13-6
「よし、首都が見えた」
早朝。
ベースキャンプの撤収を始めると同時に、俺たちは先行して首都へ。
あれから少しして、ジェシカたちが戻って来た。
中型モンスターを二頭倒してきたらしい。三人ともボロボロだったところを見ると、多少苦戦したようだが、無事に戻って来たことから致命傷を負うことはなかったんだろう。
一応、指示を出した側だから一安心といったところだった。
「中央の受付よ!」
「おう!」
倒したモンスターは、中央広場に仮設されている生活者協会の受付に持っていくことになっている。
そこで集計して、結果を国に報告するそうだ。
このシステムで気になることがある。
国と協会が結託していないかどうか?
協会はあくまでも中立だって話は聞いたことはある。
だが、ここはあくまでもシルフィ王国で、協会も国に設置されている。いくら伝統行事であっても、こういう企画をする以上、上同士の繋がりもあるはず。
お上がフラットな人間ならまだしも、マーガレットはブラックだ。何かしら圧力を掛けることも考えられる。いや、思い浮かばないわけがない。
今回の場合、マーガレット側の状況は厳しい。
せっかく用意したガノダウラスを奪われているし、その補填を用意しないと勝てない。その判断くらい、現場は分かっているだろうし、仮に報告がマーガレットに挙がっているとしたら、是が非でも次を準備させるだろう。
実際に用意できるかどうか怪しいとした場合、どういう策を講じるか?
他の連中の手柄を奪うか、金で買うか、報告を偽造するか・・・単純なところでそんなところだろう。
偽造する場合、協会に何かしらの対策をしているはず。
途中で報告を偽造することは考えられないのか・・・?
「その辺りは大丈夫じゃないかな?」
ヴェロニカは特に気にしていないらしい。
「何か仕掛けようとしても、オニキスがいるでしょ?」
「・・・なるほど」
オニキスがいるか。
あの男は裏の内情に詳しい。どこまで詳しいかにもよるが、途中で不正をしているようなら手を下すだろう。
ちょっとしたことなら見逃したとしても、今回みたいな国の行方を左右するような案件なら特に。
その逆も有り得るとは思うが、それはもう考えても仕方がない。
そもそも、偽造してんじゃねーかとか考えても仕方がないことなんだが・・・
「よし、受付に行こう」
ドッシュたちを獣舎に預けて受付に向かう。
「キリ、ちょっと周りが怪しいよ」
「・・・急ぐか」
この場合の怪しいってのは、マーガレット側に動きがあることか。
どうやら報告は挙がってるらしい。
どういう内容で通ってるか分からないが、ガノダウラスを奪った小僧・・・ってな具合か?
人混みがあって、人の目もある。さすがに暗殺とまではいかないだろうが、受付に向かうのを邪魔する可能性はあるか。
ここはシンプルに急ごう。
バードアイで楽に通れる道を選んでいけばいい。
受付周りがどうかは分からないが、さすがに協会関係者の前でいざこざは起こさないだろう。
「おはようございます。狩猟祭参加者の方ですね?」
「ああ、まあね」
受付にたどり着いた。受付嬢の愛想が素晴らしい。
睨まれはしたが、絡まれることなく辿り着いた。絡まれたらどうしようとは思ったが、そこまで荒くれ者はいなかったらしい。
「こちらの書類に必要事項を記載いただき、提出をお願い致します」
受付嬢が書類をデスクに置いたので、
「私が記載しましょう。フェリーチェをお願いします」
「あいよ」
「手が塞がっているので、私が夫の代筆をします」
「かしこまりました」
俺はこっちの文字を書けないからな・・・相変わらず、こういう時はマーベルさん頼りになる。
「こちらで」
「確認させていただきます」
今のところ、トラブルが起きそうな雰囲気はないな・・・
怪しいヤツはちらほらいるが、仕掛けて来る様子もないし・・・まあ、受付にたどり着いた段階で仕掛けても捕まるだけだし、何の得もない。
このまま終わってくれると御の字なんだが・・・
「タカミ キリヤ様、書類は問題ありませんでしたので、受付させていただきます。成果の確認をさせていただきますので、パスポートの提出をお願い致します」
・・・この時が来た。
「・・・じゃあ、これで・・・」
パスポートを手渡すと、
「お預かりします。モンスターの確認を行います」
早速、作業が始まった。
恐ろしいことになるだろうなぁ・・・
「討伐モンスターを取り出します」
受付嬢がパスポートを操作すると、現場にモンスターの死骸が出現する。
「こっ、これは・・・」
現場がざわつく。
「パワードグリズリーにデントオーガ、デッドスティンガー、オドヒヒ・・・!?」
「あ、うん・・・」
パワードグリズリーとデントオーガに加えて、猛毒を尻尾と爪に持つサソリ型モンスターと、白い体毛のマントヒヒに似たサル型モンスター。
これらは中型の部類に入る。
「それにタイラントスネークにソーディアスハウンド、フォレストドラゴンまで・・・!!」
「あー・・・うん・・・」
全長20メートル級の蛇型モンスターと、両腕に六本の刃を持つ犬型モンスター、そして樹木が体毛になっているドラゴン型モンスター。
全て大型モンスターだ。
「これらを全てお一人で討伐なさったのですか!?」
「いや、まあ・・・ハイ・・・」
そんなわけあるか!!!
中型ならまだ話は分かる。
デントオーガは戦った経験があるから、それなりに立ち回れる。サソリとサルに関しちゃあ、能力の把握と動きさえ理解できれば、まあやれないことはない。
要は、パワードグリズリーをやった時と同じ要領で戦えばいいだけだ。
ただ、大型は話が違う。
タイラントスネークにソーディアスハウンド、フォレストドラゴン・・・この三体はかなりヤバい。
巨大な体躯を使った攻撃だけじゃなく、体液による状態異常効果や、体毛の刃を使った攻撃、樹木を巧みに使ってこっちの動きを阻害・・・中型にはあまり見られない特殊な攻撃と能力が備わっている。
ガノダウラスもそうだったが、一頭がそれぞれ災害級の力を持っている。
そんな連中を俺一人で狩れるか・・・?
無論、そんなわけがない。悲しいことに。
今回の戦果はヴェロニカがほぼ単独で挙げたものだ。
パワーファイトを挑んでくる蛇は、氷で凍らせて身動きを封じる。
素早く移動して接近戦を仕掛けてくる犬は、両腕の刃を風魔法で斬り飛ばして無力化。
複数の樹木を手足のように操るドラゴンは、単純に炎で焼き払う。
最早いつも通り・・・単純に火力で押し通す。たったそれだけ。
俺はパスポートに収納するために、瀕死まで追い込んで適当にしばくだけ・・・最後の最後にちょっと戦うだけ。
いや、自分の名誉のために一応言っておくが、俺も戦いましたよ?
戦ったけど、思い通りにいかなかった。
回避性能で避けるまではできても、次の攻撃に繋げられない。巨大でパワーがあって、しかも特殊能力持ちの相手をするにはまだ早かった・・・つまり、経験値不足だ。
昨晩、オニキスが大暴れしたとかどうとか言っていたが・・・
本当に大暴れしたのはヴェロニカ。
本人は、
「いやぁ、久しぶりにすっきりしたねぇ!」
周囲を気にすることなく魔法をぶっ放せたことで、ストレス解消していた・・・
どんだけ無敵なんだ、この人・・・
「し、失礼しました。こちらのモンスターを風景致します」
受付嬢が処理を始めた。
さっさと済ませてほしいところだ。でないと、
「あのガキ・・・ヤバくないか?」
「あんだけの数を一人でとか、どんな鍛え方したらああなるんだよ」
「どこかのお抱えの騎士とかなのか?いや、あの若さとあのナリでそれはないか・・・?」
ちらほら聞こえてくる声もヤバそう。
危険視されるのも困るが、エリートと思われるのも困る。
「キリヤ、テメェ・・・一人でどんだけ狩るんだよ」
味方は味方で過剰な勘違いしてるし、さっさと切り上げたい。マジで。
「ポイント集計が終わりました。モンスターは一旦お返しします」
受付嬢がパスポートにモンスターを収納して返却してくれた。
「あとは結果発表までお待ちください」
「よし!!切り上げるぞ!!」
パスポートをリグのポーチに収納して、
「おい、話はこれからだろ!!」
「うるせぇ!!とっとと行くぞオラァ!!」
こんなところからはさっさと離脱するに限る!
これで俺たちの役目は終わった。
後は結果発表を待つだけ、だな。




