復路時の会話 中編(秀吉、秀長)
「兄者としては、あの会議の結果で良かったので?」
「そりゃ、いーわけないけどよ、もう決まっとるもんになにゆーたところで変わりゃーせんし、
あんな会議じゃ阿呆らしーて話続けるのも馬鹿らしくなったから、賛同しただけだわ」
秀吉としては、議論するまでもなく既に結論が決まっていた事に大いに不満があったらしい。
それならはるばる姫路から来る必要もなかったな、と確かに秀長も思う。
そういった意味での領土の優遇もあったとは思うので、全く意味がないわけではないのだろうが……
「問題はよ、なんであんな雑なごり押しを、なんであの柴田の親父殿が許したのかが解せんのだわ」
「そう言われれば、そうですな……」
柴田勝家はああ見えて、意外と言ってはあれなのだが細やかな配慮ができる人間だ。
あの一向宗が跋扈していた北陸を統制しているのもそうであるし、傘下の武将衆も基本的に
柴田勝家の事を父親のように慕っている。
織田家の重鎮であり家臣筆頭の地位であるため多少強引に物事を進めるきらいはあるものの、
雑な仕事や無理なごり押しはしない性格である事は間違いない。
「それに、最後に言ってた言葉も少し気になるしの……」
「最後の言葉とは?」
「ん?ああ、大した事じゃにゃーで気にせんで」
その言い方だと気になるのだが、こういった時の兄はどう聞いても教えてくれない事を
知っているので、一旦脇に置いて置くことにする。
「ちなみに、三七様はどうでしたので?」
「ん?三七のなにが、どうよ?」
「三七さまは織田政権をまとめれる器の持ち主なので?」
「無理じゃな」
「即答ですか……」
会議が終わった後の秀吉の表情から予想していた言葉ではあるものの、あまりにも
ばっさりときる言葉だった。
「形や振舞いは上様を真似とるみたいだし、見栄えも一番上様に似とるから、関りが薄ければ
騙されるかもしれんけどな、あれは表面だけで中身は何も考えとらん薄っぺらよ」
試しにいくつか質問してみたけど、碌な答えなかったしのーと秀吉は言う。
「『生まれてから上様が一度も苦労せんと育ったら、あーなるんかの……』って思っとったし」
「そこまでですか……」
仮にも信長の子供に対する評価なのだが、結構辛辣な評価であった。
「そうなると、今後の織田家の運営が心配ですな」
「織田家の運営どころか、美濃の国もまともに統治できるか、怪しいもんだで」
なんかやらかすんじゃないかのーと秀吉は他人事のように言う。
秀吉の中で、信孝の評価は著しく低いらしい。
「では、中将様はどうでしたので?」




