西大陸
今回は話の区切りの関係上短めになっております。その代わり次回がちょっと長めになってます。
―― アリアが礼拝堂から突如として消えたのと同時刻の西大陸にて ――
東大陸より日が沈むのが遅いためようやく夕暮れになってきた西大陸のとある場所。
東大陸と西大陸を隔てる青い海が不定期に起こる魔力嵐のため所々碧色に輝いている「碧嵐海」を見渡せる小高い丘の上に二人の男の人影があった。
一人は年の頃は五十前後であろうか。グレイの髪を無造作に背中でひとくくりにし、がっしりとした傷だらけの体の背中には大ぶりの両手持ち剣を背負ったその様子から一目で歴戦の戦士であろうことが読み取れる灰褐色の目をした壮年の男性。
そしてもう一人、こちらは年の頃は二十歳頃の顔が隠れがちの長めのまっすぐな黒髪と黒い瞳を持つ精悍そうな若者であった。
「若、もう日も沈みます。 そろそろ戻りましょう」
壮年の男性が目の前の墓標らしき岩の前にひざまずいている若者に声をかける。
「ああ、そうだな。では父上、また参ります」
若者が立ち上がり墓標らしき岩に一礼して立ち去ろうとしたその時であった。二人のいた所の斜め前に凄まじい魔力の渦が現れた。
「これは……若! ザイン様! 凄まじい魔力の奔流です、私の後ろに!」
「――ああ、頼んだぞガルド! しかしこれは一体何だ? 碧嵐海の洋上ですらこれほどの魔力の渦は見たことがないぞ!?」
背中にあった両手剣を構えるガルドと呼ばれた壮年の男と、その背後で片手剣を持ちつつ攻撃魔法を撃とうとするザインと呼ばれた青年の前に現れた凄まじい魔力の渦の中からやがてゆっくりと一人の少女の姿が現れ、それが地面に落ちると眼前の渦は何事もなかったかのように消えてなくなった。
「なんだこれは……これではまるであの時の転移魔門のようではないか……」
目の前で起こったことが理解できずに両手剣を構えたままであるガルドとは対照的にザインは突如として落ちてきた少女に駆け寄ってその様子を確かめだした。
「若! 危険です!! もし若を狙った他部族の者であったら――」
「――いや、ガルド。そうではなさそうだ。だがある意味他部族の刺客よりももっとやっかいな者が現れた」
ザイン様、と呼ばれた若者の黒い目が一瞬だけ白く光り、それからガルドと呼ばれる壮年の男に静かに告げた。
「この女は東大陸の人間だ」




