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ファンタジーな世界ってこんな感じなんですか? ー起こることは現実的で心が折れそうですー  作者: ナツオ


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201/203

3-4

『何のつもりです?』


 俺はアイラと連中との間に入って、

「もうこの辺りでいいじゃないか」

 アイラと対峙する。

『彼らの味方をするつもりですか?』

「いや、そんなつもりはない。毛頭ない」

『なら何故?』

「もうそこそこやったろう」


 鋼の剣の連中・・・ダメージの大小の差はあっても、少なからず全員やられてる。

 特に食らっているのはイケおじ。盾を杖代わりにして立ってはいるが、次はもうないだろう。

 マイコーも大概だが、黒魔術師も直撃を受けて吹っ飛ばされてるし、隙を見て回復魔法を使ってるヒーラーもそこまで回復しちゃいない。


 満身創痍ってのはこれのことだよなぁ、たぶん。

 そこそこやったっていうより、灸を据えたってくらいにはしっかり、ガッツリやったはず。


『彼らは我々を倒そうとしているのです。それを打ち払うのは当然のことだと思いますが?』

「それもごもっとも。だけど、もう十分だ。こいつらはもう立てない」

 そりゃあ、向かってくるわけだし、やられて素材になるとか真っ平ご免だ。そりゃあ、アイラが言うことはその通り。

 だが、

「これ以上やっても、あんたの格が下がるだけだ」

『・・・わたくしの格?』


 アポロやアイオロスもそうだが、アイラも神獣の一頭。当然、地上にいるモンスターやら人間よりは格上の存在だ。

 特にアイラの場合、言葉や立ち振る舞いがアポロたちと違って品がある。


「こいつらみたいな格下を相手にするだけ、もったいないんだ。無視するか、適当にあしらって終わりでちょうどいいんだよ」


 それこそ、サイクロンエッジを一発かまして、ビビらせて撤退させるくらいでちょうどいい。

 ボコボコにして格の違いを見せつける、もしくは天狗の鼻をへし折るとか、そういうのも悪くはないんだが、これ以上は良くはない。

 強いのは理解できるし、マイコーと魔術師に腹が立つのは分かるが、これ以上は必要ないだろう。


「こいつらのことはどうなったって知ったこっちゃない。別に友達でも何でもないし、ここでくたばっても問題はない」

「貴様・・・!!」

 マイコーが腹を立てているようだが、

『ならば、ここで討っても問題はないでしょう。彼らのような者たちを下界にのさばらせては、下界の損失に繋がります』

 まあ、ろくなことは起きないだろうなぁ。大概、俺たちも面倒なことに巻き込まれたし。

「だけどまあ、そのためにあんたが手を下して、格を下げるってのはもっとないだろ」

 アイラは神獣だし、こう言っちゃあ悪いが、アポロたちより品がある。

 そんな存在がわざわざ手を汚すってのは、イメージが良くないよなぁ。たぶん。

「こいつらもそれぞれ、結構痛手を受けてる。動けない奴もいるだろ。放っておきゃあ自然にくたばる。それ以上はやってもやらなくても一緒だ。アイラが手を下す必要はない。それに」

『それに、何です?』

「森が穢れる」


 独特の空気感はあっても、この森は美しい。

 きれいな芝を焚火で傷つけてしまったから言えたもんじゃないんだが、こういうところはそのまま残しておきたい。

 たまにあるだろ。一種の聖域みたいなところが。

 俺はここがそれに値すると思ってる。

 だから、こいつらの血で汚したくはない。これが結構、大きく割合を占めてるんだが。


「だからもう、やめよう」

 これで納得してくれたら御の字なんだが・・・

『良いでしょう』

 アイラの額の角に宿った光が薄くなり、纏う風が散った。

『無謀にもわたくしに挑んだ者たちよ。キリヤに感謝するのですね』

 アイラは走り去っていった。

「・・・ふぅ」

 とりあえず、危機は去った・・・いや、別に俺が危なかったわけじゃないんだが、トラブルの大半は終わったか。


 アイラの最後の言葉・・・あいつらに聞こえていたんだろうか?


「クソッ・・・余計な真似をしやがって!!」

 マイコーが立ち上がった。剣を支えにしてゆっくり。

「貴様、あのユニコーンを知っていたんだな?」

「・・・何のことだい?」

 とぼけてみるが、

「同じ場所にいるくせに、貴様たちには仕掛けていない!!知っているとしか思えんだろう!!」

 吠える元気はあるらしい。

 あと、アイラの言葉は聞こえてないな、これは。まあ、そりゃそうだろうが。

「マイケル、今は回復が最優先だ・・・!」

 イケおじが武器を捨てて、ヒーラーの傍に寄っていた。

「パーシーは先に自分の傷を癒せ。俺はメリルを連れてくる・・・!」

「了解・・・!」

 ヒーラーがパーシー。黒魔術師はメリルっていうのか。今更知ることになるとは・・・

「あんたは手伝わなくてもいいのか?」

 イケおじは頑張って仲間を助けようと動いているが、

「どういう理由かは知らないが・・・よくも俺たちをコケにしてくれたな!!」

 マイコーはこれである。

 地面から剣を引き抜いて、中段気味に構えた。

「・・・もうよせよ」


 剣先が震えている。

 もう立つのもキツイだろう。

 立つための気力がまだあるのか、そもそも体力が有り余っているのか、もしくはプライドか・・・


 今のマイコーを動かしているのはたぶん、プライド一本鎗だ。


「あんたが俺をどう思うかは知らないしどうでもいい。とりあえず、周りを見てみたほうがいいんじゃないか?」


 傷ついた仲間がいる。

 プライドより、傷ついた仲間を助けるほうが先のはずだ。

 俺だったらそうする。まあ、元々俺はプライドなんて大層なモンは持っちゃいないが・・・


「うるさい!!ここで始末してやる!!」

 こいつに周りを見るとかは難しいか。分かっちゃいたけど、結構悲しくなってくるな。

「抜け!!ここで斬り捨ててやる!!」

「やめとけって、あんたそんなことできる状態じゃないだろうよ」

「うる―――」


 ドカッ!


「うっ―――」

 マイコーが倒れた。

 白目になって、ばたりとその場で倒れ込む。まるで強烈なパンチを食らったボクサーみたいに、力なく。

「・・・おいおい」

「ふぅ・・・」

 まさか、イケおじが動くとはな・・・

「どういう風の吹き回しだ?」


 イケおじは静かに距離を詰めて、槍の柄でマイコーを殴った。

 まあまあ、しっかりめに。殺意はなさそうだが、気絶させる気満々の一振りだった。


「このまま続ければ、俺たちのパーティは全滅だ・・・それだけは避けたいんでね」


 ・・・賢明な判断だ。

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