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ファンタジーな世界ってこんな感じなんですか? ー起こることは現実的で心が折れそうですー  作者: ナツオ


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4-6

 観覧席が揉めるのは分かる。

 実際、揉めてるし。

 俺が大概、言うこと言ったし、貴族連中がいきり立つのは仕方がない。


 だが、会場が揉めるってどういうことだ???


 観覧席から近い連中には会話が聞こえていても仕方がないが、それでもごく少数に留まる。そもそも、観覧席と会場とはそこそこ距離があるから、声が届くかどうかも怪しい。

 仮に聞こえていたとしても、こっちの会話の内容が広まるには多少時間が掛かるだろう。


 あっという間に会場に浸透しているような感じ・・・一体なんだ?


「あのガキ、俺たちが潰れてしまえばいいとか言いやがったぞ」

「ヒト族はエルフのことなんかどうでもいいのね・・・」


 んんん???

 何かがおかしい。


「おい、会場にいる連中・・・」

「ああ、明らかにキリヤに意識が向いてるな・・・」


 そう。そうなんだよ。

 どういうわけか、俺に視線が集中している。

 しかも、明らかに攻撃的な・・・


 マジでどうなってんだ、こりゃ・・・


 あ。


「まぁ、こうなるよねぇ」

 手元の赤ん坊・・・

「まさかお前か・・・?」

「うふっ」


 うふっじゃねぇよ!!!!


 何やってくれちゃってんの!?

 ねぇ!?


「いやー、こういう場だからさぁ。本音を聞けたほうがいいと思うんだよ。候補者だけじゃなく、観覧席側の意見も聞けたほうがいいでしょ?」

「だからっておまっ」

 貴族連中の話が広まってないような気がする・・・

 明らかに俺に視線が集中してるし・・・

「それにしたって、どうやってこんなことを」

「そういう風に使えるスキルがあるからね」


 どういうスキルだよ・・・拡声器とかスピーカーとか?そんなもんあった?

 いや、今はそれを考えてる場合じゃない。


「公約発表の場で無茶苦茶言いやがって!!」

「下りて来い!!追い出してやる!!」

 明らかに攻撃的なんだよなぁ・・・

「ま、まあ、お互い落ち着こうぜ?」

 今もこっちの声は届いてるんだろうし、とりあえず場を収めたいが・・・

「落ち着いてなんぞいられるか!!」

「余所者が好き勝手言ってるんじゃねぇよ!!」

 とまあ、こうなる。

 そりゃまあ、こういう意見が出てくるのは仕方がない。それも分かる。そりゃあ、国外の人間に好き放題言われりゃあ気持ち良くはない。

「どうします?」

「・・・ふぅー・・・」


 落ち着いていこう。


 観覧席からの脱出は難しい。

 貴族たちに包囲されている状態に近いし、強引に突破するなら手荒な真似も避けられない。


 かと言って観覧席から会場に飛び出して脱出・・・ってのもまた難しい。

 寧ろ、こっちのほうが難易度が高い。

 貴族たちよりも人数が多いし、今や会場全体が攻撃的になっている。俺を脱出させまいと立ちふさがってくるのは当たり前だろうし、こっちのほうが人数が多いし、非武装の一般人ばかり。そういう連中をしばくとこっちがお縄になる。それも避けたい。


 ・・・となりゃあ。


「よし。お互い冷静になろう」

「どの口が言ってやがる!!」

「あくまでも俺個人の考えだけど、マーガレットが無茶苦茶してるってのは分かってるんだよな?」


 どうせ逃げられないなら、行くとこまで行け!!!


「あんたらだって分かってるんじゃないのか?」

「無茶苦茶なのは傭兵たちだ!!女王は関係ない!!」

「その傭兵を入れる制度を作ったのは女王だろ?だったらマーガレットがおかしいってなるんじゃないの?」

 反論が一瞬止まった。

 さっきまで反論してきていたヤツはこれで終わりか?

「事実、傭兵のおかげでモンスターから国は守られている!!」


 別のヤツが仕掛けてきた。


「であれば、全ての傭兵が害悪というわけではないはずだ!!」

「それはごもっとも」

 俺も全てを見てるわけじゃない。傭兵の一部はしっかり仕事をしてるだろう。

「なら、狩猟祭のスコアはどう説明する?」

 大きく差がついた狩猟祭の結果。

 あれが実力差だということを物語っている。

「モンスターの遭遇の関係もある!!ずっと危険度の高いモンスターを狩ることはできない!!寧ろ、ガーベラ陣営が出来過ぎではないのか!?」

「おお、そう来たか」

 確かにあれは出来過ぎと思われても仕方がない。

「大型モンスターを狩るのには時間が掛かる!!たった二日、三日で討伐は難しいはずだ!!」

 上手く遭遇できたし、それをあっさり倒すことができる火力もウチにはある。

 それが国の防衛力で達成できたなら文句はない。

 だからこそ、

「逆に考えれば、それができたガーベラ陣営の能力の高さを証明してる」

 できない、無茶は理解している。

 逆に考えれば、それを達成できているなら、それ以上の結果はない。

「俺も狩猟祭には参加したが、モンスターを倒す地力はあった」


 単純な戦闘能力は未知数。戦っている様を見たのはオニキスだけだし、それ以上は分からん。

 だが、索敵による位置把握、情報伝達等の連携はしっかりしていた。

 索敵をしっかりできていれば、どこにヤバいモンスターがいるとか、どこで罠を張る、どこで仕掛けるか、作戦を立てやすい。


 単純な戦闘能力もそうだが、そういった点も実力のうちのはず。

 レナたちが集めた情報があったからこそ、俺たちは効率よく動けたし、ジェシカたちも酷い消耗もなくモンスターを狩れていたし、オニキスたちも結果を出せた。


 その結果が今回の狩猟祭の結果と言っても過言じゃないはずだ。


「結局、傭兵に頼ってもダメなモンはダメってことだよ。寧ろ、自国の戦力でも十分できることをガーベラさんは証明してる」

「うっ・・・ぐ」

 結果が全て。それを踏まえれば分かる話ではある。

 幸い、仕掛けてきたヤツはそれで分かってくれたような感じだが、

「皆の者、よく聞きなさい」


 マーガレット・・・

 諸悪の根源め。


「この子供は所詮他国の者。観覧席に座ってはいるものの、位が高いわけでもない、ただの小僧。そんな子供の発言にどれほどの価値があるか、分かるわよね?」


 最終的にはこいつが立ちはだかってくるか。


 というより、

「ってかアンタ、結構焦ってるんだろ?」

「・・・はぁ???」

「そうじゃなきゃ、口出ししないよなぁ」


 マーガレットは強力なカードを持ってるわけだから、下手に口出しをしなくても勝てる状態なわけだ。


 それでも口出しするってことは、どこかでヤバいと思うことがあるからだ。

 

 狩猟祭の結果か、傭兵の件か、それとも会場の空気を読んだか・・・

「・・・調子に乗るんじゃないわよ、子供のくせして」

「子供だから調子に乗ってんだよ」

 この流れに乗って、いけるところまでいかせてもらう!

「あんた、自分のところの部下を使って俺たちを他所から呼んで、狩猟祭に参加させようとしてたよな?まあ断ったけど」

「何を言ってるのかしら?あんたなんか見たこともないわ」

「謁見の間かどこかをブチ壊してやったのを覚えてないとか、記憶力が無さすぎてある意味ヤバい」

「わたくしを愚弄しすぎてるわね」

「おやおや、そういうことだけは分かるんだな」


 このままやり取りを続ければボロの一つや二つ、引き出せそうな感じはする。

 ただ、俺も慣れないことをやっている自覚もある。


 下手にこっちが余計なことを言っちまうこともあり得るし、この辺りで引いておくほうがいいか?

「なあ、あんたら」

 マーガレットから会場にターゲットを戻し、

「この女王を見てみろよ」

 ブリブリのドレスにとんでもない数の宝石。

 ばっちりメイクにヘアセット。

「全て税金だ」

 ドレスや宝石、アクセサリーを購入するのも、メイクやヘアセットの施術料も全て税金のはずだ。

 確認したわけじゃないが、マーガレットのキャラからして自分のお金を使わないだろう。

 ここは若干賭けになるが、

「あんたらの血税はこいつの贅沢になってる」

「勝手なことを言ってるんじゃないわよ!!」

 この様子からして正解らしい。

「あとは仕事をしない傭兵たち。ひと月当たり二百万フォドルが支払われる。小さいゴブリンを一匹倒しただけでも二百万。いや、それすら倒さなくても二百万。気分で部下の首を平然と切るし、正々堂々戦わなきゃいけない狩猟祭で不正もしてる。そんなヤツにまた女王を任せてもいいのか?」

「構わないわ!!その小僧をひっ捕らえよ!!」

「皆の者、抜け!!」

 マーガレットの命令で、貴族たちが武器を抜いた。

「おいおいおいおい・・・!」

「へっ、上等だ!!」

 キースは困惑したようだが、ジェシカは笑いながら拳を固めていた。

「無茶よ、今は装備を外してきてるんだし!」

「斬られる前に殴ればいいんだろ!!」

 言ってることはそれっぽいが、それができる能力が足りないのが悲しい・・・

「自分に不利になりゃあ、力づくで黙らせる」

 実力は一旦置いとくとして、ここはジェシカに壁になってもらう。

「そんなヤツより、ウチの総大将を見てみなよ」


 ガーベラさんは壇上でも崩さず、動じずにいる。


「こんだけ騒ぎになってるのにどっしり構えていられるような人のほうが、安心しないか?」

 自分に不利になれば声を荒げて感情的になり、他人を陥れてもどうとも思わないヤツより、ガーベラさんのほうがリーダーに向いている。

 それを国民に理解してもらいたい。

「ウチの総大将を選べって言ってるわけじゃない」

 本当はガーベラさんがベストだと思うが、

「他の候補者の人にも目を向けろって話だよ。少なくとも、国を良くしようと思ってその場所に立ってるはずだ。それに目を向けて、言ってたことをよく考えて投票しろよ。俺が言いたいのはそれくらいだよ」


 言いたいことはもっとある。

 だが、俺が口で言うだけしか伝える方法がないから、マーガレットがやってることを伝えることが難しい。

 あとは国民の判断・・・ここで変われなきゃ、もう変わることはない。


「うん、言うだけ言ったわ」

 やれることはやった。

 あとは、

「どうやって帰ろうな」


 臨戦状態の貴族たちを抜け、大勢の民衆たちを抜け、更にこっちに来るであろう兵士たちを潜り抜け、無事にここを出られるだろうか・・・?

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