羽柴秀吉との対面(終)
「ちなみに、言っている内容って、伝わっているかの?」
「正直、半分も分かりませんな」
あ、やっぱし?
秀吉でも半分なら、他の人ならもっと伝わらないだろうな……反省。
「けど、中将様がわしの分からん先まで考えとるって事はよー分かりました」
うんうん、となにか納得するように、頷く秀吉。
あの妄想垂れ流しがなにか秀吉の心に響く部分があったのだろうか。
「最後に、もう一つだけええですかいの?」
「別に最後でなくてもいいが、なにか?」
「中将様の思う天下一統後の形とは、どういったものですかの?」
また難しい事を聞かれるな……天下が統一された後の形か。
どちらかと言えば、統一された後の日本しか知らないから、こちらからすれば当たり前
の事しか思いつきはしないんだけど。
「日の本全てがまとまった一つのものであるものと、民の全てが思うようになる事じゃないかの?
日本の首都はどことか、日本で一番偉い人間は誰とか、民の全ての認識が統一された未来かの」
いわゆる統一国家、中央集権、国民国家的な構想である。
古くは中国の秦の始皇帝が実践した国の形で、日本では明治時代と比較的新しい時代から
取り入れられた国の在り方である。
「いずれ、尾張人、近江人とかではなく、日本人と言う時代がくるといいなと思う」
「日ノ本の民で、日本人ですか」
まあ、現代でもどこどこ出身地でのいざこざはなくなってはいませんけどね。
それでもこの時代のような、尾張の国、美濃の国、近江の国といったような小さい一国ではなく、
日本国といった意識を持っている事は間違いないだろう。
「いや、やっぱり中将様は上様のお子様じゃの、という事が分かっただけでも良かったですわ」
「父上の、子と分かるとは?」
「今だから言いますがの、上様、信長様もゆーとる事は半分も分かりませなんだ」
言ったら怒られるので、言いませんでしたがのと言って秀吉は笑う。
「それでも、あの方のしゃべっとる時の顔は本当にキラキラされておった。
ほんで、『分かるか、サルっ!!』って言われるもんで、
『はいっ!』っと言った後、必死に話の意味をあれこれ考えていたもんですわ」
「今となったら、あの分からない未来を考えるのが、大変でしたけど楽しかった。
わしにとって分かり切った道を延々と進むことほど、つまらんこともないですからの」
「中将様には、わしにゃー分からん未来が見えとる事が分かりました。
今回の拝謁は、それが分かればじゅーぶんでございます」
そういうと、秀吉は襟を正してこちらを向く。
「なにかあれば、いつでもこの筑前に一報下され」
そう言い、深々と秀吉はこちらに頭を下げる。
「この羽柴筑前守秀吉、万一の際は中将様の御為力添えする事を誓いまする」




