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ファンタジーな世界ってこんな感じなんですか? ー起こることは現実的で心が折れそうですー  作者: ナツオ


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4-2

 席について少しすると、制服姿の若いエルフがステージに上がってきた。


「皆さま、お待たせいたしました」


 いよいよマニュフェスト発表が始まるか。


「やっとか・・・」

「大して時間経ってないぞ・・・」

 とは言うものの、この時間の経過の遅さよ・・・

 せいぜい十分くらいだと思うが、一時間くらい経ったんじゃないかってくらい気疲れしている。

 この席の・・っていうより、この空間の空気の悪さよ・・・


「只今より、各候補者の所信演説を行います。ご来場の方々はご清聴くださいますようお願い致します」


 広場もそれなりにざわついているようだったが、すぐに静かになった。

 まあ、することがすることだ。こんな重要なイベントでどんちゃん騒ぎをするようなヤツはそうそういないだろう。


「お一人目、エドワード様、どうぞ」

 ステージ裏からおじ様が出てきた。

 この人も若い上にイケメンだからきっちり分からないが、パッと見は五十代くらいか?

「エドワードであります。この度、立候補させていただき―――」

 身なりからしてどこかの貴族みたいな感じだな。雰囲気的に落ち着いてるし、そこそこ人気がありそうに見えるが・・・

「引っ込めェ!!!」

「お呼びじゃねぇよ!!!」


 ええ・・・?マジ?


「皆さん、ご静粛に!」

「役立たずが!!」

「うるせぇ!!」

 司会の女の人は進行させようとしているが、

「これでは静かに話は聞けないし、できる状況じゃないねぇ」

「確かに」

 これは酷い。


 そりゃあ、支持しない候補者の一人や二人いるだろう。

 それは日本だって例外じゃない。


 政治の世界も色々あるんだろう。

 いつまで経ってもスキャンダルは止まらないし、中には派手なパフォーマンスで支持を集めようとしている連中もいる。

 一回のミスで親の仇みたく叩かれる。

 相当な精神力じゃなきゃできないことだ。


 政治家のことは俺はよく分からないし、あのエドワードっていうおっさんのこともよく知らないから置いておくとして、野次馬はどこの世界にでもいるもんだな。


「だがしかし・・・」


 エドワードが終わって次、また次と候補者が演説していくが、ヤジが止まらない。

 多少、こういう連中がいることは分かる。エドワードや他の候補者が何かしらやらかしたことがあるんだろう。


 だが、それにしても多すぎる。


 今のところ、全員にヤジが飛んでいる。

 四人終わっているが、四人ともヤジが飛ぶようなことがあるか?


 ・・・何かあるのか?


 バードアイで現場を見てみるか。


 まずは候補者たち。

 ガーベラさんやマーガレットたちは、席で静かに待機している。特に動きはない。


 ガーベラさんは微動だにせず、どっしり構えている。

 できることはやった上で今日を迎えている。後は自分の考えを伝えるだけってことか。


 一方のマーガレットは・・・笑ってやがる。


 こいつ、何で笑ってんだ?

 まだ笑うところまで来てないだろ。まだ演説も終わってない。

 それでも笑う余裕があるとするなら、自分の美しさに絶対的な自信を持っているからか、他にまだ何かあるのか・・・?


 となると現場か?

 この広大な会場の全てを見るのも手間だが、どうせ動けないし、怪しいところは見ておくべきだろう。


「・・・ん?」


 広場はエルフ、ヒト族問わずギチギチに埋まっている。

 傍聴に来た連中だけじゃなく、露店を出している商人たちもいる。国を左右することではあっても、一応はイベント。商売根性があって素晴らしい。


 それはまあいいとして。

 ちらほら、挙動が怪しい連中がいる。


 そんな大勢じゃない。目についたのは五人とか、六人とか。全員、ヒト族だ。

 そいつらは周りを見回しながら、人混みをかき分けて移動している。


「今なお、我が国の財政はひっ迫しております。この状況を変えるため、自分が構想している政策としましては―――」

「黙れ偽善者!!!」


 ・・・なるほど。こいつらがヤジを飛ばしていたのか。


 飛ばしたら移動しているのは、居続けると顔を覚えられるからとか、たぶんそんな理由だろう。

 こうして演説を妨害するのが目的か。


 なら、こいつらに何のメリットがある?


 メリットどころか、デメリットしかないか?

 移動しながら怒鳴っていても、最低限の接触は避けられない。人とそれなりにすれ違うだろうし、顔も覚えられるだろう。しかも、内容が内容なだけに、覚えられる可能性は高くなるはずだ。


 それでもこんな馬鹿げたことをするとなれば、

「・・・キリさん、ああいう人たちを好んで雇う人がいるでしょ?」

「・・・そうなるよなぁ」

 ヴェロニカも独自に調べて、俺と同じ結論にたどり着いたらしい。


 こいつら、たぶんマーガレットに雇われた傭兵だ。


 こいつらは外から来た人間だ。

 いつかは活動拠点を移す。いつまでもここに居続けるわけじゃない。

 あまりにも悪評が流れると活動しにくくなるが、こういう連中は全く気にしない。つまり、居づらくなれば他所へ移ればいいわけだから、全く痛手にならないわけだ。


 大方、マーガレットがそれなりの報酬を出して雇ったんだろう。

 打撃を与えることは難しくても、ちょっとでも妨害になればそれでいいってところか?

 そんなことをして妨害になるようには思えないが、考えつくことが浅すぎる。


 いや、そんなにバカにできんか・・・?


 人は案外、流されるもんだからなぁ。

 どこの誰がああ言ったからとか、友達がああだったからこうとか、一定数、そういう連中はいる。

 全員がそうじゃないってことは強く言っておくが、周りに流される層がいるのも確かだ。

 そのほうが楽だしな。自分の意見を言って間違えていたら困るし、誰かの意見に乗っかっておけば、何かあっても誰かのせいにできる。


 他にもまだ妨害活動をしている連中がいるが、流されない人が多数派であってほしいもんだ。


 それはさて置き、

「・・・ヴェロニカ、オニキスに連絡を取れるか?」

「それはすぐできるよ」

 オニキスもテレパシー持ち。

 ヴェロニカなら、最短で連絡を取れる。

「対策してもらえばいいかな?」

「そうだな」

 しょうもない手を講じているようだが、不安要素は取り除くに限る。

 オニキスならすぐさま動いて、何かしら対策するだろう。


「続いてはガーベラ様です。お願いします」


 いよいよか。

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