきたのか慌てて居る。
「魔導師長!運ばずとも自分には足があるので自力で入れます!………そんなことより………」
魔導師さんは私と目が合うとフリーズしてしまった。
「………天使様………」
「違いますよ。」
私は思わず突っ込みを入れた。
「彼女は僕の娘だよ。」
「………先ほどお聞きして居ました。………これは勇者様が惚れてしまうのも頷けます。イディオン様より伝言で゛勇者を早く家に帰す方法を見付けて追い返すぞ!゛との事でした。」
「そうだね。早くお帰りいただいて家の天使の前から消えていただかないとだね!」
「………魔導師長、あの二人を止めていただけないでしょうか?我々も自分の席を防御するのでいっぱいいっぱいです。」
お父様はニコッと笑うと私の所に来ると私に耳打ちした。
「………」
「それを私が言えば良いのですか?」
「出来るならね。お願い出来るかな?」
「………はい。お父様。」
私は部屋からゆっくり顔を出した。
部屋の外は滅茶苦茶で、色んな紙が飛び交い他の魔導師さん達は自分達の席を青白い魔法の障壁で守っているようだった。
「お、お兄様に梨元先輩!人様に迷惑かける人は嫌いです!これ以上やるなら………嫌いになっちゃうから。」
なかなかに恥ずかしい台詞ですお父様。
私の言葉に二人は戦うのを止めた様です。
本当に私の言葉にかは不明です。
「勇者よ、君は帰る所だったな!お帰りはあちらだよ!」
「………イディオン!あんまり雨宮さんに触るな、次は首をはねてやるからな!」
「笑わせるな、次は僕が貴様を殺してやる!」
にらみ会う二人に私は呆れて言った。
「仲良くなれないなら嫌いです。人様に迷惑かけないように外でやってください。さようなら。」
私はそのまま部屋に戻りドアをしめた。
「やっぱり私の言葉では仲良くなる気はないようです。」
「そんなこと無いよ。二人を止めてくれてありがとう! 」
「役に立てましたか?」
「ああ、勿論。」
私は嬉しくなた。
家族に誉められるのはこんなにも嬉しい事だったんだな~。
「………アーリー、少し笑ったかい?」
「?」
「気のせいかな?少しだけ口角が上がった気がしたよ。」
私が首を傾げるとお父様は嬉しそうに笑った。
「きっと直ぐに笑えるようになるよ!ああ、アーリーは可愛いな~。」
お父様の嬉しそうな顔にちゃんと笑い返せたら良かったのに。
私は申し訳なく思った。
「イディオンに自慢しようかな?」
お父様はそう言うとドアを開けて部屋の外に出ていった。
私は慌ててお父様を追いかけた。
「イディオン、アーリーが少しだけ笑ったよ!これはちゃんと笑えるようになったら神がかった可愛さになるよ!」
驚いた顔のお兄様と梨元先輩がお父様を見た。
「アリアンロッドが笑った?父上だけが見たのかい?」
「お、俺が一番最初に雨宮さんの笑顔を見る予定だったのに。」
二人の怖い顔に、私はお父様の後ろに隠れた。
「ああ、二人は喧嘩ばかりしているからアーリーに嫌われてしまったようだね。女性は喧嘩っ早い男は嫌いだよ。二人は女心が解ってないね。アーリー、ちょっと城の中を探検しに行こうか?お父様が案内しようね!」
「はい。お父様ありがとうございます!」
「イディオンは勇者殿の帰り方でも探していると良いよ。じゃあ、お留守番よろしくね。」
お父様は私の肩を抱くと歩き出したのだった。
勇者豪快にフラれる!
お兄様の株が下がる。
お父様の好感度急上昇!




