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「はぁ~、結構食ったな・・・」
宿屋の部屋に戻った俺は、茶を淹れてテラスに出た。
ガーベラさんと会った後、勧められたこともあって後夜祭に行ってみた。
まるで某有名レジャー施設みたく、人でごった返していた。
だらだら歩いて、人と人の隙間を縫うように進む・・・これがマジでだるい。
屋台飯なんかも興味はあったからそれなりに食べたが、旨い物が多かった。
ボルドウィンじゃカレーとかシチューとかの煮込み系とパンが多かったが、ここは素材の味を活かした料理が得意で、焼きトウモロコシみたいな物、肉や魚のソテーにソースをかけた物とか、シンプルな物が多かった。
日本人は出汁の文化。
普段の飯っていうより、キャンプ飯とかを作ると、自然とそういう物を作りがちだった俺にとっちゃあ、ここの飯は合ってる気がした。
他にも色んな物を見かけた。
お土産の菓子やつまみもそうだが、モンスターの爪や牙、鱗なんかを使ったアクセサリなんかが出ていた。それなりに興味はあって、良さそうな物は買ってみたが、飯のことも踏まえると、日本のイベントと大差ないようにも思える。
日が沈む頃に解散して、今は自分の時間としている。
俺は一息つきたくて、テラスで風に当たっているわけだ。
「晩飯までに消化できるかね・・・」
部屋だけじゃなく、食事もガーベラさんが手配してくれている。
その点は前の部屋も一緒だが、グレードが引き上げられて豪華になった。
まるで豪華旅館のプレミアム会席・・・食べなきゃもったいない。
どうにかして消化しておきたい。今から走って消化を促したほうがいいか?
「キリさーん、入るよぉ」
大砲からテレパシーが飛んできた。
「おう、開いてるぞ」
入室を断る理由もないし、テレパシー持ちに下手な手を打てないのも事実。
いや、別に嫌とかじゃないけどな?
「お邪魔します」
ヴェロニカとマーベルさんが入ってきた。
「どうした?何かあったっけ?」
今はプライベートのはずだが、わざわざ訪ねてくるぐらいだし、何かしらあるんだろう。
ヴェロニカを抱えたマーベルさんがテラスに入ってきて、備え付けの椅子に座る。
「別段、何かあるわけじゃないんだけどね」
「おう」
「これからどうするのかなと思って」
これの場合のこれからってのは、これからの行動をどうするのかってことだろうな。
「どうした?ビューラ大陸に行くんだろ?」
「そうだとは思ってたのだけど、良い条件が出たから、一応ね」
良い条件ってのはガーベラさんか。
「確かにまあ・・・悪くは感じないけど」
待遇は考慮するって言ってたし、悪いようにはならないだろう。
「恐らく、オニキスさんのような立ち位置なのでしょうね」
宮仕えの可能性も十分あるが、どっちかっていうと私兵とか子飼の工作員って感じがしっくりくるか。
宮仕えの戦闘員・・・ここの場合は騎士とか、そういう方向性なんだろうが、そっちの不足も分かっている。国全体の戦力を踏まえれば、そっちのほうに当てるほうがいいかもしれない。
ただ、俺たちの場合は非公式に近い形で採用になるはず。正規部隊に入れるのは手続きだけで済ませられても、入隊後にいざこざが起こらんとも限らないし、避けておいたほうがいい可能性もある。
となりゃあ、やっぱりガーベラさん直属の部隊にってほうがいいだろう。
ガーベラさんの事情もある程度知ってるから、ある程度融通が利く。柔軟な対応ができるわけだし、お余計な手続きを行わずに作戦行動に移れる。これはメリットだろう。
あとはどういう仕事が与えられるかどうか・・・ってところか。
オニキスみたいなスパイ活動ができるわけでもないし、やるならやるで仕事の内容は考えていただきたい。
まあ、就職先としちゃあ安定してるだろうし、給料もそう悪くはないだろう。
家の手配も手伝ってくれるだろうし、仕事の内容次第だが、仕事としちゃあ悪いことはないはずだ。
ただ、
「悪くない話だけど、まずはヴェロニカの件を片付けないとだろ」
「本当にそれでいいのかい?」
「おう」
この旅はヴェロニカの旅だ。
助けてもらった恩もあるが、一度関わって知ってしまった故に、どうしてこうなっているのか、その原因を知りたい気持ちもある。
ヴェロニカの逆鱗に触れるとどうなるかも分からないしな・・・
「ガーベラさんに世話になるとしても、まずはそこからだ」
「また来ても雇ってもらえないかもしれないよ?」
「そん時はそん時だろ」
あの人の性格からして、一回蹴ったら二度とないってことはない気がする。狩猟祭にも協力したわけだし、それなりに融通は利かせてくれるだろう。
まあ、その時の状況次第だが。
「とりあえず、今回の話は保留だ、保留」
ヴェロニカのこと。
神様たちが危険視してるヤバいヤツのこと。
ただでさえヘヴィな話だ。
人生を賭けても解決しなさそうな内容。これをやっつけたい。
それらが解決できたら自由になれる。こういう話は全てが終わってからだ。
「ま、俺じゃ頼りにならんだろうけどな」
残念ながら、俺はその辺りにいる一般人と変わらない。
高い戦闘能力があるわけでもない。オニキスみたいなスパイ能力があるわけでもない。普通の高校生なわけだ。
そんなヤツが解決できることなんて大したことはないが、
「いや、頼りにしてるよ」
ヴェロニカはそれでも良さそうだった。
「わたし一人じゃどうしようもないし、キリは案外、土壇場に強いしね」
「そうかい?」
「そうだよ」
赤ん坊がにっこり笑っている。
それでいいなら、今はまあ、いいか。
そんな風に思えるのは、陽も暮れてきて雰囲気が良くなってきたからか?
「さて、そろそろ飯か?」
「食べられるのかい?」
「結構食べてましたよね?」
「まあ・・・がんばりますよ」
センチメンタルもカッコつけも俺のキャラじゃないな。
こういうところも俺っぽいよなぁ。




