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アイラが案内してくれたのは、出会った場所からもう少し奥に入ったところにある開けたエリアだった。
えらく澄んだ水が湧いている湖と、その周辺を覆うように存在している森。
水が綺麗で飲めるだけじゃなく、ある程度奥に入っているから、プライベートも確保できる。外敵に接触しにくく、感知しやすいってのもあるだろう。
ある意味、理想的なキャンプ地と言える。
ただ、どこか落ち着かない自分もいる。
この空間が綺麗過ぎるんじゃないかと思う。
森に入った時から思っていたことだが、生命を感じない。いや、いないわけじゃない。鹿やらウサギやら、森にいそうな動物が見えた。
ただ、個体数が少ない。
日本でキャンプしても、そんなに多くの動物を目にすることはない。せいぜい、さっき挙げた動物に加えて蛇が一匹、滞在中に見えたらラッキーくらいなもの。鳥はそこそこいるけども。
動物園みたいな量がいれば、身の危険もあるが、その前にこっちが落ち着かない。
動物がいれば汚いって話じゃあないんだが、そういう表現しか思い浮かばない。
ここだけまるで別世界のような、まるで一枚の壁がそこにあるかのような。
神獣、ユニコーンがいる森。それ故の世界なのか?
「よし、一旦はこれでいくか」
アイラが案内してくれた場所に、早速落ちている枝とタープを使って屋根を張った。
落ち着かないとは言っても、仮にも神獣が案内してくれた場所。この森でベストなキャンプ地であることに違いない。
住めば都とも言うし、滞在するうちに馴染むだろう。
ここは前向きにキャンプ地設営を進めるとする。
『そういうことをするのですね。面白いです』
アイラは物珍しそうにタープを・・・いや、正確に言うとタープを張る行為を見ているようだった。
「何が面白い?」
『道具を使って居場所を作る・・・これは我々にはできない行為。故に面白いのです』
確かに神獣・・・いや、人間以外の動物にはできない芸当だろう。
『人は知恵を持った。火を起こし、道具を作り、文明を作った。あなたが行ったこともその一部』
「なんかスゲェ話してんなぁ」
「神様はそういう話が好きなのかな?」
ジェシカもそうだが、ヴェロニカたちは蚊帳の外。
そりゃまあ、事情を話してないし、当たり前っちゃあ当たり前なんだが。
「話は長くなるか?」
『いえ、話はそこまで長くないですが、その後が長いかもしれません』
何かする・・・いや、させようとしてるのは分かる。
願うのはそれが過酷じゃないことだけだな・・・
「火を使うことは問題ないか?」
『推奨はしませんが、食事を作るために必要であれば仕方がありません』
ほんの一部とは言っても、土を痛めつけるからな・・・推奨しないっていうより、勘弁してくれっていう感じだろう。
それでも、こっちは必要になるし、目を瞑ってもらうしかない。
大人の飯は保存食で済むとしても、ミルクしか口にできない子供もいる。火の使用は避けられない。
「じゃあ悪いけど、先にこっちのほうを片付けてもいいか?」
ヴェロニカたちを指差すと、
『いいでしょう。少しだけ時間を取ります』
そう言うと、アイラは軽快に駆けてどこかに走り去っていった。
「どこ行ったんだ?」
「知らん」
アイラにはアイラの事情もあるだろう。
仮にも神様なわけだし、そういう内容かもしれない。だったら俺に分かるわけもない。
「とりあえず、こっちの用事を先に片付ける」
火を起こして、まずは湯を沸かそう。
「ミルクを作りながら話す。マーベルさん、適当な石を拾ってきてもらっても?」
「分かりました」
「ジェシカは枝を集めて来い」
「はいはい」
「ヴェロニカは・・・まあ、その辺でじっとしてろ」
「わたしだけ指示が雑だなぁ」




