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ファンタジーな世界ってこんな感じなんですか? ー起こることは現実的で心が折れそうですー  作者: ナツオ


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4-4

 ガーベラさんの演説の内容にそこまでの不備はなかったように思える。


 この国の問題を把握していて、それに対する対策は説明された。

 俺は政治家を目指しているわけでも、それに対して勉強してきたわけでもない、その辺にいるただの素人だ。ガーベラさんが掲げたマニュフェストが実現できるかどうかとか、抜けがあるとか、そういうことまできっちり分かっちゃいない。


 それでも、今のこの国を変えられる可能性があることは分かっている。

 他の候補者たちじゃできないことでも、ガーベラさんならできるように思える。


 そりゃあ、関わりのない連中には実行力があるとか、そういうことは分からないにしても、多少盛り上がっても良さそうなものだ。

 まるで愛想で拍手してるかのような、冷めたような雰囲気・・・


「最後は現女王、マーガレット様です」


 会場がワッと盛り上がる。


「・・・何でだよ」


 ガーベラさんも、他の候補者も、盛り上がりに欠けた。

 まるで興味がないみたいな・・・


 マーガレットのほうがメチャクチャしてるのに。


 ガーベラさんのほうが真摯に国と向き合っているのに。


「皆の者、よくぞこの場へ参じてくれたわね」


 メチャクチャ上からだし。

 他の候補者が丁寧だったから余計にそう感じるのか?

 それとも元のキャラを知ってるから?


「これがこの国の現実のようだね」

 ヴェロニカも思うところがあるようで、

「今の政権では絶対的に有利なんだね、あれは」

 呆れているのか・・・?


「他の候補者が言うことなど、絵空事よ。わたくしが今まで取り組んできたこと、その結果こそが正義。小難しい理想など、意味がない」


 いくら利害関係があるからと言って、国家間で戦力の共有をするなんか、そんな簡単にできることじゃないし、下手をすれば揉めるキッカケにもなるかもしれない。

 傭兵たちの報酬をカットするだけじゃなく、必要数も下げるってことは、契約する旨味がなくなるだけじゃなく、自ら戦力を下げるということ。人の流出は避けられない。


「先の狩猟祭ではガーベラに後れを取ったものの、国をまとめてきたのは誰なのか?この国を維持してきたのは誰なのか?それを考えなさい」


 絵空事と言えばそうなんだろう。

 ガーベラさんが掲げたことは、そう簡単にできることじゃない。


 それでも、今を変えなきゃいけないって気持ちと行動は本物だったと、俺は思いたい。


「そして何より、美しさこそこの国の正義だということ。それは今も、これからも変わりないわ。このわたくしこそ、シルフィの頂点よ」


 こんな馬鹿げたことしか言わない女王を、また王座に座らせることはできない。


 だが、俺は所詮、この席に招かれただけの客でしかない。

 俺がやれることはもうない。


「客席の反応も悪くはないな・・・」

 大喝采とまではいかないものの、盛り上がっていることは間違いない。

「現職というところは大きいようですね」

 小難しいマニュフェストは要らない。

 必要なのは美しさと実績・・・ってことか。

「・・・だから腹が立つんだよ」

 ジェシカは苛立ちを抑えきれないらしく、

「何も考えてねぇ。ガーベラや他の候補者が言うことのほうがいいに決まってる。なのにこれだ」

 会場を見下ろして、

「結局、どうでもいいことに固執して、自分たちの首を絞めやがる」

「・・・珍しく同意見だよ」


 ジェシカのやつも、案外考えてるんだな。


 というよりも、昔からそうだったって感じか。


「やはり、マーガレット様以外に居られんな」

 すぐ隣の席にいたおっさんが拍手をしている。

「美しさこそエルフの最も輝かしいもの。それ以外は多少目を瞑らねば」

「うむ」

「マーガレット様こそ、女王に相応しい」

 他の貴族たちも立ち上がって拍手する。

 なんとまあ、腹立たしいスタンディングオベーション・・・

「テメェら・・・!」

 腹が立ったんだろう。ジェシカが拳を固めて立ち上がった。

「よしなさい!」

「うるせぇ!腹立つだろ!何も分かっちゃいねぇ、ただ後ろでふんぞり返ってるだけの連中だぞ!!」

「だからってケンカしても仕方がないでしょ!」

 リオーネがすぐに止めに入ってくれたが、

「何だ?」

 最初に賛同した貴族がこっちを睨んで、

「ああ、ガーベラの支持者か」

 明らかに俺たちを見下して笑っている。

「何故この席で見ているのか不思議だったが、やはり程度は低いようだな」

「なに・・・?」


 挑発している・・・っていうより、単純に見下しているだけか。


「この国を今まで維持してきた。国を国として維持することは殊の外難しい。それは政治手腕があることとも言える。違うかね?」


 それはまあ、言えなくもない。

 崩すのは簡単だが、維持するということは案外難しい。一個人の店でも大概だが、国家なら余計に。

 だからある意味、マーガレットに政治手腕があるってのも分からなくもない。


 分からなくもないが、

「維持だと!?本気で維持できてると思ってんのか!!」

 ジェシカはリオーネを振り払い、

「使えねぇ傭兵ばっか雇って税金取られて、エルフの立場がどんどん弱まってきている!!街じゃふんぞり返った傭兵が幅を利かせて無茶苦茶してやがる!!」


 気の弱そうなヤツにわざとケンカを吹っ掛けたり、恐喝に近い値段交渉だったり、レストランで暴れまわったりしている連中もいたなぁ。

 俺たちも武器屋でヤバいことになったが、ああいうのが横行しているのは確かだ。


「あたしらは舐められてんだよ!!そんなことも分からねぇのか!!」


 肉体的に有利。ヒト族の傭兵たちはそこでマウントを取っている。

 エルフたちはそれを知っているから立ち向かえない。単純な戦闘で勝てないと分かっているからだ。

 だから舐められる。


「事実、そうであっても、それの何がいけない?国は守られているぞ?」

「それが嫌で街から出て行く連中がいるんだぞ!!」


 生活しづらくなれば別の場所で生きる選択肢も生まれる。

 それは仕事や収入、健康面での問題もあるだろうが、こういった理由も一つになっているのも確かだ。


「街だけじゃねぇ、首都以外の場所も同じようなもんだ!!小さい、大した収入源がない貧しい村でさえだぞ!!そんなんで守られてるなんか言えるわけねぇだろ!!」

「もうよせ、ジェシカ」

 まだブレーキが効いているうちに止めておこう。

「テメェ・・・!!テメェまでこいつらの味方するのか!!」

「しねぇよ。するわけねぇ」

 ステージに残っているガーベラさんを眺めながら、

「もうほっとけ。この国は終わりだ」

 ガーベラさんには悪いけど、

「こんな連中、いっそ潰れちまえ」

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