4-1
狩猟祭と後夜祭が終了した翌日。
いよいよ選挙が行われる。
初日。中央広場に設置された特設ステージで、次期国王に立候補する候補者がマニフェストを発表。
その後の三日間で投票が行われる。
この合計四日間で、この国のしばらくの未来が左右される。
他の国がどうかは知らないが、日本は長期政権になりづらい傾向がある。
だが、この国は十数年、下手をすれば数十年続く可能性がある。
その原因はたった一つ。
美しい者が統治する。この法律が根強いからだ。
日本を含めて、地球じゃあ見ない法律だ。
この法律がシルフィ王国を長く縛っている。
「律儀に聞きに行くんだね」
「ま、関わってるからなぁ」
俺たちは演説を聞きに中央広場に向かっている。
ジェシカやリオーネはともかく、俺たちはここの国民でもないし、投票権がない。
だから聞いても聞かなくてもどっていでもいいわけだが、一度関わった故に気にはなるし、ガーベラさんには宿と飯、装備関係で世話になった。
狩猟で力を貸したにしても、生活で世話になったわけだし、最低限はしておきたい。
それに美しい者が統治する法律・・・こいつがガーベラさんの首を絞める。
俺からしたらガーベラさんとマーガレットも美しさに大差ない。
ジェシカからしたら差が大きいらしいが、ぶっちゃけ俺からしたら大差ない。
エルフ族の美意識的に、どうしてもそこに差はあって、埋められないらしい。
いくら狩猟祭で勝利したとしても、この法律を崩さないことには勝てるかどうか怪しい。
今はただ、狩猟祭の結果と普段の成果、マニュフェストに賭けるしかない。
「キリヤ殿」
「ん?」
女性に呼び止められた。
「えーっと・・・どちらさん、かな?」
見覚えのない子だ。一方で声は聞き覚えがある。
呼び方からして、そこまで近しい子じゃないと思うが・・・
「すみません、私服故に分からないですよね」
女の子は小さく笑って、
「レナです」
「・・・おお、あの」
オニキスの配下で、キャンプ地で世話をしてくれたあの子か。
「悪いね、気付くのが遅れて」
「いえ、お気になさらず」
黒い装束で顔を隠していたし、見た目で気付くのは難しいだろう・・・
あまり気にしてなさそうだが、一応謝っておく。
「それより、どうした?仕事かい?」
「キリヤ殿たちを関係者席に案内するよう、ガーベラ様から指示を受けておりまして」
「あれ?今日、俺らが身に行くこと言ってたっけ?」
「いえ、きっと来られるだろうから、ということです」
そこまで読まれてたか。さすがはガーベラさんだな・・・
「それにしても、よく見つけたな」
「オニキス様が見つけられたので」
・・・あの男、俺らを追跡してるのか?監視カメラでも付いてるのか?
いや、それはもう慣れたもんだが、それにしても仕事し過ぎだろ。
俺たちを見つけるとかまでやるような立場じゃないだろ、あの男は・・・
「こちらです」
「おう」
まあ、落ち着いて見られる席だろうし、断る理由もないし、ここは乗っておくか。
「どうぞ、こちらでご覧ください」
「おっ、おう、おう・・・」
通された席はなかなかの席だった。
結構お歳を召した方々。この方々は恐らく大臣たちだろう。ガーベラさんたちと初めて会った時、謁見の間にいた顔がちらほらいる。
かなり綺麗な格好をしたおじ様、おば様方。宝石とか貴金属を着用しているし、こっちは貴族みたいなもんだろう。
こんな席で俺たちは聞かなきゃいけないのか・・・
どこのどいつだ?みたいなリアクションは分かるんだが、中には俺がしたことを把握してるヤツもいる。大臣たちもあまりいい顔をしてない。
明らかに歓迎はされてないことは俺でも分かる。
「うーん、なかなか視線が痛いねぇ」
「なあ、俺たちは適当なところで見るよ。せっかく席を準備してもらって悪いけど」
周りのことなんかお構いなしのヴェロニカでさえコレだ。
ガーベラさんには悪いが、こんな空気の悪い空間で聞くのはきつ過ぎる。
「大丈夫です。ぜひ、こちらでご覧ください」
「いや、大丈夫じゃねぇよ?」
頑なに退席を拒むな、この子・・・
「リオーネなら大丈夫だろ。テメェはイイとこの子なんだからよ」
「バカ言わないでよ。末端の私のことなんか誰も知らないし」
どうやら、退席ってルートはないらしい。
ガーベラさんの指示だから守ろうとするのは分かるが、それにしても頑固すぎる。
何かしら指示が出てるとしたら分からなくもないが、俺たちをここに座らせる理由は何だ?特にメリットなんか無いのに。
「おいジェシカ、余計なこと言ってないで座れ」
「あ?何でテメェに指示されなきゃいけねぇんだ?お?」
「チンピラかオメェはよ。何でもいいから空気読んで座れ」
とりあえず、ジェシカを黙らせて、傍観してりゃあ問題はないか。
いや、問題ないわけないんだが、一時間そこそこで終わるだろう。
何のトラブルも起きずに終わってくれりゃあ御の字なんだが・・・どうなるかなぁ?




