羽柴秀吉との対面④
「別に儂としては、筑前が織田家を差配してもいいと思うがの」
「は??」
こちらの本音の言葉に、秀吉は素っ頓狂な声をあげる。
「正直に申したら、別に三七でなくても、儂でなくても、筑前の方が上手い事差配できると思うがの」
「いやいやいや」
軽く冷や汗をかいて否定する秀吉。
まあ、腐っても織田家当主に唐突に『お前、織田家の
運営できるだろ?』と唐突に言われたわけだから、
どう答えたら正解なのか分からずに慌てても当然と
言えば当然か。
とは言え本音である事には変わりないわけで。
「そうかの、儂は筑前なら特段問題ないと思うが」
「いやいや、なにをゆーとるんですか中将様。無茶言わんといてくださいませ。
大体、お歴々の方々が許すわけもないし、できるわけ
にゃーですわ」
…なんか少し言葉砕けてきたな。
慌ててると言うか、想定外な話過ぎて地が出てきたのだろーか。
こちらとしてはこの言葉の方が気兼ねなく喋れていいのだが立場もあるだろうし、無理は言えない。
「正直に申してみよ。誰がきいてるわけでもなし」
中将様がきいとるがなと小さな声が聞こえたが、
きかなかった事にする。
「まあ……それなりには、できると思っとりますけれども」
「で、あろう?」
「上様の事を、誰よりも考えてきた自信に関しては
誰よりもありますからの。上様が思ってただろう、
天下の形なら、多分できるとは思いますわ」
そこは自信を持って言う秀吉。
実際そうだし、それは自他認める所ではあったの
だろう。
だからこそ、信長も相当秀吉の事を買っていたわけで。
信長生前より自分の子供を養子に与えたり(羽柴秀勝)、自分の姪っ子を秀吉の妻にしたりと
(信包の娘:通称姫路殿)、完全に一門に囲い込もうとしている。
信長の中では羽柴秀吉は出世と同時に準一門待遇にして、身内に取り込もうという意図があったんだろうし、
周囲もそのように認識していたのだろう。
その点も、織田家の後継者争いにすんなり参加できたというか、参加できる権利が
あったのではと個人的には思っている。
「父上の御考えをいつも考えてきた筑前には、今後どのように天下を考えていけばいいか
父上が考えていたかが分かるであろう」
その辺りは、織田家しか見てこなかった三七信孝とは違っていると思っている。
……正直、上手くいくイメージが全然湧かない。
まあ、やってみないとこればっかりはどうなるのか
分からないものではあるのだが。
「聞いてる限り、中将様も分かっとるよーな言い方ですけども」
「記憶がない者がなにを話したとて、まともにとりあってはくれまいよ」
織田信長がなにをしたかとか豊臣秀吉がなにをしたかとか大きな事は知ってはいるが、
その時代に詳しくどうやったかまでの細かい部分は
当然知らないわけで。
正直な所、誰に任せればなんとかなるかは
分かるわけなのだから、その人に任せちゃえば
いいじゃん、と思っている。
俺?松姫とまったりスローライフできればそれでいいよ。
「まあ、中将様がそれでえーなら、わしが何か言う事は、今んとこないんですがの……個人的な私的ではあるんですがの、こっちがわしにとっては本題なんですわ」
そう言って、少し姿勢をただす秀吉。
なんだろう?
「中将様、いくつかお聞きしても良いですかの?」
「……?まあ、儂に答えれる事であるなら」




