日常回 日野城でのとある一日(1/4)
しばらく本能寺前後の過去編が続いていて主人公不在なので、日常回を少し挟んでいきます。
需要があるのか分かりませんが、いいねや評価が高ければちょくちょく挟んでいこうかなと思ってます。
ーーーこれは、日野城で療養していた頃のとある一日の一コマである。
「しかし、中将様もようやく念願の松姫とお会いできてよろしゅうございましたな」
「ん?……ああ、そうだな」
昏睡から目が覚め一週間ほどたった頃、療養を兼ねて布団を縁側に近づけて日光浴をしながら
ぼーっとしていると、警備をしている近習たちが話しかけてきた。
ここ最近身体が少しずつ回復してきたと同時に、
こうして周囲の人から声をかけられ、会話する頻度も増えてきた。
頭のリハビリになるという気遣いで話しかけているのかなと思い、
そういった会話には基本的には応じる事にしている。
もし周囲がこのような会話が記憶の回復に繋がるのではと期待しているだったら
申し訳ない事この上ないのだが、自分はそもそもが本能寺前の記憶が一切ないのだから
それはいかんともし難い事だろう(歴史知識は除く)
…………にしても、本来の織田信忠の記憶というか、魂はどこに行ったのだろうか?
現代日本に生きていたはずの自分がこの身体に転生しているという滅茶苦茶な状態で
あるんだから、考えても答えが出るわけがない事ではあるのだが、それでも考えずにはいられない。
…もし自分の身体に行っていたとしたら申し訳ないなーとか、現代に信忠が行っていたら
どんな反応してるんだろうなーとか、そんな事をたまに考えている。
「いやしかし、中将様の執念が実るとは、まさか思いもよりませんでしたな」
「しかり。失礼ながら、人の夢と書いて儚いですよと何度も申し上げておりましたが、
まさか我らの方が間違っていたとは」
「…………」
しかし、なんと言うか。
この人達、自分との距離感とか発言が気安いというか、近い。近くない?
寝所の警備を任せられているのだから立場が低い事はないのだろうが、
大名の当主と家臣の関係性ってこんなにフランクなものだろうか?
まあ、いつもかしこまられても居心地悪いので、
個人的にはこちらの方が気楽でいいと言えばいいんだけどね?
「武田征伐の折は、松姫様を探す熱量にあの鬼武蔵様が引いておられましたからの」
「『若殿に余計な事言うんじゃねーぞ……今は大人しく皆従っとけ』って……あの人、戦場で
正常でまともな事言えるんだな、と思いましたよ、あの時」
どうやら松姫を探す時の信忠は、戦国有数のバーサーカーである森長可をして狂化を解いて正気に
させるものであったらしい。
狂気を鎮めるには別の狂気を当てろって言うよね、言わない?
信忠も若いし、あの戦国の問題児の森長可も信忠には
割と素直に従っていたとも言うし(命令無視をしないとは言っていない)、
真面目そうに見えて意外と若い頃の信長と同じように近習連れてやんちゃしていたのかもな、
と思わなくもない。
そういった関係性でこの距離感ならまあ……納得できる、のか?
「ちなみに、その松姫様はいずこにいかれたので?」




