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ガーベラさんの演説の内容にそこまでの不備はなかったように思える。
この国の問題を把握していて、それに対する対策は説明された。
俺は政治家を目指しているわけでも、それに対して勉強してきたわけでもない、その辺にいるただの素人だ。ガーベラさんが掲げたマニュフェストが実現できるかどうかとか、抜けがあるとか、そういうことまできっちり分かっちゃいない。
それでも、今のこの国を変えられる可能性があることは分かっている。
他の候補者たちじゃできないことでも、ガーベラさんならできるように思える。
そりゃあ、関わりのない連中には実行力があるとか、そういうことは分からないにしても、多少盛り上がっても良さそうなものだ。
まるで愛想で拍手してるかのような、冷めたような雰囲気・・・
「最後は現女王、マーガレット様です」
会場がワッと盛り上がる。
「・・・何でだよ」
ガーベラさんも、他の候補者も、盛り上がりに欠けた。
まるで興味がないみたいな・・・
マーガレットのほうがメチャクチャしてるのに。
ガーベラさんのほうが真摯に国と向き合っているのに。
「皆の者、よくぞこの場へ参じてくれたわね」
メチャクチャ上からだし。
他の候補者が丁寧だったから余計にそう感じるのか?
それとも元のキャラを知ってるから?
「これがこの国の現実のようだね」
ヴェロニカも思うところがあるようで、
「今の政権では絶対的に有利なんだね、あれは」
呆れているのか・・・?
「他の候補者が言うことなど、絵空事よ。わたくしが今まで取り組んできたこと、その結果こそが正義。小難しい理想など、意味がない」
いくら利害関係があるからと言って、国家間で戦力の共有をするなんか、そんな簡単にできることじゃないし、下手をすれば揉めるキッカケにもなるかもしれない。
傭兵たちの報酬をカットするだけじゃなく、必要数も下げるってことは、契約する旨味がなくなるだけじゃなく、自ら戦力を下げるということ。人の流出は避けられない。
「先の狩猟祭ではガーベラに後れを取ったものの、国をまとめてきたのは誰なのか?この国を維持してきたのは誰なのか?それを考えなさい」
絵空事と言えばそうなんだろう。
ガーベラさんが掲げたことは、そう簡単にできることじゃない。
それでも、今を変えなきゃいけないって気持ちと行動は本物だったと、俺は思いたい。
「そして何より、美しさこそこの国の正義だということ。それは今も、これからも変わりないわ。このわたくしこそ、シルフィの頂点よ」
こんな馬鹿げたことしか言わない女王を、また王座に座らせることはできない。
だが、俺は所詮、この席に招かれただけの客でしかない。
俺がやれることはもうない。
「客席の反応も悪くはないな・・・」
大喝采とまではいかないものの、盛り上がっていることは間違いない。
「現職というところは大きいようですね」
小難しいマニュフェストは要らない。
必要なのは美しさと実績・・・ってことか。
「・・・だから腹が立つんだよ」
ジェシカは苛立ちを抑えきれないらしく、
「何も考えてねぇ。ガーベラや他の候補者が言うことのほうがいいに決まってる。なのにこれだ」
会場を見下ろして、
「結局、どうでもいいことに固執して、自分たちの首を絞めやがる」
「・・・珍しく同意見だよ」
ジェシカのやつも、案外考えてるんだな。
というよりも、昔からそうだったって感じか。
「やはり、マーガレット様以外に居られんな」
すぐ隣の席にいたおっさんが拍手をしている。
「美しさこそエルフの最も輝かしいもの。それ以外は多少目を瞑らねば」
「うむ」
「マーガレット様こそ、女王に相応しい」
他の貴族たちも立ち上がって拍手する。
なんとまあ、腹立たしいスタンディングオベーション・・・
「テメェら・・・!」
腹が立ったんだろう。ジェシカが拳を固めて立ち上がった。
「よしなさい!」
「うるせぇ!腹立つだろ!何も分かっちゃいねぇ、ただ後ろでふんぞり返ってるだけの連中だぞ!!」
「だからってケンカしても仕方がないでしょ!」
リオーネがすぐに止めに入ってくれたが、
「何だ?」
最初に賛同した貴族がこっちを睨んで、
「ああ、ガーベラの支持者か」
明らかに俺たちを見下して笑っている。
「何故この席で見ているのか不思議だったが、やはり程度は低いようだな」
「なに・・・?」
挑発している・・・っていうより、単純に見下しているだけか。
「この国を今まで維持してきた。国を国として維持することは殊の外難しい。それは政治手腕があることとも言える。違うかね?」
それはまあ、言えなくもない。
崩すのは簡単だが、維持するということは案外難しい。一個人の店でも大概だが、国家なら余計に。
だからある意味、マーガレットに政治手腕があるってのも分からなくもない。
分からなくもないが、
「維持だと!?本気で維持できてると思ってんのか!!」
ジェシカはリオーネを振り払い、
「使えねぇ傭兵ばっか雇って税金取られて、エルフの立場がどんどん弱まってきている!!街じゃふんぞり返った傭兵が幅を利かせて無茶苦茶してやがる!!」
気の弱そうなヤツにわざとケンカを吹っ掛けたり、恐喝に近い値段交渉だったり、レストランで暴れまわったりしている連中もいたなぁ。
俺たちも武器屋でヤバいことになったが、ああいうのが横行しているのは確かだ。
「あたしらは舐められてんだよ!!そんなことも分からねぇのか!!」
肉体的に有利。ヒト族の傭兵たちはそこでマウントを取っている。
エルフたちはそれを知っているから立ち向かえない。単純な戦闘で勝てないと分かっているからだ。
だから舐められる。
「事実、そうであっても、それの何がいけない?国は守られているぞ?」
「それが嫌で街から出て行く連中がいるんだぞ!!」
生活しづらくなれば別の場所で生きる選択肢も生まれる。
それは仕事や収入、健康面での問題もあるだろうが、こういった理由も一つになっているのも確かだ。
「街だけじゃねぇ、首都以外の場所も同じようなもんだ!!小さい、大した収入源がない貧しい村でさえだぞ!!そんなんで守られてるなんか言えるわけねぇだろ!!」
「もうよせ、ジェシカ」
まだブレーキが効いているうちに止めておこう。
「テメェ・・・!!テメェまでこいつらの味方するのか!!」
「しねぇよ。するわけねぇ」
ステージに残っているガーベラさんを眺めながら、
「もうほっとけ。この国は終わりだ」
ガーベラさんには悪いけど、
「こんな連中、いっそ潰れちまえ」




