三度目の正直 -何度やってもダメな時はダメ-
「これからどうするんだい?」
「うーん・・・どうだろうなぁ」
ドッシュに乗った俺たちは、シルフィを北上している最中だ。
ジェシカが正式に・・・いや、正式か?特に許可も出していないような・・・
いや、それは一旦置いておくとして、パーティに加わった。
一緒に行くことに関しては、ヴェロニカの正体を知ったことで余計な気を遣わずに済むようになったから、特に気にしちゃいない。
問題はその目的・・・
まさか人探しをしているとは思わなかったなぁ。
「なあ、こっちの世界の人間は人探しするのが好きなのか?それともそれが当たり前?」
「好きとか当たり前とかはないけれど、無いとは言い切れないかなぁ」
ヴェロニカに続いてジェシカも人探し。
しかも同行者のうち二人がそうだっていうなら、そういう風に思っちまうのも仕方がないんじゃないだろうか?
それこそ、闇の力に目覚めた父親と、辺境の惑星で育った息子が戦う大スペクタクルだったり、出稼ぎに出かけた母親を追っかける少年の話だったり、そういう展開に近いから、余計にそう思うだろう。
「ただ、今回は特徴的で分かりやすい」
*
「探している方のお名前などは分かっているんですか?」
こういう話になると、対象がはっきり分かっているのかどうかを確認するだろう。
「いや、知らねぇ」
「おい」
一気にハードルが上がったよ・・・
「何で知らないんだよ?」
「しょうがねぇだろ。まだ十歳だった頃、一回見ただけなんだからよ」
どうやら、対象の人物はトラブルの最中に遭遇しただけの関係らしい。
「あたしが十歳の頃、村の近くでモンスター大量発生が起きて、その先頭に巻き込まれたんだよ」
「大量発生か・・・」
レッドゴブリンの件でよく分かった、謎の大量発生クエスト。
どういう仕組みでああいうことが起こるのかは分からないが、どんなモンスターであれ、莫大な数が突然発生するのは別の意味で困る。
例えばガノダウラスみたいな大型モンスターが一頭いるのと、ボスゴブリンを含めたゴブリンが百匹いるのとは訳が違う。
ガノダウラス一頭の場合、手練れを複数準備して対応する、一対複数の状態。だが、ゴブリンの場合は一匹につき一人、もしくは複数につき一人を要する。
人員が必要だということに違いはないが、対応方法が変わってくる。
数がいる相手に対応するためには、やっぱり数は必要になる。それこそ、一振りで辺り一帯をドカッと薙ぎ払えるような聖剣だったり、複数を一斉に攻撃できるような広範囲かつ高火力な魔法を使えない限り、一対一を仕掛けざるを得ない。
もちろん、これはあくまでも例だ。周囲への被害なんかを考慮していない。した場合、もっと条件が複雑化するだろう。
あれってどういう原理で発生するんだろうな。
まあ、それを考えるのは今じゃなくていいわけだが。
話を戻そう。
「発生したのはグリーンゴブリンで、どうわけかボスが二頭いた」
「・・・そういうこともあるのか」
ボスっていうくらいだから、一つの群れに対して一頭っていうイメージだったんだが、どうやらそういうわけでもないらしい。
ボスゴブリンは雑魚と比較してもそこそこ強い。
今ならスキルも装備も整ってきているし、一人でも倒せる自信はあるが、
「お前も散々聞いたろうが、あたしたちエルフは体がそんなに強くない。だから接近戦を挑むのは難しい」
病弱とかじゃなく、打たれ弱い。
ガーベラさんも言っていたくらいだから、エルフの最たる悩みの一つであることは間違いない。
だから国外から接近戦を得意とする連中を呼び込むっていう策を採用し、状況が悪化する度に報酬を上げて自らの首を絞めていったわけだが、国内に住んでいるヒト族だけじゃまかない切れなかった・・・というリアルな実情があった。
エルフは手先が器用、回復力があるという特性がある。だから弓兵やヒーラーが多いわけだ。
中にはオニキスやジェシカがいるが、これは特異な例であると言ってもいい。
それほどにシルフィの戦力はバランスが悪い。
だからこそ、ガーベラさんはボルドウィンと協力しようとしているようだったが・・・あれって結局、どうなったんだろ?
「あたしの故郷も他と一緒で、そこまで強いヤツがいない。アーチャーが複数人と、魔術師が一人か二人、三人いれば多いほうで、接近されたらもう為す術がない」
アーチャーは弾数制限がある。
ゲームみたいに何発も撃てるわけじゃない。手持ちの矢が尽きれば攻撃できない。
魔術師もそうだ。魔力が尽きれば攻撃できない。
ヒーラーは攻撃能力は皆無ときた。
防衛網を突破されたら、あとは死に物狂いで戦うか逃げるか、隠れてやり過ごすかのどれかだ。
「あの時もあっさり防衛網を突破されちまってな。死傷者も出るだろうし、壊滅も覚悟していた。そんな時にとある男がやって来た」
「そいつを探してるのか」
「ああ」
クエストに食いついてきたのは、はたまた偶然か・・・
「スゲェヤツだったよ。拳一発で雑魚どころかボスも殴り飛ばしていたからな」
「・・・ええ???」
拳ってことは格闘家か・・・
格闘家であることは一旦置いておくとして、雑魚ゴブリンをパンチ一発で仕留めるのは、今となっちゃあ驚かない。上手いことやれば俺だって一発でしばき倒せるとは思うし。
だが、ボス個体となると話は別だ。
体力もあるし、動きも雑魚とは比べ物にならない。別の種類のモンスターと考えてもいい。それを一発で仕留めるってのはなかなかの攻撃力だぞ・・・
「わたしもあれくらいなら一発で倒せるけどね」
「張り合うな」
確かにできるんだが、ヴェロニカは特例なんだよ。特例というか異例というか。とにかく標準じゃない。
「それくらい強いなら、相当名が知られた人なんじゃないか?」
中型モンスターを一撃で倒せるなら、有名な可能性はあるだろう。
「特徴を覚えていますか?」
「そうだな・・・かなりデカいヤツだった」
「デカい・・・」
「体格がスゲェんだよ。筋肉も隆起しててよ」
イメージしやすい特徴だ。
日本にもいるようなタイプの格闘家なんだろう。例えばレスラーとか。
拳を使うってところでボクサーって可能性もあるが、その場合は筋肉が隆起するような感じじゃなく、引き締まってるっていうほうが正しいだろう。
「身長もそれなりに高かった気がする。村の男よりも頭四つくらいは高かったんじゃねぇか・・・?」
平均身長を仮に百七十センチくらいだとして、頭四つ分高いとなると、二百七十センチくらいになるんだが・・・そんな人間いる?
俺が知ってる高身長の人間だって二メートル強くらいだぞ・・・?
まあ、そんなのがいるかどうかはともかくとして、想像できるのは、身長が高く、ガタイがしっかりしたハードパンチャー・・・ってところか?
「・・・ふむ」
「マーベルさん、知ってるんですか?」
「まあ、面識はありませんが、何となく該当する方はいますね」
リアクションからしてそんな感じはしたが、
「どこにいるんだ!?」
「ヴォルスという格闘家で、ポーラ大陸の出身だと聞いていますが・・・」
*
という話があった。
マーベルさんが話していた内容が正しいなら、ジェシカが探しているのはヴォルス・クードマンという人物で、ポーラ大陸出身。
傭兵じゃないかって話らしいが、ヴェロニカとは違って名前と出身地が今の時点で判明している。
これだけでもだいぶ楽だ。
しかも、有名な可能性が高い。
三メートル近くある大男なら嫌でも目に留まるし、近くにいるなら噂話の一つや二つ、耳にすることもあるだろう。
ヴェロニカの親と違って、遭遇する可能性は高そう。そういう意味でも気持ちが楽になる。
「気になるのは何でそいつを探してるかってことか・・・」
探していることは分かったが、真の目的は分からないまま、移動を再開してしまった。
別の機会で聞く必要はあるかもしれないが、目標はそれなりに聞けたし、そこまで深掘りする必要性がなさそうにも思える。
微妙にもやもやしている状態になってしまった。
「まあ、出会った時に聞けばいいんじゃない?」
「それが妥当か」
ビューラ大陸を目指す以上、ポーラ大陸は避けられない。そいつが見つかるまで一緒にいるなら、聞く機会もあるだろう。
絶対に知りたいとまではいかないにしても、知ってしまった故に気になる。
その機会が訪れた時・・・全てが分かるのかもしれないな。




