3-1
「さて、行きますかァ」
夕方。体感上、16時くらいだろうか?
ヴェロニカのテレパシーで目を覚ました。
結構しっかり眠っていたらしい。
酒を飲みはしなかったが、ベッドに横になってすぐ眠気が襲ってきて、そのままスヤスヤ・・・って流れだ。まあ、よくある展開だな。
二日間の野営もそれなりに効いたのかもしれないが、狩猟も堪えた。
特に後半の大型狩りはな・・・
ほとんど何もできなかったってのは、結構メンタルを抉られた。
自分ができるほうじゃないことは理解してるが、中型をそこそこ狩れるようになってきただけに、知らず知らずのうちにそこそこの自信になっていたらしい。
全く通用しないってこともなかったが、上手く立ち回れなかったってのを理解しているから、心が折れそうになった。
こっちに来た当初は頻繁にそうだった気がするが、久しぶりの感覚だ。
まあ、それはそれ・・・と思うようにしたい。
中型を上手く狩れたとしても、大型も上手くいくとは限らない。物が変われば対応や判断も変わる。情報もないまま突っ込んだこともあるし、上手くいかなくて当然な一面もある。
もうちょい気長にやろう。あの狼は気に入らないかもしれないが、こればかりはどうしようもない。
人間にゃ限界がある・・・
「おっ、来たな」
俺たちがいるフロアのエントランスで全員集まっていた。
「行くか」
「行きましょう」
階段を下りていき、宿屋を出る。
「結構狩ったし、いい線いってるといいんだけど、どうなんだろうな?」
「投入された人員の差はあっても、狩ったモンスターの内容は濃いから、いい勝負をするんじゃないかしら?」
ポイントは狩猟したモンスターの合算で決まる。
小型より中型、中型より大型。危険度が高けりゃ高いほどポイントが付く。
「キリヤくんが大型を倒してきてるからね」
「そうそう、それだよ。キリヤ、テメェいつの間にそんだけできるようになったんだ?」
ヴェロニカが倒したけど、成果を報告しているのは俺・・・こういう話になるとしんどいんだよなぁ。
「あのな、ジェシカさん」
「あん?」
「知らないほうが幸せなことって、あるんですよ」
とりあえず、誤魔化す方向で。
「・・・何言ってんだ、お前」
「さて、さっさと行きましょうかね」
実際、知らないほうが幸せだろう。
赤ん坊の姿をした魔族がすぐ側にいて、しかもバカみたいな火力を出して大型モンスターをノックアウトする。そんな話、普通なら信じない。信じる信じないの話になるどころか、俺の頭が壊れているって話になるのが関の山。
仮に俺がバカにされるだけならまだいいが、知った後、ヴェロニカとの差を思い知ることになるわけだ。
どっちかっていうと、俺はそっちのほうで心が折れると思う。
元々教えるつもりはないにしても、黙っておくってのは重要だよなぁ・・・
「おー、めっちゃ混んでるな」
広場に着いた。
周囲はメチャクチャ混んでいる。
そりゃまあそうだよな。国を挙げたイベントだし、参加者も商人も観客もいる。それに加えて、明日からのお祭りの設営をしている連中もいるらしい。
「中で見るのは難しいかもしれませんね」
「だな」
もうすでにお祭り騒ぎだ。
ステージの近くに行くのも一苦労だな、これは。
「あの店の二階、テラス席になってるな」
広場の側にレストランらしい店がある。
外にも席を設けていて、二階にテラス席も見える。
「・・・あの店に入るか」
*
「ま、一旦お疲れさん」
店に入ると、すぐにテーブルを準備してくれた。
ジュースや酒、何かの肉のソーセージ、ポテトなどの盛り合わせを頼んで、乾杯する。
「もうそろそろか?」
テラスから広場のステージが見える。
離れているからそれなりにって感じだが、俺たちは結果を知りたいだけ。会場の雰囲気を細かく知る必要はない。
「まあ、結果云々は一旦置いておいて、今は飲もうぜ」
「結果はどう転んでも変わらないしな」
キースみたく、切り替えは重要だ。
結果報告は閉め切られてるし、今更駆け込んでも加算されるもんじゃないだろう。
手を加えられるもんじゃないなら、ジタバタしても、後悔しても仕方がない。開き直っていくほうがいい。
まあ・・・裏で何かあるかもしれないが、そこまで深読みしても仕方がないし、それこそ俺たちの守備範囲を超えてる。
ただまあ、一度思うと疑ってしまうのも仕方がない一面もある。
相手はあのマーガレットだからなぁ・・・
気に入らなきゃ命令して内容を覆すことも考えられなくもない。
一応、協会は中立だって話だし、それを信じるしかないわけだが、それでも何かやりそうって思えるのは、単純にあの女王のキャラクター故か。
「おっ、始まったか?」
ステージの照明がより明るくなった。
「お待たせ致しました!ただいまより、狩猟祭の成果報告を始めます!」
広場がワッと盛り上がった。
「いよいよ、か」
この結果が選挙に大きく影響する。
関わっているためか、身が引き締まる気がする。
「過去最大の参加人数となったこの度の狩猟祭ですが―――」
どうやらそうらしい。
マーガレットが国外から人員を雇って投入しているし、今年はガーベラさんも協力者を募って戦力強化している。他の候補者も何かしら手段を講じて戦力を投入したはずだし、参加人数は相応に多いだろうと予想はしていた。
それでも過去最大だっていうんだから、今年の狩猟祭は相当気合が入ってるな。
参加者だけじゃなく、雇い主側も。
「前置きが長いんだよ」
「本年、最も多くのポイントを獲得した方は―――」
「思いの外早く発表してくれるようだぞ」
「ガーベラ様です!」
「・・・ふう」
とりあえず、目的は達成できたか。




