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転生したら本能寺で織田信忠だった・・・・あれ、詰んでない?  作者: ハルラララ


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11/16

⑦これは天女ですか?~いいえ、松姫です~

…………………………………………………………………………………………………………………………………………


ーーー夢を見た。

真っ暗闇の霧中で、誰かの声が聞こえてる。


上下左右も分からない、目隠しで水の中にいるような中で、その声だけが道標。


声が二方向から聞こえてる。


片や、優しい声、こちらに来るよう囁いてる、

片や、凛々しい声、声の逆に行くよう叫んでる、


どちらにしても、指し示す先は同じみたい。

ぼんやりした思考の中で、その声が示す先に意識を向ける。


そうすると、徐々に暗闇に光が差してくる。

囁く声ははっきりと、

叫んでいた声は徐々に微かに。


瞬間、

強い光を浴びたかと思うと、意識はまた深く曖昧に溶けていったーーー


…………………………………………………………………………………………………………………………………………


「ん…………」


目が覚めて、最初に視界に入ったのは木の天井だった。

白い絹の布団に身体は寝かされていて、全身は自分の汗で濡れていて気持ち悪い。


……全身がとてもだるい。インフルやコロナの高熱にかかった後の時を思い出す。

顔を動かすのも億劫で、身体は全身に鉛をつけられたかようにピクリとも動かない。


「…………?」


ふと、右手にとても柔らかくて暖かい感覚。

とても優しく、こわれものを扱うように自分の手を包んでいる。


強い意志でなんとか首を右に向ける。

それだけで短距離走を全力で走ったような疲労がきた。


ーーー朝日を背に、この世の者とは思えない女性が、その場にいた。


簡素な装飾ながらも上質な布の衣装を着、その着物からも分かる美しい肢体。

眠っている表情は天女のように美しい、長い睫毛、意思の強さを感じさせる整った眉、

珠のように滑らかな肌に朱を塗ったかのような紅い唇。

疲労で少し顔がやつれているように思えるが、その程度では彼女の美を損なう事もできもせず、

その翳がより一層彼女の美を引き立てている。

こくり、こくりと船を漕いでいる姿も美しい。


なにこの理想の戦国のお姫様。

自分の好みどんぴしゃの、美少女姫様が、俺の手を包んでそばにいた。


………あ、俺これ死んだのかな?

それで、自分の理想の女性をお迎えに神様が迎えに送ってくれたと。


そう思えば、神様も粋な事をしてくれると思う。

……いや、神がいるのなら碌な事してくれていないか。


だって急に本能寺の変よ?

そんで逃げ出してこの戦国時代の中休まず悪路を全力で逃げて、

仕舞には鉄砲で撃たれて倒れるときたのものだ。


おのれジーザスシット。許すまじ、神。

いやでもこんな天使迎えに送ってくれてるのなら、やっぱ許さないでもない。



見つめている視線を感じたのだろうか、

寝ていた瞳が、うっすら開く。

視線はぼやけ、徐々に焦点があったのだろう、こちらの顔を見つめている。


「のぶ、ただ、さま?」


ぱちくりと。彼女が目を覚まし目と目が合う。

強い意志を感じる凛々しい目に、琥珀のように美しい瞳。

その美しい翡翠の瞳に自分の顔が映っている。


その瞳と表情が、驚愕、歓喜、そして涙が滲んでくる。


「信忠様、信忠様、信忠様!?」


信じられないものを見るように。

奇跡が届いたと思っているかのように。


…………自分をこんなに案じてくれているのは誰だろう。


誰、と問おうと口を開くが、不思議な事に、身体が別の言葉を求め、発する。


ーーー身体が、彼女を覚えていた。

ずっと、求め願っていた相手に、

自然と、口から彼女の名前が零れてくる。


「……松、姫?」


涙の中に歓喜の表情が混ざり、擦れた、それでも美麗な声が唇から零れる。


「……はい、まつにございます」

「ーーーお会いしとうございました、信忠様」


そう言って、こちらに微笑みかける泣き笑顔。


……この世界に来て、この姿を忘れる事はないのだろう。

それくらい、その笑顔は美しかった。






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― 新着の感想 ―
この時代、親しい人間でも諱は呼ばないので、作品冒頭みたいに官位か仮名(けみょう)を用いた方が宜しいかと。
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