13-2
遠目で見ても分かるくらいの黒い剛毛。
発達した、まるで丸太みたいな上腕。
短くても存在感のある二本の太い牙。
「グアァァァオオォォォォッ!!!」
空気が震えるくらいの雄叫び。
三メートルくらいの体格と、熊とゴリラを足して二で割ったような風貌。
こいつがパワードグリズリー。
オニキスも厄介と言うくらいの中型モンスター。
こいつを一人で仕留める・・・!
「まずは」
木を壁にして的を観察する。
全ては見られないにしても、どういう動きをするのかを少しでも見られれば参考になる。
「グアォ!!!」
右腕を一振り。
たった一振りで大木を粉砕させている。
思いっきり振り抜いているし、あの発達した上腕は伊達じゃないな。
「フッ、フッ、フッ」
上腕で体重を支えるような歩き方・・・この辺りは熊っていうより、ゴリラのほうが近い。
パワーが必要な上半身とは逆に、下半身はタイトに見える。
事前の情報どおり、スピードよりパワー重視と見た・・・!
なら、やることは単純のはずだ。
「行くか・・・!」
鞭を抜いて、
「フッ、フッ、フッ」
後ろを向いている隙に接近して、
「っらァ!!」
後頭部をしばく!
「グォア!?」
しっかり叩けた・・・!
「グオォォアアァァァァァッ!!!」
熊さんも俺を敵として認識したらしい・・・!
しっかり威嚇して、
「グオオォォッ!!」
地面をしっかり蹴って突っ込んで来る!
「おっと・・・!!」
単純なタックル・・・これはしっかり避ける。
詳しい速度は分からないが、一般的に車が出している速度・・・時速四十キロに近い気がする。
そしてこの体格だ。当たりゃあ大怪我は避けられん!
『少年、今の判断で問題ない。だが、足りていないことも分かるな?』
「あーあー、そうだろうなァ!!」
そう、足りていない。
事前に来ると分かっていて、それを避ける。
いや、そりゃ当たり前の話なんだけどな?
それでも足りない。
その足りないモノが何なのか・・・?
『それができるように、得るスキルを指定したろう。やってみせろ』
「言うだけのヤツは気楽でいいねぇ!!ったく!」
アイオロスが習得を指定したスキルはいくつかある。
まず回避性能。
回避時に無敵時間を生み出し、レベルを上げるとその時間を延長する。
これを最大まで上げた。
そして軽快と機動力スキルを最大レベルまで習得する。
フットワークと移動力と跳躍力の強化と、体力の消耗を抑える組み合わせ。
この二つは昨日の作戦で十分効果を発揮した。
アイオロスが指定したのはその三つ。
とにかく機動力重視のスキルを求めていた。
「グオァッ!!」
「っしゃあ、掛かってこいやァ!!」
突っ込んでくる熊の動きをよく見て、
「っしッ!!」
避けつつ、背面を目掛けてスピードウィップで叩く!
「ガッ!?」
「もういっちょ!!」
更にしばいて、一旦距離を取る。
欲を言えば更にしばいておきたかったが、一発を欲張っても大した威力にならないし、欲を掻けば痛い目を見ることもある。
『落ち着いているな』
『通常の立ち回りは十分である』
ここは冷静に。
それに、
「グッ!?」
走り出そうとした熊の動きが鈍る。
「っし!」
口から泡を吐いている・・・二発で毒を食らってくれたか!
今までよりもハイペースで状態異常を引き起こせている。
今回に備えて、俺の判断で状態異常効果増強を習得した。
更に体力の強化。
元々、すでにスキルを持っていたわけだが、動き回る必要があるため、更に強化が必要になった。
軽快と合わせることで、体力の消耗を抑える。これによってある程度の長期戦に対応できるようにしたわけだ。
そして状態異常効果の増強。
俺の戦術上、ランドウィップの状態異常効果を頼らざるを得ない。一発の弱さを補う術になる。
この効果を上げることで、効果の蓄積量を増やし、状態異常を早く相手に付与する。毒による体力消耗、麻痺による動きの制限、上手くいけば両方を与えることで、状況を有利に展開する。
今回はポイントを惜しまず、討伐に必要なスキルを習得した。
早速その効果が見えている。
動きが鈍っている熊に、
「らあッ!!」
普通に攻撃を叩き込む!
「グオッ、オッ!!」
動きを鈍らせている熊が突進を仕掛けてくる・・・!
『少年、これだ』
動きが鈍くなってる。人にもよるが、動きが鈍くなっている時のほうがやりやすい。
アポロも分かってる。チャンスはここだ。
「来いよ」
一発目よりも勢いがない突進。
こいつを可能な限り引き寄せる。
「グオオォォッ!!!」
いくら勢いがないとは言っても、ガタイがガタイだ。ぶつかって無事で済むわけがない。
だが、可能な限り引き寄せる。
『ビビるな』
「バカじゃねぇの!?ビビるだろ!!」
いつもならさっさと回避運動を起こすところだ。
だが、それだと今までと変わらない。
今回は当たる直前まで我慢する・・・!
我慢して我慢して、
「ン!!!」
当たる瞬間に踏み込む!!
「グオッ!?」
熊は勢いそのままに木に激突。
そして俺は、
「・・・回避成功!!」
よし、無傷!!




