ACT.187 "最高"vs分身の転生者(Ⅱ)
「君たちは、全員が本体だね」
その言葉が放たれた瞬間、転生者の群れに動揺が走ったのをベルタは見逃さなかった。
いくつかの疑問と特徴から逆算した結果の推理であり、確証自体はなかったものの、彼女らの反応こそが何よりも雄弁な確証となった。
「君たちは、言葉のタイムラグが少なすぎる」
彼女たちの言葉は常に共鳴していた。
分身同士で会話による意思疎通も無い。
故に、人間そのものを人格ごと複製しているわけでは無い事は確定していた。
そこから、分身同士のコミュニケーションは、言語伝達以外の方法が取られているとベルタは推測した。
更に、本体が飛ばした指示を端末全員が受け取るタイプであるなら、本体からの距離に比例して誤差が生まれる筈だとも。
本体に近い位置にいる個体よりも、遠い位置にいる個体の方が指示指令は伝わりづらい。
遅いだけならまだしも、歪む可能性すら存在する。
しかし、彼女らの様子を見るにソレが無かった。
末端の個体ですら、様子のおかしい者がいない。
「身体は複数ありながら、魂は共有式だ」
彼女たちは、奥歯を噛み締める。
ベルタの指摘は正鵠を射ていた。
アンナは仲間たちに自分の異能を説明する際に、前世におけるインターネットまたはクラウドを例としてあけた。
わかりやすい前例があるからこそ、彼らは理解してくれていたが、ソレすら知らないこの世界の人間には想像すらつかない発想じゃないかとアンナは思っていた。
自分の異能が暴かれることなど、アリはしないとタカを括っていた。
文明レベルの低い、所詮は土人と侮っていた彼女は自分を見下ろす男の正体を知らない。
ベルタ・ディ・ゼギュール。
王族としてこの世界で最高峰の教育を受けて育ち、魔物が跋扈する社交界で洞察力を磨き、事実上の粛清騎士たちの長を勤める程にまで戦闘技能を磨き上げた傑物である。
この世界が育んだ最高傑作と言っても過言では無い。
ただ運良く超常の力を手に入れ、前世で得た教科書的知識を持つだけのアンナとは、正しく各が違う。
「「「「見下してんじゃないわよ!!」」」」
あまりに姦しい声にベルタは思わず眉を顰めて耳を抑えた。
これだけの人数が一斉に叫べは音響兵器一歩手前だ。
「「「「引き摺り下ろしてやるよ、土人風情が!」」」
そう言うやいなや、彼女たちはベルタが立つ飾りがある壁へと殺到する。
自分たちで自分たちを足場にして、高所にいるベルタへ向かって行く。
「蟻の様だが、踏み潰せないのが難点か」
その異能なら考えればもっと有効な使い道があるだろうに、物量にモノを言わせた力技しかしないとは。
ベルタは呆れると同時に、それで何とか出来てしまうのだから仕方ないと納得もした。
最も、その力技こそが非常に厄介であるのだが。
「──最初からハズレを引くとは、私も運が無い」
ベルタはそう呟き、迫ってくる個体を鞭を降るって弾き飛ばす。
あまりに相性の悪い転生者を相手に、ここからの最適解を計算し始めた。




