ACT.109 ふたりの食事(Ⅲ)
言い辛そうに、それでも真っ直ぐにライの目を見て彼女は言う。
「ライくんが危ないことをしなくても良いように、きっと出来る筈なんだ」
セリアからその言葉を聞いた瞬間、ライの背筋が僅かに凍りつく。
動揺に瞳孔が揺らめき、もしかしてという予感がライの脳裏を稲妻のように駆け巡った。
「私は聖教会の中での事情とかそういうのはよくわからないけど、でも流石にライくんがずっと何かを誤魔化しているのはわかるよ」
瞳を伏して、テーブルの下で組んだ両手を見つめながらセリアは悲しげに話す。
その姿を見て、ライは言葉に窮する。
嘘を吐いていた、誤魔化し続けてきた。
自身が粛清騎士であるということは、口外することは出来ない。
聖教会の規則で禁止されている。
だから、彼女に隠していたのは悪いことではない。
しょうがない、仕方のないことだった。
──だがしかし、隠していたのは紛れもない事実で。
そして、隠していた最大の理由は規則では無く。
ライが彼女に真に隠したかったのは──。
「ぼ、僕は」
ひとたびソレを認識してしまったが最後、罪悪感という重い枷がライの心に強くのし掛かる。
「ライくんの事だから、悪い事をしている訳じゃないのはわかるんだけど──」
そう、強くのし掛かかり──。
「──悪い事、ねぇ」
ライがパンクする前に、裏返ることにした。
裏はセリアのセリフに対して、思わず含みのある苦笑いを返す。
「だとしたら、どうする?」
転生者に対する復讐。
聖教会の先兵としての数々の殺人行為。
これが悪い事ではない、筈が無い。
神の御心に、そして復讐という免罪符があったからといって殺しは善行にはなり得ない。
──だとしても。
俺がやることは一貫している。
ライの意識を人生を手伝って、守る。
そして、その為ならばどんな障害も排除する。
例え、それが誰であろうとも。
眼を薄く、刃物のように尖らせてセリアを見る。
「ライ、くん?」
纏う空気感が変わった事に気がつきそうになった瞬間。
俺は素早く、殺意を込めて左手を彼女に向かって伸ばした。




