3-3
「マズいぞ!回復だ!」
状況をすぐさま理解したイケおじが動く。
「俺が囮になる!その隙にマイケルの回復を急げ!」
槍と盾を持ったイケおじが前に飛び出していき、
「了解・・・!」
ヒーラーが追従する。
鎧を切り裂いて、更に肉体にダメージを与えたサイクロンエッジの一発。
いや、正確に言うなら複数攻撃。
攻撃力は見ればすぐに分かる。
マイコーも大概、剣士としてやってきているし、比較しちゃあ悪いが、トールやジャンとは比べ物にならないくらい実力はある。
それがどうだ?今は剣を支えにしないと立てないくらいに追い込まれている。
『それだけではないぞ、少年』
空を駆け足で走り続けているアイラをアポロは見上げていて、
『アイラの攻撃が優れているところは威力だけではない』
「・・・というと?」
『奴らを見ていよ』
イケおじたちに視線が向けられ、
『状況判断は悪くありません』
アイラは角に光を集中させていて、
「来るぞ!!」
イケおじは盾を構えて、
『サイクロンエッジ』
アイラが再びつむじ風を放つ!
「うおおおおおおおおっ!!」
その一撃は盾を構えるイケおじに直撃して、マイコーと同じように切り裂いていく。
『あの攻撃は避けられないように仕掛けが施されているのだ』
逃げられない仕掛け・・・?
『無防備ですわね』
アイラの視線がヒーラーに向く。
「うっ・・・!」
ヒーラーも腕や足に攻撃を受けていた。
「あいつ、食らっていたのか・・・!」
そうか・・・あいつはイケおじの後ろにいた。マイコーを救助するために、イケおじにガードを任せて追従していた。
アイラの攻撃の射程範囲内にいた・・・だから攻撃を受けてしまったんだ。
直撃こそしていないものの、サイクロンエッジがダメージを与えている・・・
動きは確実に鈍る。
マイコーはダウン寸前で動けない。
イケおじはダメージを負った直後・・・動けるか!?
『少年、あの娘を見ていろ』
『受けなさい』
三度目の旋風が放たれようとしている。
ヒーラーを見ていろって言ったって・・・
「・・・んん?」
風が・・・吹いている???
『サイクロンエッジ』
「させん!!」
ヒーラーを庇うように、イケおじが盾を構えて、
「うおおおおおおっ!?」
またもや受ける!
「ううううっ!!!」
イケおじだけじゃなく、ヒーラーもまたダメージを受けて、体に傷を負ってしまう。
「うぐっ、マズい・・・!!」
鎧よりも頑丈に作られていそうな盾もズタボロになっている。
イケおじ自身も相当なダメージが入っているが、ヒーラーもそれなりに食らってるぞ・・・
『あの小娘は戦意喪失と言ったところですか』
離れたところに、黒魔術師がいた。
あいつはただただ、ぼーっと突っ立っているだけ・・・
本来ならイケおじやヒーラーが展開しやすいように魔法を使って攻撃する、もしくは撤退するために支援砲撃するところだが、他の三人が一瞬でズタボロにされてしまって、心が折れたのか・・・?
『何でも構いませんが、あなたも受けていただきましょう』
アイラも容赦ないなぁ・・・とか言う俺も、止めに入ればいいのに、それをしない辺り、容赦がないと思われても仕方がないか・・・
『サイクロンエッジ』
風がまた、巻き起こる。
直後、旋風が黒魔術師に直撃する・・・
「かはっ―――」
黒魔術師は吹っ飛ばされた。
まるで風で舞い上がった新聞紙みたく宙を舞って、ぱたりと地面に落ちて転がる・・・
マイコーたちのパーティが全滅寸前だ・・・
「強すぎだろ・・・」
ジェシカでさえビビるくらい、圧倒的な戦闘能力を示すアイラ。
そりゃあ・・・それくらいしか言葉は出ないわなぁ・・・
『少年、気付いたことはあるか?』
アポロはアポロで目の前の惨劇はお構いなしか・・・ブレんなぁ。
「・・・なんとなく」
『言ってみよ』
「アイラが攻撃する直前、風が起こってる」
『良い答えだが、それだけでは足りぬ。付けたせるか?』
採点的には三角、もしくは七十点と言ったところか・・・
「たぶんだけど、風で相手の動きを妨害しているんじゃないか?」
『ふむ・・・まあ、良かろう。及第点だ』
アポロはアイラを眺めながら、
『サイクロンエッジは旋風による斬撃だけではなく、相手を自分のいるほうへ引き寄せることで避けられなくしている』
相手を自分に引き寄せる・・・?
『攻撃をする直前、周囲の風をコントロールし、攻撃対象を自分がいる方へ引き寄せるのだ。そうすることで動きが止まる。何故か?』
「・・・何となく原理は分からなくもないけど、そこまで上手くいくのか・・・?」
サイクロンエッジの動作で対象を引き寄せる。
引き寄せるとは言うものの、実際は自分の近くまで引っ張り込んでくるわけじゃない。
ちょっとだけ、自分に追い風が吹いている・・・ってくらいか?
そうすることで何が起こるか?
たぶん、身構えるんだ。
例えば、外出している先で強風に見舞われたとする。
強い風が吹いていると、思わず身構える。仮に正面から吹いてくるようであれば、踏ん張るために足を一歩踏み出すだろうし、追い風になっているなら後ろに体重を移動させて踏ん張るはずだ。
その行動自体、知識的なこともあるだろうが、大体は本能的にそうするはず。
サイクロンエッジで引っ張り込む風を相手に仕掛けたなら、仕掛けられた側は引っ張り込まれないように体重を後ろに掛けて踏ん張るはず・・・
そこに強い一発をお見舞いしているとしたら・・・?
『無論、そこまで強くコントロールしてはいない。強くすれば効果は高まるが、仕掛けを察するキッカケを与えてしまうことになる』
「まあ、アイラならそのままブチ抜くだろうけど・・・」
「人の子相手にそこまで強力な仕掛けは要らぬ。無意識に体が動いた程度まで仕掛けられたら十分なのだ」
ガチガチに動きを止めたい相手ってのは、たぶんモンスター相手だろうな。
あっちはあっちで気付くこともあるかもしれないが、たぶん単純な戦闘能力勝負になる。そこに小細工は要らないのかもしれない。
『魔術師の小娘はともかく、他の連中はアイラの術中にはまっていた。盾を持った男は避ける気はなかっただろうが、他の二人は動きを制限されてああなったであろう』
イケおじはタンク役なわけだし、仕掛けがあって気付いたとしても避けることはない。
他の三人は術中にはまった・・・ということだ。
しかし、そこまで強い風が吹いていたようには見えなかったんだが・・・
『確かに見た目はそこまでの強風ではない。それぞれが動き回っている中で吹く風であれば、見落とすほうが大多数であろう。だが、そんな程度の風でさえも強力な効果を発揮する。それが神力である』
広範囲を見回し、特定の個所をクローズアップして見ることができるバードアイも、やっていることは単純でも高い効果を発揮している。
アイオロスが持っている神力は未だに分からないが、アイラのエアステップやサイクロンエッジも異常なくらい高い効果であることは間違いない。
そんな能力を持っている相手に仕掛けるとか・・・命知らずもいいところだぞ、あんたら・・・
『終わりにしましょう』
空中で立ち止まったアイラが、角に光を集めていく。
これは次で仕留める気だな・・・
「ああ、この辺りでやめとこう」
・・・とりあえず、止めますか・・・




